スコットランドのターンベリーゴルフコースでリフレッシュ? 同ゴルフ場でトランプ大統領を出迎えたキア・スターマー英首相(7月28日、写真:ロイター/アフロ)
関税合意はメディアの関心逸らすため?
ドナルド・トランプ米大統領は7月27日、欧州連合(EU)に対する関税を15%とすること、EUは米国からエネルギー関連製品を7500億ドル(約110兆円)購入すること、米国に6000億ドル(約89兆円)を投資(投資などは日本を上回る規模)することで合意したと発表した。
トランプ氏は記者団に「史上最大の合意だ」と成果を誇った。
関税外交で国益を守ったと宣言したつもりだったが、記者の一人が「エプスタイン・スキャンダル記事がメディアに大々的に報じられているのを嫌って関税交渉妥結を急いだのか」と辛らつな質問をぶつけた。
トランプ氏は気色ばんでこう答えた。
「冗談じゃない。全く無関係だ。そう考えているのはあんただけだ」
7月28日付のワシントン・ポスト紙は「Trump fumes as Epstein Scandal dominates headline」(トランプ、エプスタイン・スキャンダルが見出し独占に激怒)とする見出しで長文の記事を掲載した。
(Trump fumes as Epstein scandal dominates headlines, overshadows agenda – The Washington Post)
米メディアが、大統領就任100日を迎えたトランプ氏と少女買春周旋の故ジェフリー・エプスタイン元被告との腐れ縁を執拗に追及していることにトランプ氏が苛立ち、激怒していることを側近たちから聞き出している生々しい報道だ。
トランプ氏にしてみれば、不法移民問題、貿易赤字解消のための関税外交と次々と成果をあげ、支持率も就任直後からの40%の「比較安定支持」を堅持。
(Trump approval steady despite budget law concerns, Fox poll finds | Fox News)
すべてを一変させたWSJのスクープ
トランプ氏が20年前にエプスタイン元被告に宛てて出した「下品な手紙」の存在を、保守系ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)がスクープするまで、トランプ氏は「我が世の春」を満喫していた。
ところが、WSJの報道ですべてが一変した。
WSJはその後、「エプスタイン・ファイルにトランプ氏の名前があることを、トランプ政権の司法当局者(複数)が明かした」と、追い討ちをかけた。
トランプ氏がとりわけショックを受けたのは、WSJがこれまでトランプ氏には好意的だったはずのメディア王、ルパート・マードック氏が所有する経済紙だったことだった。
(もっとも情報通によると、マードック氏は読者が喜ぶ紙面作りがモットーで、2016年の共和党予備選の時にはトランプ氏のライバルだったロン・デサンティス現フロリダ州知事を支援していたとされる)
トランプ氏は直ちに、これは誤報だとしてマードック氏を告訴した。
トランプ氏は、以前から囁かれていたエプスタイン元被告による「少女買春顧客リスト」(自らの名前が書かれていないか一抹の不安も抱いていた)の存在を最初は否定した。
司法省、米連邦捜査局(FBI)、米中央情報局(CIA)、国家情報局などに送り込んだ「忠臣」たちに隠蔽工作、情報操作を命じてきた。
(パム・ボンディ司法長官、トッド・ブランチ司法副長官、カシュ・パテルFBI長官、トゥルシー・ギャバード国家情報長官、ジョン・ラトクリフCIA長官)
さらに上下両院はトランプ共和党が過半数を占めており、エプスタイン・スキャンダル解明のための特別検察官設置や下院監視委員会による調査の動きを阻止できるとの読みもある。
ボンディ、パテル両長官は7月6日、トランプ氏の意向を踏まえて以下のステートメントを出した。
「今後、さらに(エプスタイン関連文書の)開示をしないことが、適切あるいは正当であるというのが司法省とFBIの決定である」
(It is the determination of Department of Justice and Federal Bureau of Investigation that no further discloser would be appropriate or warranted.)
ところが誤算だったのは、トランプ氏を支える支持基盤MAGA(Make Amereica Great Again=米国を再び偉大に)の一部にエプスタイン・スキャンダル対応に強い不満を抱く勢力が台頭したことだった。
トランプ氏は当初、こうした動きに「詐欺師どもが」(Scam)と軽くあしらった。
MAGAの不満分子を煽ったのは、エプスタイン・スキャンダルの全容を暴けと迫る親トランプのインフルエンサーたちだった。
その中には若年層に影響力を持つチャーリー・カーク氏(Turning Point USAの設立者)、ジャック・ポソビエック氏、極右過激派「Qアノン」の最高幹部、ジェイク・アンジェリー(本名はジェイコブ・アンソニー・チャンスリー)氏もいた。
これらインフルエンサーたちは、エプスタイン元被告の少女買春斡旋に群がるエリート富裕層の行為に激しい憤りを感じている草の根保守派の声を代弁していると言える。
(Right-Wing Influencers Say Ghislaine Maxwell Is Key to Unlocking Epstein Case – The New York Times)
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