屋上のプランターガーデンの隅の暗がりで何年も苦しんでいたセージの苗を、ある日最も日当たりのいい場所にある日移してみた。すると、それは驚くほど元気になり、最終的には大量に育った葉をどうするか考えなければならなくなった。AI料理プラットフォームを試してみようと思ったのは、その時だった。
その夜、「ブラートヴルストと大量のセージを使ったレシピ」というプロンプトをAIレシピ生成ツールに入力した。すると「セージ風味のブラートヴルストとキャラメリゼオニオンのスキレット」というレシピが出てきた。おお、いい感じじゃない、と思った。
AI生成のレシピでつくってみる
わたしが使ったプラットフォームは「DishGen」という、AI料理に特化した数少ないサービスのひとつだ。OpenAIやAnthropicのような大規模言語モデル(LLM)からレシピを取り出し、それをキッチンで使いやすい形に整えてくれる。また、ユーザーが食事プランを作成できる機能もある。(ChefGPTやEpicureなど、似た機能を持つツールも他に存在する。)
ただ、DishGenのセージとソーセージのレシピでは、セージはたった大さじ2杯しか使われておらず、「大量」というには少し物足りない。それでも指示に従ってつくってみたところ、そこそこ満足のいく火曜の夜ごはんになった。ただし、完成にこぎつけるには、自分の料理経験もかなり活かす必要があった。
例えば、材料欄には「大きな黄色の玉ねぎ、薄切り」とだけ書かれていた。皮はむくのか? 切る前に半分にするのか? 縦に切るのか、横に切るのか? そもそも「薄く」とはどのくらいの薄さなのか? そんな基本的なことも書かれていない。きちんと書かれたレシピを好む人なら、きっとイライラしたことだろう。
レシピには「大さじ2のフレッシュセージの葉(刻んだもの)」とも書かれているが、細かい人には、むしろ分かりにくい表現かもしれない。セージの葉を折りたたんでスプーンに押し込んでから刻むのか?(「刻んだフレッシュセージの葉を大さじ2」と書いたほうがずっと明快だ。)
料理を実際に始めると、バターとスライスした玉ねぎをスキレットに入れて「キャラメリゼされるまでゆっくり炒める、約12分」とあった。でも、ツッコミどころ満載だ。混ぜなくていいの? 途中で確認すべきポイントは? これで合ってるのか、わからないままつくることになる。また、その時点で、このレシピが4人分にしては玉ねぎが少なすぎるということにも気づいた。
妻のエリザベスは、それをテーブルに置いた瞬間に気づいた。「これで全部? それともまだあるの?」と彼女。「なんだか、ちょっとしたかたまりにしか見えない」
プロがつくったレシピの魅力
料理、レシピ本、レシピ執筆に長年関わってきた経験から言って、新しい情報源からレシピを試したときに、たまたま最初に“外れ”を引いてしまう確率は極めて低いと言える。
セージをふんだんに使ったレシピを探そうと、『New York Times』のクッキングセクション(アプリにもなっている)を調べてみたら、サミン・ノスラットの「フライドセージ入りサルサ・ヴェルデ」がヒットした。その名前を聞くだけで、ちょっとよだれが出そうになったんじゃない?
翌晩、冷蔵庫にあった低温調理済みの鶏もも肉と一緒にそのレシピをつくってみた。すると、手順の明快さや、ノスラット本人が楽しそうに料理している動画のありがたさがすぐに分かった。自分にとっては初めての料理だったけれど、レシピと動画を見るだけで、まるで迷子にならずに進めた感じだ。特にありがたかったのが、セージの揚げ方のコツ。自分はいつもやりすぎていたらしい。揚げるのは泡が止まるまで、できれば182°Cの油で揚げる。キッチンペーパーを敷いたトレイでカリッとさせて、フレーク状の塩を振り、ひと口食べれば、すべてが成功だったことがすぐにわかる。

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