訪朝して金正恩総書記と会談したロシアのセルゲイ・ラブロフ外相(左、提供:Lavrov Russian Foreign Ministry/ZUMA Press/アフロ)

 北朝鮮国営の朝鮮中央通信が発信する内容と写真は、特別な意図をもって作られ流される。

 そのため、発表される内容を見れば、今の北朝鮮情勢の真実やロシアと北朝鮮の関係の一端を読み取ることができる。

 私は最近、朝鮮中央通信が公表した金正恩総書記とロシアからの訪問者、セルゲイ・ラブロフ外相(2025年7月12日)、セルゲイ・ショイグ前国防相(2025年6月4日)との会談の写真を見て、北朝鮮のロシアへの対応とその宣伝が、これまでとは大きく変わったと感じた。

 北朝鮮は以前、ロシアからの使者を大歓迎していた。

 ところが、最近では見下し、格下に見えるような冷遇に変わったのである。「どちらが大国で、どちらが小国か」を見間違えそうで、私は、大変驚かされた。

 北朝鮮の金正恩氏がロシアを見下すような態度を示すなど、ウクライナ戦争前には考えられなかった。

    

 その変化の背景(ロシアの内情)には何があるのかを、次のような観点で考察する。

①変化の実態

②北朝鮮の意図

③これまでロシアをどう見てきたか

④具体的な北朝鮮の狙い

 ロシアがウクライナに侵攻した当初から最近まで、北朝鮮中央通信が公表している写真を使い、金正恩氏が北朝鮮を訪問するロシアの大臣および大臣クラスに対する態度、処遇の変化について具体的に分析する。

1.2023年7月、歓待されたロシア国防相

 ロシアのショイグ国防相(当時)は2023年7月、朝鮮戦争勝利70周年祝賀のために北朝鮮を初めて訪問し、金正恩氏と会談した。

 ウクライナ戦争開始からおおむね1年半が経過した時だ。

 この時、国防安全分野において両国間の戦略・戦術的共同と協調について討議され、2人は昼食を共にした。

 そして、ショイグ国防相は、格別な関心を払って温かく歓待してくれていることに謝意を示したという。

写真1 金正恩・ショイグ会談の様子

ショイグ氏の笑顔が印象的だ(出典:朝鮮中央通信2023年7月28日)

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 ロシアは将来、軍事支援を受けることを考えていたのだろうが、この時期は両国で2024年6月に「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結することが焦点であったようだ。

 朝鮮中央通信が公表した2人の会談の雰囲気は、写真1のとおりだ。

 2人は真剣に向き合い、距離感や座り方には、大国の国防相と小国ではあるが元首であり、同等であるという感覚を受ける。

 ショイグ氏は、余裕の笑顔である。

 関係強化のための条約締結準備が行われていたこの時、金正恩氏はショイグ氏と対等に接している様子を写真で公表したのである。

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