チーヴニング奨学金は、英国の大学院への留学を対象とした社会人向けの奨学金プログラム
英国政府が提供する修士課程対象の奨学金制度「チーヴニング奨学金(Chevening Scholarship)」は、英国の大学院でファッションを学ぶ奨学生を日本で募集している。英国の大学院への留学を対象とした社会人向けの奨学金プログラムで、日本を含む160以上の国と地域で募集中だ。学費、渡航費、生活費などを修了まで全て返済不要で提供する。
チーヴニング奨学金自体に専攻分野の制限はないが、2024年にファッションを含む芸術分野に特化した受賞枠「コウジ・ワタナベ ファッションスカラシップ(The Koji Watanabe Fashion Scholarship)」を日本で新たに導入した。銀座の老舗オートクチュール・メゾン「コージアトリエ(KOJI ATELIER)」の創業者、渡辺弘二氏の出資によって実現した枠となる。従来の英国外務省の資金提供される通常の枠に加え、民間の出資で枠を増設するパートナーシップによって設けられた。
同枠は毎年1人に授与する見込みだ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション(London College of Fashion)やロイヤル・カレッジ・オブ・アート(Royal College of Art)、セントラル・セント・マーチンズ(Central Saint Martins)などを含むロンドン芸術大学群(University Of The Arts London)への進学を優先するが、専攻が適当であれば学校に指定はない。
渡辺氏自身もロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業しており、イギリス王室のアン王女(Anne, Princess Royal)のスーツをデザインするなど、英国との関わりも深いことから同国で学びたい日本の若者を応援する思いで、支援に至った。
8月上旬から募集開始
チーヴニング奨学金がファッションに特化した枠を導入したのは初めて。過去には通常の枠で、後に「アーデム(ERDEM)」のデザイナーとなるアーデム・モラリオグル(Erdem Moralioglu、カナダ出身)がロイヤル・カレッジ・オブ・アートのファッションの修士課程に留学している。
筆者自身も2022年に「WWD JAPAN」を退職し、チーヴニング奨学金を通じて渡英した。さまざまな業界で活躍するアルムナイ(卒業生)のネットワークに参加できる点も、同奨学金の魅力の一つだ。理系・文系から芸術までの幅広い分野を選択でき、ファッション業界の社会人に適した数少ない全額給付型プログラムであると言える。
応募の窓口は、通常のチーヴニング奨学金と共通。募集期間は毎年8月上旬から11月上旬で、詳細な日程は公式サイトで発表される。応募条件として、応募国の国籍を保持していること、2年間(2800時間)以上の職務経験があることなどが求められる。なお修了後は帰国し、2年間は自国に貢献をする必要がある。
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