欧州連合(EU)と米国の交渉担当者は、8月1日までの貿易合意の締結を目指し、今週も集中的な協議に臨む。トランプ米大統領はEUの大半の輸出品に対し、同日から30%の関税を課すとしており、交渉は正念場を迎えている。
事情に詳しい関係者によると、EU側は、行き詰まりを打開するために必要であれば、米国側に有利な合意でも受け入れる用意があるという。ただ、先週のワシントンでの協議後も、決定的な進展はみられない。
こうした状況を踏まえ、EUは、合意に至らなかった場合に備えた報復措置の準備も強化している。加盟国の代表は今週にも協議を行い、米国と合意できない場合に備えた対応策の策定に入る見通しだ。交渉期限が迫る中、トランプ氏の交渉態度は一層強硬になっているとみられる。
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EUは、米国との関税を巡る合意に至らなかった場合に備え、報復措置の準備も強化している
Source: Bloomberg
停滞
匿名を条件に語った関係者によると、米国は現在、EU製品に対するほぼ全面的な関税を10%超とする方向で交渉を進めており、例外措置の対象は縮小されつつある。免除が検討されているのは、航空機、一部の医療機器とジェネリック医薬品、複数種の蒸留酒、そして米国が必要とする特定の製造機器に限られている。
EUの執行機関、欧州委員会の報道官はこの件について「進行中の交渉にはコメントしない」としている。関係者によると、どの程度の負担を許容するかを巡っては、加盟国で差があり、十分な免除措置が確保されるなら、より高い関税率でも受け入れる考えの国もある。

関係者によると、両者は一部の分野での上限設定や、鉄鋼・アルミニウムの関税割当制度、供給過剰な金属の供給元をサプライチェーン(供給網)から切り離す手段などについて協議している。ただ、仮に合意に至っても、最終的にはトランプ氏の承認が必要であり、同氏の出方は依然として不透明だという。
米国のベッセント財務長官は21日、米CNBCのインタビューで、「欧州との間で、事態が醜いものになる必要はない。交渉というのはそういうもので、やり取りがたくさんある」と述べた。また、「重要なのは交渉のタイミングではなく、取引の質だ」として、合意内容そのものの重要性を強調した。
ラトニック商務長官はCBSに、20日にEUの交渉担当らと話し合ったと明かした。
備え
合意の見通しが徐々に後退する中、関係者によると、EUは合意に至らなかった場合の対応準備に着手する見通しだ。報復措置を発動する場合は、影響の大きさから、EU各国首脳による政治的な承認が必要となる可能性が高い。
本格的な対抗措置を取れば、米国側の報復を招き、米欧間の貿易摩擦が一層深まる可能性がある。トランプ氏は、米国の利益に対する報復は「さらに強硬な対応」を招くだけと警告している。
EUはすでに、トランプ氏による鉄鋼・アルミニウム関税への対抗措置として米国製品210億ユーロ相当に対する報復関税を用意している。また、上乗せ関税、自動車関税に対する720億ユーロ相当の措置も準備済みだ。

関税にとどまらず、EUは輸出規制や公共調達契約の制限といった措置も検討している。
ブルームバーグは16日、米国が関税措置を実行に移した場合に備え、EUの最も強力な通商手段である「反威圧措置(ACI)」の発動を求める声が、加盟国の間で高まっていると報じた。本来は抑止力として設計された制度で、第三国が通商措置を通じてEUや加盟国の主権的政策選択に圧力をかけようとする場合に対応するものだ。
ACIは、EU当局に広範な報復措置の権限を与え、米国のテック大手への新たな課税、EU域内への投資の制限、特定の市場へのアクセス制限、欧州での公共調達への入札からの締め出しといった措置を含む可能性がある。
原題:EU Is Racing to Secure US Trade Deal and Preparing for the Worst(抜粋)
(ベッセント米財務長官の発言を加え更新します)

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