長距離飛行が可能なウクラナ製ドローン「レレカ」をチェックするウクラナ兵(7月20日ハルキウ州で、写真:ロイター/アフロ)

1.自爆型無人機大量投入と偽ドローン

 ウクライナ軍参謀本部などによると、ロシアは2024年8月、シャヘド型無人機の国産化を始めた。

 国産化から2か月後の2024年10月には1か月間で、ウクライナに対して約2000機の無人航空機で攻撃した。

 ウクライナ空軍司令部が発表するロシアのシャヘド等の攻撃回数の推移を下のグラフ1で見ると、この時期(2024年8月グラフ1赤枠)から、攻撃機数が増加していることが分かる。

グラフ1 ロシアシャヘド等自爆型無人機による攻撃機数の推移

出典:ウクライナ空軍司令部日々発表資料を筆者がグラフにしたもの(グラフは以下同じ)

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 攻撃機数が増加し始めた時期から、ロシアは偽ドローンを使用していたようだ。だが、どの程度偽ドローンが使われていたのかよく分からなかった。

 というのも、偽ドローンが出現した当初、これらの無人機の識別については、墜落してレーダーから消えた後、地上の残骸を専門家が調査しなければ確認できなかったからだ。

 飛行中に本物かどうか判別したくてもできなかったのだ。

 ただ、ウクライナ軍は2024年10月頃には、これら2000機はすべてシャヘドではなく、約半分はロシアがウクライナの注意をそらし、防空に過負荷をかけようとしている偽ドローン、または囮のドローンであったことを確認していた。

 ロシアは、グラフ1にあるように急激に無人機攻撃回数を増加させている。2025年6月には約5000機に急増している。

 だが、その中には多くの偽ドローンが含まれている。そこで、今回は偽(囮)ドローンについて考察する。

 具体的には偽ドローンとは何か、偽ドローン攻撃数の実態、その攻撃の狙いと効果、偽ドローンにミサイルを使えばどうなるか、米欧の現有の兵器で最適な対処方法は何か、今後日本も大量ドローン攻撃への対処(安価な方法)の必要性・・・の順で述べてみたい。

2.偽(囮)ドローンとは

 2024年11月10日にモルドバに落下したもの、2025年7月5日に撃墜されてドニプロ川に落下したものなどの偽ドローンの写真が公表されている。

 ロシアが大量に使用する偽ドローンは、「シャヘド(ゲラン2)」とは異なり、アルミニウムや複合材料ではなく、ポリスチレンと合板のような安価な材料で作られている。

 そのため、河川に落下しても浮いているのだ。また、小型で弾頭もない(火薬が入っていない)。

写真 ロシアの偽(囮)ドローン

出典:the Ministry of Defence of Ukraine 

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 弾頭がない無人機は落下しても爆発しないので、偽ドローンを撃ち落とす必要はない。

 しかし、防空部隊としては、飛行している無人機が弾頭を「搭載しているかいないか」を空中で100%識別することは困難なため、飛行中に撃破する必要がある。

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