マレーシア政府は、トランプ米大統領による関税を20%程度に引き下げることを目指す一方、電気自動車(EV)や外資規制を巡る要求には応じる姿勢を示していないと、事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
交渉が継続中であることを理由に匿名を希望する複数の関係者によると、アンワル首相の交渉チームは、8月1日から適用される関税について25%からの引き下げを目指している。インドネシアやベトナムなど近隣諸国と同程度の税率が目標という。
マレーシアはこれまで、先端半導体の密輸を巡る米国の懸念への対応で一定の進展を見せていると関係者は語った。一方で、米国製EVに対する税制優遇措置の延長や電力・金融といった政治的に慎重な対応が求められる業種での外資規制の緩和、大票田の漁業従事者への補助金削減といった要求には応じていないという。
2022年に中国への先端半導体の輸出を事実上禁止した米国は、同半導体がマレーシアを経由して中国に流れているとの批判を強めてきた。
マレーシア側は「迂回(うかい)輸出」の証拠は確認されていないとしているが、規制強化に乗り出している。個人や企業は現在、米国製の先端半導体の輸出に許可が必要で、不適切な使用が確認されたりすると政府に報告する義務が課されている。
アンワル首相は21日、マレー人や先住民族に対する優遇措置を含む国内政策を巡る通商交渉では「レッドライン」を設定していると述べた。
トランプ米大統領は関税の多くを見直したが、中国に対しては強硬姿勢を示し市場の混乱を招いている。貿易戦争の背景と今後の展開を探った
Source: Bloomberg
マレーシアの投資貿易産業省はコメントを控えた。ホワイトハウスや米商務省、通商代表部(USTR)もコメントの要請に応じなかった。レビット大統領報道官は21日の記者会見で「通商チームおよび大統領自身が世界中の国々との交渉に引き続き深く関与している」と述べた。
米国は先週、エヌビディアに対し、人工知能(AI)アクセラレータ「H20」の中国向けの販売再開を許可している。
EVと漁業
関係者によると、マレーシア政府は米国製EVへの税制優遇措置の延長に難色を示している。他国製のEVにも同様の措置を講じる必要が生じるためだ。マレーシアは輸入EVに対する税制優遇措置を今年12月で終了する予定。
米国が自国のEVへの税額控除を間もなく終了させる中でマレーシアに優遇措置を求める理由は不明瞭だ。米国製品の市場シェアは小さく、25年前半には、比亜迪(BYD)など中国企業がEVの新規登録台数の約半数を占めた。
さらに複数の関係者によると、マレーシア側は漁業への補助金削減や乱獲防止に関する米国の要求を内政干渉と捉えているという。漁業従事者の多くはマレー人で、政府の重要な支持層となっている。
マレーシア政府は、25年の経済成長率目標(4.5-5.5%)の引き下げを検討しているが、新たな数値は実際の関税水準に左右されるとしている。
USTRのデータによると、米国のマレーシアに対する財貿易赤字は24年で248億ドル(3兆6700億円)に達している。
原題:Malaysia Seeks 20% US Levy But Resists EVs, Ownership Demands(抜粋)
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