明らかな進化を遂げていた後期の4.2L V8
TVRサーブラウとほぼ同じタイミングの、1996年に発売されたのが、コードネームX100が振られたジャガーXK8。今回の車両は2002年にフェイスリフト受け、改良されたV8スーパーチャージャー・エンジンが載ったXKRだ。
1989年に経営権を握ったフォードによる開発資金のおかげで、ジャガーはモデルラインナップを拡充。XKRは、ジェフ・ローソン氏のスタイリングが秀逸な、傑作フラッグシップ・クーペへ仕上がっていた。
ジャガー XKR 4.2-S(2002〜2006年/英国仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)/ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
フェイスリフト前の4.0Lエンジンは、精彩を欠いていたかもしれない。だが後期型では、新しいクランクシャフトとヘッド、排気系を得た4.2Lユニットへ刷新。前期型と共通するのは90度のバンク角と、イートン社製スーパーチャージャー程度といえた。
最高出力は371psから400psへ、最大トルクは53.4kg-mから55.0kg-mへ上昇し、トランスミッションはジャガーSタイプ R用の6速ATへ置換。0-100km/h加速5.2秒、最高速度249km/hのカタログ値は変わらなかったが、実際は明らかな進化を遂げていた。
Rへ予想する以上にラグジュアリーな車内
型破りなサーブラウの隣に並ぶと、XKRの上品なスタイリングが際立つ。洗練された雰囲気を放ちつつ、2+2と実用性も劣らない。手を伸ばしやすい価格帯で流通している、普段使いもできるクラシック・グランドツアラーだ。
今回のサテン・シルバーの車両は、ジャガーで広報を担当していた経歴を持つ、トニー・オキーフ氏がオーナー。購入して10年が過ぎ、走行距離は14万5000kmを超えたところ。当時、品質改善に努めていた技術者のおかげで、調子は良好だという。
ジャガー XKR 4.2-S(2002〜2006年/英国仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)/ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
XK8とXKRを差別化するのは、4本出しのマフラーと控えめなテールスポイラー、ボンネットのエアアウトレット程度。テールライトの下には、グリーンとレッドの小さなエンブレムが貼られている。
インテリアは、「R」を掲げるクーペへ予想する以上にラグジュアリー。肉厚なシートは、ベージュのレザー張り。バーエルム・ウッドパネルが、ダッシュボードとセンターコンソールを彩る。
右足へ更に力を込めると一変する様相
発進させてみても、日常的な速度域の限り、通常のXK8と大きな違いは感じられない。ところが、Jゲートから伸びるシフトレバーを傾けてマニュアル・モードにし、右足へ更に力を込めると、XKRの様相は一変する。
スーパーチャージャーが悲鳴を上げながら吸気を圧縮し、V8エンジンは周囲を制する勢いで甲高い咆哮を放つ。低域からパワーがみなぎり、吸い込まれるような加速が始まる。
ジャガー XKR 4.2-S(2002〜2006年/英国仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)/ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
35000rpmを超えると、加速力は更に上昇。レッドラインへタコメーターの針が迫るまで、勢いが衰えることはない。気が付けば、スピードメーターは160km/hを超えたところを指している。
シャシーの能力は高く、確かなグリップ力と相まって、フルパワーを展開しても安定性は揺るがない。改めて、その優れた操縦性も楽しませていただいた。
協力:ジェームズ・アガー・オートスポーツ社、ジャガー・ドライバーズ・クラブ
V8のTVRとジャガー 2台のスペック
画像 ベントレーにロータス、マクラーレンまで UK編集部が選んだ英製V8エンジン・モデルたち 全99枚
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