1日のニューヨーク外国為替市場では、円が対ドルで一時2%を超える大幅高を記録した。米雇用統計で雇用者数の伸び鈍化が示され、ドルが大きく売られた。
円は朝方の雇用統計発表を受けて、上げ幅を一気に拡大。その後、午後の取引で米連邦準備制度理事会(FRB)のクーグラー理事が任期満了前の8月8日付で辞任すると伝わると、さらに上値を伸ばす展開となった。
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円は一時2.3%高の1ドル=147円30銭と、4月10日以来の大幅上昇。
一方、ブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.9%下げ、4月11日以来の大幅な下落率となった。
為替直近値前営業日比変化率ブルームバーグ・ドル指数1210.90-10.75-0.88%ドル/円¥147.39-¥3.36-2.23%ユーロ/ドル$1.1595$0.01801.58% 米東部時間16時55分
雇用統計では、非農業部門雇用者数の伸びがこの3カ月に大きく減速したことが示された。7月は7万3000人増(市場予想は10万4000人増)。5、6月分は合わせて26万人近く下方修正された。失業率は4.2%に上昇した。
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発表後にドルは主要10通貨全てに対して下落したが、対円での下げが最も大きかった。ユーロは対ドルで1.6%高まで上昇する場面があった。
マネックスの為替トレーダー、ヘレン・ギブン氏は「米労働市場がかなり急激に冷え込みつつあることは今や明らかだ」と指摘。「今後数日でトランプ大統領がパウエルFRB議長への攻撃を強める可能性は高く、それに伴いドルは一段と下落し得る」と述べた。
ノムラ・インターナショナルの通貨ストラテジスト、宮入祐輔氏は、過去2カ月分の雇用者数が大幅に下方修正されたことに言及し、ウォラーFRB理事が7月の連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げを望んだ理由を裏付けると話した。
INGのチーフ国際エコノミスト、ジェームズ・ナイトリー氏は「7月の雇用者数の伸びは失望を誘うものだったが、米経済の健全性に対する見方を一変させたのは5、6月分の大幅な下方修正だ」と指摘。「インフレ率は上昇しているが、9月利下げの可能性はますます高まっているように思える」と述べた。
オンライン証券会社XTBの調査ディレクター、キャスリーン・ブルックス氏は「関税の影響はまだ本格的には表れていない。その段階で雇用の伸びが鈍っているのは憂慮すべきことだ」と指摘。「賃金の上昇は依然として力強いが、労働市場は急速に弱まっている」と述べた。
こうした状況は利下げの必要性を示しているとした上で、「ドルにとっては悪材料だ」と同氏は話した。
株式
米株式相場は大幅続落。米雇用市場を巡る不安に加え、トランプ大統領が表明した各国・地域への関税措置の影響に対する懸念が相場を押し下げた。米国とロシアの地政学的緊張も下押し圧力となり、全般的にリスク資産から安全資産への逃避が加速した。
株式終値前営業日比変化率S&P500種株価指数6238.01-101.38-1.60%ダウ工業株30種平均43588.58-542.40-1.23%ナスダック総合指数20650.13-472.32-2.24%
トランプ氏は原子力潜水艦2隻を「適切な海域」に配備するよう命じたと明らかにした。メドベージェフ元ロシア大統領の「極めて挑発的な」発言を受けた措置だと説明した。
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S&P500種株価指数は1.6%安と、5月以来の大幅下落で引けた。アマゾン・ドット・コムが8.3%安。前日の通常取引終了後に発表した7-9月(第3四半期)の営業利益見通しが、市場予想より弱かったことが嫌気された。
雇用統計について、モルガン・スタンレー・ウェルス・マネジメントのエレン・ゼントナー氏は「これまでテフロン加工のように堅調にみえていた労働市場に今朝、傷がついた」と指摘。
「特に今後1カ月のデータでこの傾向が裏付けられれば、利下げに慎重な姿勢を示してきたFRBは9月利下げに向けて、より明確な道筋を見いだす可能性がある」と述べた。
各国・地域からの輸入品に対する米国の平均関税率が引き上げられたことに加え、労働市場の冷え込みも示された。この二重の衝撃に、市場関係者は経済予測の見直しを迫られている。
7月のFOMC会合で政策金利の据え置きを決めたFRBの様子見姿勢にも、疑問が投げ掛けられる格好となった。パウエル議長は会合後の記者会見で、雇用市場に下方リスクはあるが依然堅調との認識を示していた。
グローバルXのスコット・ヘルフスタイン氏は「ホワイトハウスが正しかったのか、そしてFRBが遅過ぎたのか。その点が今の議論だ」と指摘。「FRBが待ちの姿勢を取ったのは恐らく正しかったが、雇用の伸びと経済はこれまでの猛スピードから減速しつつある」と話した。
クリーブランド連銀のハマック総裁は、雇用統計発表後にブルームバーグテレビジョンに出演。米労働市場は依然として健全なように見えるが、同統計は「確かに失望を招く内容だった」と述べた。
今週のFOMC会合で反対票を投じたFRBのウォラー理事とボウマン副議長(銀行監督担当)はこの日、反対した理由を個別の声明で説明。利下げへの慎重姿勢を継続することが労働市場に不必要な打撃を与える恐れがあるとの懸念を示した。
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ハリス・フィナンシャル・グループのジェイミー・コックス氏は「9月利下げは確実となり、失われた時間を挽回するために50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げが実施される可能性もある」と述べた。
米国債
米国債相場は大幅上昇(利回り低下)。短期債の利回りは2023年終盤以来の大幅低下となった。雇用統計が弱い内容となったことを受けて9月利下げ観測が強まった。
クーグラーFRB理事が任期満了前に辞任すると伝わった後に、利回りは一段と低下した。
国債直近値前営業日比(bp)変化率米30年債利回り4.82%-8.0-1.63%米10年債利回り4.21%-16.0-3.66%米2年債利回り3.68%-28.0-7.06% 米東部時間16時55分
2年債利回りは一時29ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の3.665%となった。
短期金融市場では、年内2回の利下げが完全に織り込まれた。9月会合での利下げ確率は90%。雇用統計の発表前は40%未満だった。
アメリベット・セキュリティーズの米金利トレーディング・ストラテジー責任者、グレゴリー・ファラネロ氏は「FRBは9月に利下げを開始するだろう」と指摘。「FRB議長が労働市場の強さを示唆した数日後に、こうした数字が出てくるのはある意味で驚きだ」と述べた。
ブラックロックのグローバル債券担当最高投資責任者(CIO)、リック・リーダー氏は、9月のFOMC会合を0.5ポイントの利下げで始めるべきだと、ブルームバーグテレビジョンで主張。「それがインフレに深刻な影響を及ぼすとは思わない」と述べた。
原油
ニューヨーク原油先物は大幅続落。一連の弱い米経済指標や関税発表を受けて、米景気見通しが悪化する中、エネルギー需要への重しになるとの見方が広がった。
石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラスが今週末の会合で、市場への供給拡大を決定すると広く予想されていることも相場を圧迫した。
OPECプラスは今週末の会合で9月分の生産について、日量54万8000バレルの引き上げで合意すると、トレーダーらは見込んでいる。
米雇用者の伸びはこの3カ月に大きく減速したほか、7月の米製造業活動は引き続き縮小し、9カ月ぶりの水準に沈んだ。こうした一連の低調な経済指標を受けて、これまで限定的だったトランプ大統領の関税政策の影響が、ついに経済成長に悪影響を及ぼし始めたとの懸念が強まった。
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トランプ氏は、カナダを含む複数の国・地域に対する関税措置の最終方針を決定。隣国カナダからの一部輸入品に課す関税率は3月に発動した25%から35%に引き上げられたが、原油は適用を除外された。
TDセキュリティーズのコモディティーストラテジスト、ダニエル・ガリ氏は「関税は今や正式に日常生活の一部となった。今後はその副作用に焦点を移さなくてはならない」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物9月限は前日比1.93ドル(2.8%)安の1バレル=67.33ドル。6月24日以来の大幅な下げとなった。ロンドンICEの北海ブレント10月限は2.8%下げて69.67ドルで引けた。
金
金相場は上昇し、スポット価格は2カ月ぶりの大幅高となった。米雇用者数の伸びが市場予想を下回り、早ければ9月に利下げが実施されるとの観測が強まったことから、買いが優勢になった。
借り入れコストの低下は、利子を生まない金には追い風となる。米国債利回りが低下したことも、金を支えた。
さらに、トランプ米大統領が世界各国・地域からの輸入品に新たな関税率を適用する大統領令に署名したことを受けて、逃避先資産としての金の魅力も高まった。
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スポット価格はニューヨーク時間午後2時現在、前日比57.96ドル(1.8%)高の1オンス=3347.89ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、51.20ドル(1.5%)高の3399.80ドルで引けた。
原題:Dollar Drops as Payrolls Boost Fed Cut Bets; Yen Up: Inside G-10
Dollar Drops 1% on Payrolls; Yen Rises More Than 2%: Inside G-10
Stocks Sink as Bonds Jump on Deepening Jobs Cracks: Markets Wrap
Stocks Extend Jobs-Fueled Slide on Russia Jitters: Markets Wrap
Treasuries Soar Most Since 2023 as Traders Boost Rate-Cut Bets
Oil Sinks as Slew of Weak US Economic Data Revives Demand Fears
Gold Jumps After Slower US Job Growth Boosts Fed-Cut Bets(抜粋)
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