米国との貿易協議を巡り、欧州連合(EU)が米国に対するより広範な対抗措置を検討しているとEUの外交筋が明らかにした。写真はシェフチョビッチ委員。14日撮影(2025年 ロイター/Yves Herman)
[ブリュッセル 21日 ロイター] – 米国との貿易協議を巡り、欧州連合(EU)が米国に対するより広範な対抗措置を検討しているとEUの外交筋が明らかにした。米国がEUに対して譲歩の構えを示さず30%への関税引き上げ期限が迫っているためで、ドイツを含む多くのEU加盟国が、合意に至らない場合には米国のサービス業なども対象にできる、「経済的威圧」への対抗措置の発動を検討しているという。
欧州委員会による米側との協議では、EUからの輸出品の大半に10%の関税が課されるものの、双方が一定の譲歩をすることで合意できるとの楽観論も見られた。ただ、トランプ米大統領が8月1日から30%に関税を引き上げる構えを示したほか、先週のシェフチョビッチ委員(通商担当)と米側の交渉担当との協議で、こうした期待が後退した。シェフチョビッチ氏は18日に加盟各国に対して状況を説明した。
外交筋によると、米側は協議で、10%を大きく上回る一律的な関税率などを提案。鉄鋼とアルミニウムの50%、自動車と自動車部品への25%の追加関税の緩和もしくは撤廃も難しいとみられるほか、米側は、貿易合意成立後に追加関税を課さないという「現状維持」の措置も拒否した。医薬品、半導体、木材に関する貿易調査の根拠となる国家安全保障に絡む判断について、トランプ氏の手を縛ることはできないと主張したという。
ある外交官は「(米側の)交渉相手はそれぞれ異なる考えを持っているようだった」と指摘した。一連の動きを踏まえ、EU内には交渉による解決を優先しながらも、より積極的な対応を取る機運が高まりつつあるという。
EUは、210億ユーロ(245億ドル)相当の米国製品に対する報復措置を発動したものの、8月6日まで一時停止している。720億ユーロ相当の更なる対抗措置についての判断も控えている。さらにEU加盟国に経済的圧力をかける第三国に報復措置を講じることができる規則の適用に関する議論も活発化している。これを使えば、EUはサービス分野のほか、米国企業の公共調達や金融サービス市場へのアクセスなどを制限することが可能になる。
フランスは一貫して発動を求めているほか、ドイツも検討すべきだと主張。一方「核兵器のような選択肢」だとして難色を示す国もある。実際に発動するには、EUの人口の65%を占める15カ国以上の賛成を得る必要がある。
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