ロシアの一部大手銀行の幹部は、今後1年にわたって不良債権比率の悪化が続くようであれば、政府資金による救済を要請することを内々に検討している。

  現・元当局者やブルームバーグ・ニュースが確認した文書によると、ロシア銀行(中央銀行)がシステム上重要な金融機関に指定する少なくとも3行が、今後12カ月以内に公的資金の注入が必要になる可能性を協議している。

  これらの銀行はそれが現実になる場合に、ロシア中銀に救済の可能性をどのように提起するかを内部で既に議論した。こうしたシナリオが話し合われているのは、銀行が抱える貸出債権の質が公式統計よりもはるかに悪いからであることが、関係者の話や関連文書から浮き彫りになる。

  非公表の情報だとして匿名を要請した関係者によれば、救済要請の判断は今後1年に不良債権の増加が続くか次第だ。それでも、銀行業界全体で公的支援を巡る議論は緊急性を増しているという。

  ロシアの銀行システムは表向き比較的健全で、中銀の政策金利が20%と過去最高に近い水準で企業や家計向け融資の不良債権が増加してはいても、収益は堅調だ。公式統計上の不良債権水準は、当局が介入を強いられた過去の金融危機で記録した水準を優に下回る。

  だが、中銀自身が金融機関に対し、不良債権の全容把握よりも融資条件の見直しに注力するよう助言している。

  ロシア中銀はコメントを求める電子メールに応答しなかった。

  同中銀のナビウリナ総裁は2日にサンクトペテルブルクで開かれた金融フォーラムで、システミックな危機が発生するリスクは低いとの見方を示し、ロシアの銀行システムは「十分な資本を備えており」、8兆ルーブル(約15兆2000億円)に上る資本準備金があると主張。

  「銀行監督当局者として、これらの懸念は全く根拠がないと責任を持って言える」と強調した。

Elvira Nabiullina, left, and Andrey Kostin during the Bank of Russia's Financial Congress, on July 2.

ロシア中銀のナビウリナ総裁(左)とVTBグループのアンドレイ・コスティンCEO(2日、サンクトペテルブルク)

Source: LightRocket

  ロシア中銀は、マクロプルデンシャル政策の枠組みで蓄えている資本バッファーを解放して市中銀行の損失吸収を可能にしたり、銀行の自己資本比率が一時的に低下したりすることを認めると説明している。この措置は銀行システムに対する圧力をある程度緩和するかもしれないが、損失の規模がバッファーで吸収できる範囲内にとどまることが条件になる。

  公式統計によれば、企業向け融資に占める不良債権の比率は4月1日時点で4%。一方、個人向け無担保ローンのうち、返済が90日以上延滞している割合は10.5%だった。

  それでも、大手銀行の最高幹部は来年の見通しについて警鐘を鳴らし始めた。

Herman Gref

ズベルバンクのヘルマン・グレフCEO

Photographer: Olga Maltseva/AFP/Getty Images

  ロシア最大手の国営銀行、ズベルバンクのヘルマン・グレフ最高経営責任者(CEO)は先月の年次株主総会で、来年の見通しを「容易ではないだろうことが既に明らかだ」と表現。債務再編を必要とする企業の切迫感は増し、貸出債権の質は悪化が続いていると指摘し、「これまでと同様に、難局を乗り越えるための共通の計画が打ち出せることを望んでいる」と語った。

  ロシア2位の銀行、VTBでは、リテール部門の個人向け不良債権が総額3770億ルーブルと全体の5%に達したことを、同行のドミトリー・ピヤノフ第1副会長が経済紙ベトモスチに明らかにした。

  個人向け不良債権比率は年初から1.2ポイント上昇し、2026年までに6-7%に達する可能性があるという。ただし、2014~16年に付けた8-10%のピークをなお下回ると同氏は強調した。

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  関係者によると、高金利を懸念する顧客に対して銀行は当面の融資条件を変更しているが、不良債権比率はそれでも上昇している。この関係者はシステム上重要な金融機関と見なされるロシアの銀行2行の最高幹部で、内部の問題を話しているとして匿名を要請した。

  今のところ危機の兆しはほぼ見られず、いずれにせよ公的資金の注入で解決は可能かもしれないが、多くのデータが部外秘とされているため全体像が見えづらいと、関係者の1人は述べた。

原題:Russian Banks Have Discussed Seeking Bailouts Within Next Year(抜粋)

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