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ファイナンシャル・アドバイザー伊奈 久美子さん

前編でも触れた通り、コロナ禍を機に「人生の後半戦をどう生きるか」を改めて考えたヒロさん。人生の長期的な計画を重要視しながらも、今も充実させる。「今」と「将来」のバランスをどうするのか――今回の対談では、そんな人生観を軸に、久美子さんのこれまでの歩みやお金との向き合い方について、さらに深く掘り下げていく。

ヒロ: 久美子さんは「日本に帰るという選択肢はなかった」と仰っていましたが、それはいつ頃からですか?

久美子: 最初にカナダに来たワーホリの1年間がきっかけでした。もともと英語が大好きで、英語をもっと学びたいという思いから来たんですが、実際に新しい文化や人々に触れる中で自分の価値観がすごく広がったんです。「こんな考え方もあるんだ」「こういう生き方もあるんだ」との気付きが多くて、それが私にとてもプラスになりました。最初の1年が本当に充実して、毎日が新鮮で楽しかったですね。ビザが切れて一度日本に帰ったんですが、すぐにカナダが恋しくなり戻ることを決めました。

ヒロ: 素敵な感性と行動力ですね!そこから永住権を目指すわけですね。きっとカナダへの強い愛着があったからこそ、途中で諦めずに頑張れたわけですね。

久美子: はい。帰国後は自分でいろいろと調べたり、たくさんの人に話を聞いたりして、何とかカナダに残れる方法を模索しました。もちろん、日本が嫌いとかそういう気持ちはまったくありませんでした。ただ、新しい環境に身を置くことで、自分が成長できる感覚がとても心地よかったんです。そして、もっと英語を話せるようになりたいという気持ちもずっとありました。カナダに住み続けることにより、まだまだ学べることがたくさんある、と感じました。

ヒロさんは他の方との対談記事でもお話しされていたと思うのですが、もともと最初はニューヨークを目指されていたと思いますが、最終的にカナダ・トロントに定住したんですよね。永住権はどのタイミングで取得されたんですか?

ヒロ: 最初の目標はニューヨークでしたが、アメリカの労働ビザ取得の難しさに直面しました。そこで、まずトロントでワーホリを使って北米の実績を積み、永住権を得てからニューヨークを目指す道を選びました。その後、2006年にトロントの永住権を取得。しかし、2008年のリーマンショックが、自分の未来を再熟考させました。その結果、カナダ最大都市としての急成長、多様性、治安の良さなど、トロントの様々な魅力に改めて気づけ、将来的にこの場所が僕個人には最も幸せになれる場所だと感じたのです。それで、僕はニューヨークではなく、トロントで生きることを選んだんです。

久美子: 正直、私にとっては永住権を取るまでが一番の山場だったと思います。もう本当に、これだけで本が一冊書けるくらい色々なことがありました。10年間ずっと、何か乗り越えたと思ったらまた次の壁が現れて…そんな試練の繰り返しの10年でした。自分の力ではどうにもならないことに悩まされることも多くて、たくさん悔しい思いをしました。永住権取得までに、政権や移民法の変更が大きく影響して、うまくいかないことだらけでした。 でも、そうした困難を乗り越えて、10年かけてようやく永住権を勝ち取ったときは、自分の人生で初めて「一つのことをここまで積み上げて成し遂げた」という実感を持てたんです。あの10年は、私にとって本当に大きな経験でした。

パンデミックをきっかけに考えた
「長く続け、人の心に残る仕事とは」

ヒロ: 久美子さんが「長くやっていけて、人の記憶に残る仕事をしたい」そして、お金の管理の大切さにもそこで気づかれたと仰りました。具体的にどんな気づきがあったのか、教えていただけますか?

久美子: はい。永住権を取る前に友人から「PRを取ったらRRSPも考えた方がいいよ」と言われたんですが、当時は何のことかよくわかりませんでした。少し調べてもピンと来なくて、とりあえず永住権を取ってから考えようと思っていたんです。
実際にファイナンスアドバイザーの友人から話を聞いてみて、自分がお金の管理について全く知らなかったことに気づかされました。父は会計士、母は保険会社に勤めていましたが、私は特にファイナンスに触れる機会がなく、親から教わったのも「貯金は大事」というくらいでした。

でも実際は、物価上昇に伴い、ただ貯金をしているだけでは将来が危ない、という現実を目の当たりにしました。お金の稼ぎ方は知っていても、増やし方や資産運用の仕方は、学校で教わることないですよね。そこが自分にとって大きな気づきでしたし、そこから税金やローン、投資のことも学び始めました。

ヒロ: 本当にそうですね。日本はお金の教育が少なくて、大人になってから学ぶケースが多いですもんね。

僕らが知り合ったのは、久美子さんが永住権を取る少し前くらいだったと思います。バンクーバー、オーストラリアと移りながらも、飲食の仕事をしつつ自分の道を模索して努力する姿が印象的でした。

苦労を重ね続けた上でやっと自力で永住権を取り、さらにファイナンスという新たな分野に挑戦されていること本当に素晴らしいですね。自ら道を切り拓き、常に前進し続ける姿勢は、多くの人に勇気も与えることにもなり、とても素敵です。

(聞き手・文章構成TORJA編集部)

伊奈 久美子さん

東京出身。2010年に日本を離れ、海外生活を始め、COVID-19をきっかけに、20年以上勤務した飲食業界の仕事からファイナンス業界へ転職。現在、British Columbia州とOntario州を中心に、ファイナンシャル・アドバイザーとして政府公認の資格を保持して活躍。日本語で分かりやすく説明をし、顧客一人一人の状況に合わせた資産運用を提供し、将来の夢や目標を叶えていけるサポートをしている。

LinkedIn、Instagram etc…Hiroさん
 名古屋出身。日本国内のサロン数店舗を経て渡加。NYの有名サロンやVidal Sassoonの就職チャンスを断り、世界中に展開するサロンTONI&GUY(トロント店)へ就職。ワーホリ時代から著名人の担当や撮影等も経験し、一躍トップスタイリストへ。その後、日本帰国や中米滞在を経て、再びトロントのTONI&GUYへ復帰し、北米TOP10も受賞。2011年にsalon bespokeをオープン。今もサロン勤務を中心に、著名人のヘア担当やセミナー講師としても活躍中。世界的ファッション誌“ELLE(カナダ版)”にも取材された。salon bespoke
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