中国屈指のハイテク都市としてのイメージが強い深圳市だが、実は凋落が激しい(写真:Markus Mainka/Shutterstock.com)
(福島 香織:ジャーナリスト)
かつて中国でもっとも若者が目指すといわれた一線都市、深圳の凋落が激しい。
最近、深圳市とその周辺地域の1〜5月の経済統計が相次いで発表されたのだが、それがすべて全国平均を下回っていたのだ。
今年1〜5月、深圳市にある一定規模以上の企業における工業付加価値増加率(成長率)、固定資産投資増加率、社会消費小売り総額増加率、輸出入総額増加率の4項目について、前年同期比で全国の水準をすべて下回った。深圳はそれぞれ3.5%、マイナス9.2%、4.7%、マイナス1.9%だった。全国における同じ項目の増加率は6.3%、3.7%、5.0%、2.5%だった。
中国のシンクタンクCDI研究員の宋丁が中国メディアに語った分析によれば、今年1〜5月の深圳経済に関するこれら4つの指標がすべて全国平均を下回った理由とは、主に2つあるという。
一つは深圳の昨年の全体的な経済成長が比較的高水準で、今年の経済成長の起点自体がもともと高かったこと。このため今年の経済成長が高い速度を維持するのが比較的困難で、一定程度減速したように見えた、という。
2024年の1〜5月の深圳のこの4つの指標の前年同期比増加率は、12.3%、9.1%、1.8%、34.3%で、社会消費小売総額を除けば、比較的高い成長率であった。
さらにもう一つの理由として、今年、トランプが仕掛けた関税戦争の影響が深圳にとって特に大きかった、という。深圳の昨年の輸出入総額は全国首位で、今年に入ってから、トランプ関税戦争の直撃を受けたのだった。
このほか、深圳の輸出入貿易における工業製品の割合が比較的高いこともある。関税戦争が勃発した時、短期的な市場の動揺が激しく、輸出注文が大幅に減少し、直接深圳の輸出入統計を引き下げるだけでなく、一定規模以上の企業における工業付加価値など工業製造領域の核心的な指標にも打撃を与えることになった、という。
だが、こうした一時的な現象ではなく、深圳の凋落は中国経済の根本的な崩壊の予兆ととらえる見方をするチャイナウォッチャーも少なくない。つまり、深圳経済特区の歴史的な役目が終わろうとしている、ということだ。
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