昨季最後の大会であったクラブワールドカップ(W杯)が閉幕し、スペインリーグの25-26年シーズン開幕まで1カ月を切った。そこで今回はビッグ3、そして日本人選手の所属チームを中心に、ここまでの補強状況を探っていきたい。

■バルサはサラリーキャップ問題

昨季のスペインリーグ王者バルセロナは、スペイン人GKジョアン・ガルシア(エスパニョール)を2500万ユーロ(約42億5000万円)、右サイドでプレーするU-21スウェーデン代表FWルーニー・バルドグジ(コペンハーゲン)を約200万ユーロ(約3億4000万円)で獲得したのみで、ここまであまり大きな動きを見せていない。

クラブはラフィーニャをトップ下に配置するために左ウイング獲得を必須と考えているが、今夏も再びサラリーキャップ(選手の契約年数に合わせて分割された移籍金や選手年俸などの限度額)による登録問題を抱えている。すでにビルバオのスペイン代表FWニコ・ウィリアムズ獲得に失敗し、現在はリバプールのコロンビア代表FWルイス・ディアスやマンチェスター・ユナイテッドのイングランド代表FWラッシュフォードが候補に挙がっている。

その一方、アンス・ファティとパブロ・トーレがチームを離れ、アラウホ、クリステンセン、イニャキ・ペーニャなどが放出候補となっている。また、ジョアン・ガルシアの加入とシュチェスニーの契約延長により、テア・シュテーゲンが微妙な立場に追い込まれている。

■Rマドリードは変革期を迎える

メジャータイトル無冠で終えたRマドリードは今季、新監督にシャビ・アロンソを迎え、重鎮のモドリッチとルーカス・バスケスがチームを去るなど、変革の時期を迎えている。

特に昨季大いに苦しんだDF陣の強化に取り組み、スペイン代表DFハイセン(ボーンマス)、イングランド代表DFアレクサンダー=アーノルド(リバプール)、U-21スペイン代表DFアルバロ・カレーラスの獲得に成功している。さらに17歳の若きアルゼンチン代表MFマスタントゥオーノの加入も決定。合計で1億6000万ユーロ(約270億円)以上を費やし、スペインリーグで最も投資額の多いチームとなっている。

さらに、シャビ・アロンソ監督はセンターバックとMFを求めており、前者の候補にはリバプールのフランス代表DFイブラヒマ・コナテが挙がっている。その一方、クラブW杯で出番の少なかったロドリゴは頻繁に移籍の可能性が報じられている。

■Aマドリードは入れ替え激しく

クラブW杯を1次リーグ敗退という不本意な結果で終えたAマドリードは、上位陣の中で最もメンバーの入れ替えが激しいチームとなりそうだ。すでにアスピリクエタ、ヴィツェル、ヘイニウド、リケルメ、コレアが退団し、デ・パウル、サムエウ・リーノなどにもチームを離れる可能性がある。

その一方、イタリア人DFルッジェーリ(アタランタ)、スペイン代表MFバエナ(ビリャレアル)と契約を結び、昨季のウィークポイントであった左サイドの強化に成功。コレアの代役として、トップ下や右サイドなど攻撃のさまざまなポジションでプレーできるアルゼンチン代表FWティアゴ・アルマダ(ボタフォゴ)獲得で合意している。

さらにシメオネ監督はセンターバックとボランチを希望しており、その候補としてトットナムのアルゼンチン代表DFクリスティアン・ロメロ、ベティスのアメリカ代表MFジョニー・カルドーゾなどが報じられている。

5季ぶりのリーグ優勝を目指す今季、バルセロナとRマドリードを脅かす存在としてサポーターの期待は非常に大きく、1万人以上がシーズンチケットのウェイティングリストに登録している。

■去就不透明も日本ツアーで合流

久保建英所属のレアル・ソシエダードは昨季、リーグ戦を11位で終え、欧州カップ戦の出場権も6季ぶりに逃す結果となり、補強すべきポジションがいくつもある。しかし、ここまではうまくいっておらず、スペインリーグで唯一、選手を一人も獲得していないチームとなっている。

中盤の大黒柱であったスビメンディを6600万ユーロ(約112億2000万円)でアーセナルに売却し、その代役候補としてアル・カーディシーヤ(サウジアラビア)のアルゼンチン代表MFエセキエル・フェルナンデスの名前が出ている。しかし、獲得にはサディク、オスカルソンと並ぶクラブ史上の移籍金最高額2000万ユーロ(約34億円)が必要になる見込みだ。また、オラサガスティに退団の可能性が出ている。

期限付き移籍を終えたアゲルドに代わるセンターバックの補強も急務となっており、候補にはブライトンのブラジル人DFイゴール・フリオ、ボーンマスのアルゼンチン代表DFマルコス・セネシが挙がっている。

近年、クラブ史上の移籍金最高額を費やすも失敗に終わっているセンターフォワードも、補強すべき重要ポジションのひとつだ。期限付き移籍から攻撃陣のサディク、カルロス・フェルナンデス、カリカブルが戻ってきたが、前者2人は放出の可能性が高い。代役候補に挙がるのは、昨季アウグスブルクで公式戦19得点5アシストを記録した元クロアチア代表FWディオン・ベーリョである。

今季の去就が不透明な久保建英は、プレシーズンでV・ファーレン長崎、横浜FCと対戦する日本ツアーからチームに合流する。

■エスパニョールは既に最多8人

スペイン2季目に挑む浅野拓磨を擁するマジョルカは昨季10位。ここまで、バレリー、シキーニョ、ロベルト・ナバーロが退団し、新たにスペイン人MFパブロ・トーレ(バルセロナ)とフィンランド代表GKルーカス・バーグストローム(チェルシー)を獲得したことで、アラサテ監督の希望が2つ叶えられている。

さらに昨季、浅野以外の補強が失敗に終わったサイドアタッカーの獲得を目指している。DF陣に関しては退団の可能性があるコペテとラトの移籍金を元に、さらなる補強を試みる予定だ。

今夏ここまでで最も派手な動きを見せているチームは、オーナー変更のあったエスパニョールだろう。ジョアン・ガルシアなど10人以上が退団した一方、スペイン人FWキケ・ガルシア(アラベス)、元セルビア代表GKドミトロヴィッチ(レガネス)など、スペインリーグ最多となる8人を獲得し、新シーズンに向けて闘志を感じさせている。

新シーズン開幕まであとわずかとなり、再びハードな戦いが始まろうとしている。今季のスペインリーグは8月15日のジローナ対ラヨ・バリャカノで開幕する。年末年始のクリスマス休暇を挟み、5月下旬の閉幕まで熱戦が繰り広げられ、その後、休む間もなくワールドカップへと突入する。

【高橋智行】(ニッカンスポーツコム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)

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