2025年7月24日、ロシアのアルハンゲリスク州セベロドヴィンスクで、原子力弾道ミサイル搭載潜水艦上での海軍旗掲揚式に出席したプーチン大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

プーチン大統領が目指すのは「ドンバス地方の完全占領」か

 7月14日(ワシントン時間)、アメリカのトランプ大統領はロシアのプーチン大統領に対し、「50日以内にウクライナ戦争の停戦に合意しなければ、ロシアに非常に厳しい関税をかける」と迫った。これまで、プーチン氏にいいように転がされてきたトランプ氏だが、ようやく不信感を抱き始めたようだ。

 プーチン氏が要求を守らない場合は、ロシア産の石油・天然ガスを大量輸入する中国やインド、トルコなどに100%の2次関税を課して間接報復する構えで、渋っていたウクライナへの武器供与も再開させた。

ロシアに対し「50日以内に停戦交渉に至らなければ厳しい関税を課す」と通告するトランプ米大統領だが…(写真:Pool/ABACA/共同通信イメージズ)

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 だが、プーチン氏は馬耳東風で、全く意に介さない。米ニュースサイト「アクシオス」によれば、さかのぼること7月3日、トランプ氏との電話会談の際にプーチン氏は「60日以内に東部ウクライナで新たな攻勢をかける」と話したらしい。おそらくロシアはドンバス地方(ルハンスク、ドネツク両州)の完全占領を目指すと見られる。

「60日」の期限は8月31日で、トランプ氏の「50日」の期限は翌日の9月1日。これは単なる偶然ではないだろう。プーチン氏の計画を聞いたトランプ氏が、攻勢実行のための時間的猶予をあえて与えたのではないかとの観測も一部メディアから出ている。

 現にトランプ氏が「50日期限」を宣言した2日後の7月16日深夜~17日未明にかけて、ロシアはウクライナの首都キーウにドローン400機超、ミサイル30発以上による空爆を実施した。キーウへのドローン攻撃では過去最大規模だ。

ロシアのドローン攻撃を受け、地下鉄駅構内に避難するウクライナ・キーウの人々(2025年7月19日、写真:ロイター/アフロ)

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 なぜプーチン氏はここまで強気なのか。主要メディアの多くは「圧倒的に優勢なロシアは、わざわざ停戦に応じる理由がない」と指摘する。

 だが本当に「圧倒的に優勢」なのだろうか。実際は満身創痍で、これ以上大規模な攻勢は困難ではないかと筆者は見ている。ロシア軍の消耗は想像以上に激しく、このまま戦争を続けた場合、強大なロシア軍が自壊しかねない。こうなると、世界最大の国土を誇る祖国の防衛どころではない。

 特に憂慮すべきは、異常なほど多い将兵の消耗だ。

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