日産R390 GT1のVRH35が技術のベース

2011年に登場したマクラーレンMP4-12Cは、今回揃えた10台の中で俯瞰すると、少しモダンすぎるかもしれない。TVRサーブラウ 4.5の動力性能も見事といえるが、パワーウエイトレシオは424ps/tで、1台だけ群を抜いている。

一方、MP4-12CがミドシップするV8エンジンは、スペック上ではロータス・エスプリ V8のものと面白いほど似ている。どちらも横置きで、オールアルミ製。バンク角は90度で、DOHCのヘッドを載せ、フラットプレーンクランクを採用する。

マクラーレンMP4-12C(2011〜2014年/欧州仕様)マクラーレンMP4-12C(2011〜2014年/欧州仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)/ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

だがこのエンジンは、1998年のル・マン・マシン、日産R390 GT1へ積まれていたVRH35ユニットが技術のベースにある。マクラーレンはその権利を購入し、リカルド・エンジニアリング社との協働で、量産用ユニットとしての改良を施した。

マクラーレンのコードネームは、M838T。かくして、小型・軽量な3.8L V8エンジンが完成している。

1336kgへ抑えた車重が功を奏する加速力

2基組まれるターボチャージャーは、三菱社製。低摩擦化のため、ニカシル・コーティングが採用され、搭載位置を下げるためドライサンプ化されてもいる。

当初の最高出力は、600ps/7000rpm。ソフトウエアのアップデートで、後期型では625psへ上昇した。最大トルクは、3000-7000rpmというワイドレンジで61.1kg-mを発生。2000rpm前後でも、その8割以上を発揮する。

マクラーレンMP4-12C(2011〜2014年/欧州仕様)マクラーレンMP4-12C(2011〜2014年/欧州仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)/ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

1.0L当たりの馬力は160psで、エスプリ V8のユニットと比べて30%以上も高い。7速デュアルクラッチATが、このパワーを受け止めた。0-100km/h加速は3.1秒と、加速力も驚異的。カーボンファイバーを多用し、1336kgへ抑えた車重が功を奏している。

今回ご登場願ったMP4-12Cは、正式な発売前に準備された試作車。現在はマクラーレン・スペシャル・オペレーションズが管理し、オプションの試験台となっている。

回転数を延々と変化させていたくなる

隠れたボタンを押すと、ディヘドラルドアが静かに上昇。レザーとカーボンファイバー、アルカンターラで仕立てられたコクピットは、非常に居心地が良い。スタートボタンとDボタンを順番に押せば、発進準備完了。ドライなV8サウンドが、後方で響き出す。

アクティブ・モードを選ぶと、ステアリングホイール裏のパドルでギアを選べる。日常的な速度域でも、印象的なほど運転しやすい。運転姿勢は完璧で、操る自信を下支えしてくれている。

マクラーレンMP4-12C(2011〜2014年/欧州仕様)マクラーレンMP4-12C(2011〜2014年/欧州仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)/ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

ストレートでは、豪快な加速が延々と続く。サウンドは、心を震わせるほどではないかもしれないが、硬質で良い響き。回転数を延々と変化させていたくなる。乗り心地も、目からウロコなほどしなやか。高速域での姿勢制御も素晴らしい。

筆者は、MP4-12Cへすっかり心を奪われてしまった。英国製V8エンジン・モデルの、モダンな傑作で間違いない。

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