6月頭、フランス南西部にあるアルカションという町に行ってきました。大西洋沿いに伸びる町には美しいビーチが広がり、牡蠣を中心とするシーフードがとても美味しいところです。
アルカションの浜辺
アルカション湾に浮かぶアート作品「クジラの尾」
アルカションは19世紀までは小さな漁村でしたが、ナポレオン3世の政令により、1857年に正式に自治体として独立。同年、19世紀のフランスを代表する実業家・金融家のペレール兄弟の尽力により鉄道(ボルドー~アルカション線)が開通すると、同じくペレール兄弟が高台に開発した「冬の町」に上流階級や富裕層が療養や避暑に訪れるようになり、リゾート地として発展します。
冬の町は個性的で美しいアルカション様式と言われる屋敷が立ち並ぶエリアです。私が泊まったホテル「Residence Villa Regina」もこの冬の町にあり、19世紀の歴史的建築で、モネやセザンヌが滞在した記録も残っています。現在は庶民的なレジデンス型ホテルで、各部屋に簡易キッチンがあって便利でした。
冬の町にある、アルカション様式の美しい建物
冬の町にある鉄塔を上ると、アルカションの町を一望できます。この鉄塔建設には、エッフェル塔の設計に関わったギュスターヴ・エッフェルも設計の補佐として入っています
Residence Villa Regina
アルカションにはこの冬の町以外にも、春夏秋の名前が付いた4つのエリアがあり、現在最もにぎわっているのは海岸沿いにある「夏の町」です。夏の町からは各種観光船が運航されており、まずはアルカションの主な観光スポットを海から見ようと、2時間半の解説付きクルーズに参加しました。あとで改めて行くピラ砂丘(Dune du Pilat)やCap Ferretという半島などを眺めました。
参加したのは2時間半のクルーズツアー
海から見るアルカションの町
アルカション湾に浮かぶ「鳥の島」にある養殖牡蠣の元監視小屋
アルカションではサイクリングルートが整備されており、レンタサイクルでの移動も楽しかったです。借りた自転車に乗り、ピラ砂丘に向かいました。ピラ砂丘は欧州最大で、風と潮の影響で移動・変形しているため、「生きている砂丘」とも呼ばれます。
途中で石油発掘の途中で噴出したアバティーユ水源や、妊娠中の聖母マリアのめずらしい像があるノートル=ダム=デ=パス教会などを見つつ、1時間ほどで目的地のピラ砂丘に到着。高さ約100m、長さ約2.7km、幅約500mの砂丘は、圧倒的な存在感! 砂丘を上るのはちょっと大変そうだったので、私は仮設階段で上りました。それでもなかなかの運動量でしたが、上から見る景色は360度どこを見ても絶景です。
私が借りたレンタサイクル会社は対応が素晴らしく、ホテルまで持ってきてくれて、乗り捨て場所は自由なのでお勧め
アバティーユ水源は1923年に発見されました。ミネラル含有量が非常に少ないために体への負担が少なく、治療効果が高い水とされています
航海者たちの守護を願って高台に建てられたノートル=ダム=デ=パス教会
ピラ砂丘へ上る仮設階段
階段を使わずに上る元気な人びと
ピラ砂丘
ピラ砂丘の向かいにある広大な砂州、Banc d’Arguinは風や潮の流れによって形が変わります。船でのみアクセス可能
2022年夏、ピラ砂丘周辺で深刻な森林火災が発生しました。防風・防砂機能を果たしていた森林が焼けたことで、砂の移動が活発化しています
Cap Ferretは、アルカションの対岸に位置する人気の半島です。自転車ごと船で島に移動し、灯台、浜辺、牡蠣小屋などを訪ねました。半島に点在する牡蠣小屋のエリアは、カラフルな木造小屋がフォトジェニック。小屋の前では牡蠣を美味しそうに食べる人たちがいましたが、アレルギーが出るために牡蠣を食べられない私は本当に残念でした!
Cap Ferretには船で、借りた自転車を持ち込んで行きました。自転車は現地でレンタルすることも可能です。着いたときは干潮時のため、船が砂に乗り上げていました
灯台
ビーチには第二次世界大戦中にナチス・ドイツが建設した防空壕が残されていました
フランスとアルジェリアの歴史的文化交流を象徴する、アルジェリア風の礼拝堂
牡蠣小屋エリアの一つ
アルカション湾の東端にある、ル・テッシュ鳥類保護区(Reserve Ornithologique du Teich)にも行きました。欧州有数のバードウォッチングスポットの1つです。アルカションの中心部からはクルマで30分ほどのところです。
渡り鳥の休息・越冬・繁殖の場として、1年を通して260種類以上の野鳥を観察できます。敷地には1周約6kmの観察ルートがあり、とてもよく整備されています。途中に観察小屋がいくつもあり、双眼鏡があった方がよいですが、肉眼でも卵を温める野鳥たち、水浴びを楽しむ野鳥たちなどを間近で見られて驚きました。
ル・テッシュ鳥類保護区
アルカションではビーチ関連のほか、サイクリング、名所観光、そして海の幸と、コンパクトな町とその周辺で中身の濃い1週間を過ごしました。今回はクルマで行きましたがパリからアルカションまでは高速鉄道TGVの直行便も出ており、3時間ほどで到着します。パリの喧騒に疲れたときのリフレッシュ先の1つとなるかな?と思いながら帰路につきました。
アルカション駅
町のお魚屋さんや市場で買った食材はどれも新鮮
レストラン「Bistro’50」は、アルカション市内からクルマで15分ほどかかりますが、すてきなテラス席で季節の新鮮な素材を使った料理を手軽な価格で味わえて、大満足でした
アルカションで買ったお土産。アバティーユのペットボトル水も買いましたが、とてもまろやかな味
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