【連載】地域をめぐる 第5回
不動産の価値向上から大阪の経済活性を目指す大阪シティ信用金庫(大阪市)が、大阪府内の商店街活性化に奮闘する。地域密着の金融機関として、顧客である中小・零細企業の経営環境改善のため、融資にとどまらない支援の方法を模索する。
にぎわい創出、空き店舗減少へ
各地の特色発信 5万人呼ぶ催事も
大阪メトロ谷町線・堺筋線南森町駅を出てすぐに位置する天神橋筋二丁目商店街では、全国の都道府県の特色を生かしたイベントが毎週のように開催されている。「鹿児島県本格焼酎まつり」や「秋田県横手市まるっと観光物産展」、長野県の農産品フェアなど内容はさまざまだ。毎年8月には「天神天満阿波おどり」を開催。2024年の開催時には、5万人が天神橋筋二丁目商店街を訪れた。
天神天満阿波踊りの様子
イベントは、観光誘客や特産品の販路拡大、移住促進を目的に、大阪府に拠点を置く各都道府県の事務所が企画・準備する。商店街は都道府県に対して、無料もしくは3m四方の区画で1日3000円といった低額で場所を貸したり、1万円程度で店舗をレンタルしたりする。
こうしたイベントが行われているのは、天神橋筋二丁目商店街だけではない。24年度は大阪府内の大小25の商店街で、合計221件ものイベントが開催された。商店街で都道府県事務所がイベントを行うきっかけをつくったのは、大阪シティ信用金庫だ。
在阪事務所と連携15年で2400件実施
大阪シティ信用金庫では、10年から「商店街PLUS(プラス)事業」として、街の中心である商店街を活性化する事業を行ってきた。それ以前も地域のイベントへの協賛は行っていたが、改めて「地域を基盤とする信用金庫として、地域の活性化を事業として推進する」という方針を打ち出したことから商店街PLUS事業が始まった。
同事業では、大阪シティ信用金庫が、大阪府の商店街が加盟する団体である大阪府商店街振興組合連合会(大阪市)や、大阪府に拠点を置く都道府県事務所と連携。各都道府県の名産品や観光、文化の発信の場として商店街を活用することで、にぎわいを創出する。都道府県事務所と商店街のマッチングや、イベントのコーディネートが大阪シティ信用金庫の役割だ。
事業立ち上げの担当者となった企業支援部の森本孝専任次長は、各都道府県の大阪事務所と交渉を行った。森本専任次長は「天神橋筋二丁目商店街のように人通りが多い商店街でも、物販店舗が減少しているという課題があり、その解決策の一つとしてイベントを評価してもらっている。一方で、人通りが少なくシャッターが目立つ商店街でこそイベントを行いたい。学校などの地域とのネットワークを持つ商店街の特性を活用し、学生が主役となり地方の特産品を販売する『こども物産展』なども実施している」という。
大阪シティ信用金庫 大阪市 企業支援部
森本孝専任次長 阪井誠一郎第一部長
同事業では25年5月までに、大阪府内の80超の商店街で累計2474件のイベントを行ってきた。企業支援部の阪井誠一郎第一部長は「イベントを行った商店街に森本が行くと、何度も感謝の言葉をもらえる。この信頼関係は、事業を通して得られた私たちの資産だと思う」と語る。
店舗見学会を併催 入居の実績上がる
次のステップとして大阪シティ信用金庫が見据えるのが、イベントで創出したにぎわいを継続させるための、空き店舗へのテナント入居促進だ。大阪市東住吉区の北田辺商店街では、にぎわい創出のイベントに合わせてテナント入居を促進する取り組みを行った。少しずつではあるが、効果が出始めている。
イベント開催に合わせて空き店舗のシャッターを開け、内部を自由に見学できるようにした。24年6月30日に行ったイベント「キタタナベイベー」での店舗見学をきっかけに、大阪芸術大学(大阪府河南町)の卒業生がギャラリーとして使うため入居することが決まった。
キタタナベイベー開催の様子。食品やハンドメイド雑貨の販売、ステージイベントなどが行われた
「シャッター商店街の課題は、借り手がいないこと以前に、そもそもテナント募集をしていない空き店舗が多いこと。魅力的なイベントや活力のあるテナントの入居により地域が活性化され、家賃相場が上がり、物件を貸すメリットが高まるところまで、継続的に支援をしていかなければならないと考えている」(阪井第一部長)
(中村)
(2025年7月14日20面に掲載)
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