「ミズイロインド アオヤマ」2階の様子
大通りから一歩足を踏み入れると、洋服やこだわりの食器、ビンテージの家具が静かにたたずむ空間が広がっている。まっさらな白壁が清々しい、ミニマルなしつらえの店。ウィメンズブランド「ミズイロインド(mizuiro ind)」が、6月にオープンした旗艦店「ミズイロインド アオヤマ」だ。これまでの青山店を移転し、2フロア371㎡に大幅増床した。
着る人を引き立てる
“ジャパニーズトラッド”
クールでスタイリッシュなたたずまい
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「ミズイロインド」2025-26年秋冬コレクション
「ミズイロインド」2025年秋冬コレクション
「ミズイロインド」2025-26年秋冬コレクション
「ミズイロインド」2025-26年秋冬コレクション
「ミズイロインド」2025-26年秋冬コレクション
「ミズイロインド」2025-26年秋冬コレクション
西洋由来の洋服に、日本人らしい美意識をこめる——これが約20年にわたって「ミズイロインド」が大切にしてきた哲学だ。着物のように女性のどんな体形にもなじむ柔らかなシルエットと、装飾を抑えたシンプルで飽きのこないデザイン。ほとんどのアイテムは日本素材を用いて、より目が行き届く国内で生産する。それらが織りなすクールでスタイリッシュなムードによって、日本発ブランドとして独自の立ち位置を築こうとしている。デザインチームは「これがわれわれの考える“ジャパニーズトラッド”。服だけを主張するのではなく、あくまでも着る人を引き立てるものを」と話す。
日本、アジア、そして欧米へ
「ミズイロインド」のありようを凝縮
「ミズイロインド アオヤマ」の外観
青山店は単に日本向けの旗艦店ではない。これまでの店舗で表現しきれなかった「ミズイロインド」のありようを凝縮させ、アジア市場へ発信するための拠点である。居心地のよい店舗作りにも細やかな気配りを施し、洗練された空間設計や、顧客の願いに寄り添う接客を通して、インプレッシブ(感動的)な体験と深層的なぜいたく感を届け3たいという。同ブランドでは10年ほど前からいち早くメンテナンスサービスも行っており、購入店舗を問わず服のタグを確認できれば修理を受け付けている。また、子ども支援団体「セーブ・ザ・チルドレン」に売り上げの一部の寄付を続けてきた。モノや人との縁を大切にする精神が根付く日本らしい取り組みと言えるだろう。
「ミズイロインド」はさらなる飛躍に向け、変化の最中にある。トータル提案のための新規アイテム開発に着手しており、2025年秋冬にはオリジナルバッグ&シューズのほか、シーンレスで着用できるドレスラインの単独店を以前の青山店があった場所に開き、ブランドの裾野を広げていく。さらに、グローバル規模で拡販に注力し、1月にはパリで展示会を実施し、海外で約30の卸先を新たに獲得した。今夏には韓国・江南の「現代百貨店」で期間限定ストアを4カ月間実施する。26年春には台湾の松山文創園区に隣接する商業施設「誠品生活」1階に直営店を開く予定だ。
とはいえ、これはまだ通過点にすぎない。時代に合わせてコレクションの中身が変容するように、青山店の世界観の表現もアップデートし、よりクールでスタイリッシュな一面の解像度を上げ、アジア進出の先には欧米での本格展開も見据える。「ミズイロインド」を誰もが知る存在へと進化させるための布石なのだ。
ラグジュアリーの本質は審美眼にあり
アートギャラリーのように静ひつな空間
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ビンテージ家具やアートが点在する空間。「ミズイロインド アオヤマ」2階の様子
さまざまな素材使いにより、無機質さと温かみが混在。「ミズイロインド アオヤマ」2階の様子
ファッションアイテムにとどまらず、「オールドバカラ」のグラスも並べる
1階の様子。アンティークのショーケースに飾った季節の花がブランドの世界観へと誘う
日本を代表するファッションの発信地である青山から、「ミズイロインド」は知性あふれる豊かな生活を求める人々の心を満たそうとしている。国内では同店限定となるユニセックスラインを展開するほか、オールドバカラや益子焼の器といったえりすぐりの雑貨も扱う。意外なのは、青山というラグジュアリーブランドが軒を連ねる立地ながら、どのアイテムも手の届きやすい価格であることだ。ビンテージスピーカーから流れる重低音が効いた心地よいBGMとともに、「良いものを見抜く審美眼や内面こそ、ラグジュアリーの本質」(「ミズイロインド」ディレクションチーム)という世界観で作られたアートギャラリーのような雰囲気の中、ショッピングを楽しめる。
店内には、1960年代にデンマークのギルド展示会で発表されたソファや、スイス人建築家のピエール・ジャンヌレが手掛けた「キャピトル コンプレックス オフィスチェア」、アメリカ・ニューヨーク州ハドソンバレーを拠点に活動するキアラン・キンセラによるスツールなど、意匠を凝らした名作が点在する。「伝統的なものには、理屈では説明できないパワーがある」として、数々のビンテージ家具が青山店を彩る。
フランス人アーティストのマリー・テレーズ・ファイエが1950年に発表した巨大なタペストリーも、新旧問わずよいものを取り入れようとするブランドの姿勢を後押しする。「『ミズイロインド』を訪れる人に、ぜいたくで静ひつな空間を提供するために、欠かせないセレクト」。石造りのフィッティングルームや、天井に届くほどの大きな鏡など、さまざまな素材使いがあいまって無機質さと温かみが交差し、五感を刺激する。
ブランド初のユニセックスライン、
“フリーピープル”誕生
新たにパリで発表するユニセックスライン“フリーピープル”2025年春夏
「ミズイロインド」は2025年春夏コレクションから新たにユニセックスライン“フリーピープル(FREE PEOPLE)”を始動した。発表は主にパリの合同展で行い、海外のセレクトショップなどを卸先に、日本ではこの新店「ミズイロインド アオヤマ」でのみ常時展開する。“国籍、年齢、性別を超えて誰もが自由にまとえるワードローブ”がコンセプトだ。モノトーンを基調としたカラーパレットと、ゆったりと体に沿って流れ落ちるシルエットが、フォーマルなユニホームのようにも、気張らないカジュアルウエアのようにも見える不思議なバランスを演出する。
ジェンダーレスブランドは数多くあるが、同ラインの大きな特徴は、国内外問わず、ワンサイズで提案するという点にある。男女共に着用可能にするために単にオーバーサイズで仕上げるのではなく、両性の異なる骨格を優しく包んで着る人の個性を引き立てる基盤をつくるために、アノニマスな(匿名性のある)ムードを与えている。“ジェンダーレス”に真正面から向き合った実験的なコレクションだ。
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