マラドーナに憧れ、ブエノスアイレスに住んで35年。現地でしか知り得ない情報を発信し続けてきたChizuru de Garciaが、ここでは極私的な視点で今伝えたい話題を深掘り。アルゼンチン、ウルグアイをはじめ南米サッカーの原始的な魅力、情熱の根源に迫る。

footballista誌から続くWEB月刊連載の第19回(通算178回)は、7月末に国際ユース大会を制したU-17代表チームにも3人が名を連ねた、アルゼンチンの未来を担う“次世代のメッシ”について。

今や欠かせない“欧州少年”たちの育成

 ディエゴ・プラセンテ監督率いるU-20アルゼンチン代表は、7月にバレンシア州ラルクディア(スペイン)で開催されたCOTIF国際ユース大会に出場し、5戦全勝で見事優勝を飾った。毎年世界各国からU-20世代のチームが招待されるこの大会は、非公式で小規模ではあるものの41年の歴史を持ち、若手選手たちにとって国際舞台での経験を積む貴重な機会。南米諸国の育成界隈ではその重要性が広く認識されており、アルゼンチンでは自国代表の全試合が大手スポーツ専門局『ESPN』でライブ中継されたほど。日本では「アルクディア国際ユーストーナメント」として知られており、過去にはU-19日本代表や全日本大学選抜が参加した実績もある。

 この大会におけるアルゼンチンの優勝は、2012年、2018年、2022年に続いてこれが4度目となるが、今回、プラセンテ監督はメンバー全22人をあえてU-17世代で構成して臨んだ。これは今年11月にカタールで開催されるU-17W杯を見据えたものであり、大会前には「年上の選手たちとプレーすることは(W杯で)フィジカル面で我われを上回るチームと対峙するための備え。ミスの代償は大きいが、選手にとって大きな成長につながる」と語っていた。実際、U-20チリ代表やU-20バレンシアなどを相手に5試合で12得点、失点わずか1という成績が示すように、U-17アルゼンチン代表選手たちは年上の選手相手に臆すことなく互角以上の戦いを繰り広げ、積極的な攻撃を仕掛けたことがうかがえる。

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Profile
Chizuru de Garcia

1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。

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