欧州の金属トレーダーは、ますます切迫感を持ってレアアース(希土類)確保を急いでいる。中国からの直接調達がほぼ不可能になったためだ。

  防衛産業の製造業者は、備蓄や供給源の分散によって操業継続が可能だとしているが、トレーダーは既に流通市場に依存し始めている。解決策を見いだせなければ、供給ひっ迫の影響が近いうちに表れ始める恐れがある。

  この危機は、中国が4月初旬に重要鉱物の輸出を停止したことが端緒となった。対象となったのはミサイルや衛星、戦闘機に使用されるテルビウム、イットリウム、サマリウムなどで、これらの輸出管理体制を大幅に強化した。多くの重要鉱物の採掘・精製は中国が事実上独占しており、どの国・企業に供給するかを中国が選ぶことができる。この事実から、欧州の自衛能力は中国に大きく依存していることに欧州連合(EU)の首脳は気づかされたと、事情に詳しい関係者は語った。

  ドイツのケムニッツ工科大学で金属資源の供給を研究するヤコブ・クリク氏は「この問題について、企業と政治家では見方が異なる。政府は当然ながらより広い視野で捉えなければならない」と指摘。「だからこそ、企業の説明には慎重になる必要がある。市場データは全く別の現実を示している」と述べた。

  欧州の重要鉱物の供給確保で速やかな解決策はない。欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、「中国による脅し」と表現した問題に断固たる対応を取ると約束したが、長期的な解決には多額の投資と強い政治的意思が必要となる。しかし、加盟27カ国にとって、いずれも容易な条件ではない。

Pentagon Losing Control of Bombs to China's Monopoly

天津の工場で生産されるネオジム磁石

Photographer: Doug Kanter/Bloomberg

  輸出に当局からのライセンス取得を義務付けた新たな制度の下で、中国政府は、どの国や産業分野が中国産のレアアースにアクセスできるかについて拒否権を持つようになった。軍民両用品の原料を供給する他国と同様に、レアアース輸出許可の申請では中国も最終的な使用目的を証明する詳細な質問票の提出を求めている。

  欧州当局者によれば、4月以降に中国は個別企業に対して6カ月有効のライセンスを計1500件承認した一方で、EUが要請した複数年のライセンス付与は拒否したという。

  4月の供給ひっ迫以降、中国当局は輸出制限をやや緩和したものの、それでも欧州側が安心できるほどではない。

  EU当局者は中国の新制度について、「煩雑かつ持続不可能」と批判し、特に軍備の内容や規模を把握する手段として利用されかねない質問票の撤廃を求めている。しかし同時に、制度が変わる見込みはほとんどないとも認めている。

  国交樹立50周年を記念してEUと中国の当局者が今週北京で行う会談では、レアアースが主要な議題の一つとなる見通しだ。ただし、抜本的な解決策が打ち出されるとの期待は低い。

  事情に詳しい関係者によれば、中国は重要鉱物へのアクセスを交渉材料として利用し、EUの中国製電気自動車(EV)に対する調査や関税で譲歩を引き出そうとしているとの懸念も一部にある。これに対してEUでは、フランスの航空機部品や、オランダのASMLホールディングの半導体製造装置の輸出制限を中国にちらつかせるべきだとの主張も当局者から上がっているという。

  だが、強硬なアプローチには多くの問題もある。中国にどう対抗するか、報復措置をどこまで踏み込むかについて、EU内で意見は割れていると関係者は説明した。また、自国の産業のため取引を確保しようと中国と直接交渉している加盟国もあるため、欧州委員会の交渉力が損なわれているという。

China's Foreign Minister Wang Yi Visits European Union Officials

ブリュッセルで2日会談したEUのカラス外交安全保障上級代表(外相)と中国の王毅外相

Photographer: Omar Havana/Bloomberg

  欧州の防衛関連企業には既に部品の備蓄を開始し、供給源は十分に分散されているとして自信を示すところもある。だが、一部の業界専門家は、企業側が状況を過小評価しているか、危機の深刻さを正確に理解していないと指摘する。原料の採掘や精製に起業が直接関わるといった構造的な解決策は高いリスクも伴い、欧州ではほぼ失われている専門性も求められる。

  一方、自らが優位に立っていると認識する中国は、欧州や米国に対してより率直な言い回しを使うようになった。

  事情に詳しい関係者によれば、中国の王毅外相は今月初めに会談したEUのカラス外交安全保障上級代表(外相)に対し、ウクライナでの戦争でロシアが敗北することを中国は望まず、そうなれば米国の注意が中国に向かってくるからだと説明した。中国はこれまで公には、ウクライナでの戦争には関与していないと主張、ロシアの戦争継続に欠かせない物資を供給しているとの主要7カ国(G7)の非難を否定している。

  中国がレアアースの輸出制限を一段と強化する場合、ロシアに対するEUの自衛能力が妨げられるだけでなく、ウクライナに武器を供給している欧州防衛企業への中国の影響力、さらにはウクライナの武器供給に対する中国の支配力も浮き彫りになる。

  欧州がリスクを低減する上で、日本の事例がモデルになるかもしれない。2010年に中国がレアアース輸出を停止した日本は、政府機関に国外の鉱山開発に投資する役割を負わせ、オーストラリアやフランスなど各地にサプライチェーンを構築した。

  中国との緊張が悪化を続けるなら、欧州も同様のアプローチを取る必要があるだろうと、クリク氏は述べた。同氏は、まず欧州域内にレアアースの加工施設を建設し、戦略的備蓄の整備を長期的目標とすべきだと提言。その段階に至った後、EU独自の保護主義的措置を講じる必要があるだろうと語った。

 

原題:EU Wrestles With China’s Chokehold Over Crucial Defense Supplies(抜粋)

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