米株式相場は続伸。トレーダーは企業の業績見通しを吟味しながら、比較的落ち着いた1日を過ごした。S&P500種株価指数は過去最高値で引けた。

株式終値前営業日比変化率S&P500種株価指数6280.4617.200.27%ダウ工業株30種平均44650.64192.340.43%ナスダック総合指数20630.6619.320.09%

  数日後には大手銀行をはじめ企業決算の発表が本格化する。この日はデルタ航空が明るい需要見通しを示し、航空株が上昇した。テスラをはじめ大型ハイテク株に買いが入った。エヌビディアは時価総額が再び4兆ドルを上回った。ジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は予定している訪中の前に、トランプ米大統領と会談する。

Traders On The Floor Of The NYSE As US Stocks Fall With Trade War Worries Overshadowing Slower Inflation

S&P500種は最高値

Source: Bloomberg

  JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは、市場にはトランプ大統領が計画する関税への警戒感が欠けているとの考えを示した。

  ダイモン氏はアイルランドのダブリンで開かれた同国のハリス副首相とのイベントで、欧州連合(EU)と米国との間で合意に達することが重要だとし、関税の枠組みを「まとめる必要がある」と述べた。

  ニュースレター「ザ・セブンズ・リポート」のトム・エッセイ氏は「8月1日までに関税の状況が明確になるチャンスはゼロだ。それが7月の利下げを不可能にしている」と指摘。「関税政策が次々と先送りされる現実は、9月利下げのチャンスを低下させ、高金利の長期化につながり得ると同時に、景気減速の可能性を高める」と述べた。

  セントルイス連銀のムサレム総裁は、インフレ率には上昇リスクがあると述べた。ただ関税が物価に与える影響が長期化するかどうかは、現時点ではまだ分からないという。サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は、年内2回の利下げが依然として可能性の高いシナリオだと指摘。また関税による物価への影響は当初の予想より穏やかになる可能性があるとの認識を示した。

  連邦公開市場委員会(FOMC)は今年、政策金利を据え置いているが、年内の利下げ回数予想でメンバーの見解は割れている。次回FOMCは29-30日に開催される。先物市場の織り込み具合によれば、投資家は年内2回の利下げを見込んでいる。

  モルガン・スタンレーのウェルス・マネジメント・マーケット調査・戦略チームを率いるダニエル・スケリー氏は「今後数週間、ホワイトハウスからの発表に事欠かないと思われるが、8月1日が関税問題の終わりになるとは考えにくい」と話す。「主要株価指数が年内はレンジ取引を続けるとみられ、銘柄選別の巧拙がより重要になるような環境を予想している」と述べた。

  近く到来する決算シーズンに向けて、利益とキャッシュフローに上方向のサプライズが期待できる銘柄に注目しつつ、米国外の株式やコモディティー、エネルギーインフラ、ヘッジファンドへの分散も検討するのが望ましいとスケリー氏は指摘した。

  UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのマーク・ヘーフェル氏は「貿易交渉の継続に伴い、関税に関する状況はより明確になるはずだ」と話す。「過去の例でみると、政策面での不確実性低下は株式への追い風となる。米国の通商政策は今年下期、安定性を増す方向に動くと考えている」と述べた。

Source: Bloomberg Intelligence.

Source: Bloomberg Intelligence.

出所:ブルームバーグ・インテリジェンス

  個別企業のニュースでは、テスラは11月6日に年次株主総会を開催すると証券取引委員会(SEC)に届け出た。同社のイーロン・マスクCEOは、自身が設立した人工知能(AI)企業xAIのAIチャットボット「Grok(グロック)」が近くテスラの車両に搭載されるようになると明らかにした。

   デルタ航空はいったん撤回していた通期の利益予想を改めて示した。旅行需要は回復しつつあるとみている。

  イタリアの菓子メーカー、フェレロ・インターナショナルが、米シリアル大手WKケロッグを買収することで合意した。買収規模は31億ドル(約4500億円)と評価されている。フェレロは米国市場へのさらなる進出を目指す。

米国債

  米国債市場は総じて軟調。30年債は一時買われる場面があったが、前日とほぼ同水準で引けた。この日の30年債入札では強い需要が見られた。

国債直近値前営業日比(bp)変化率米30年債利回り4.87%0.00.00%米10年債利回り4.35%1.60.36%米2年債利回り3.87%2.70.71%  米東部時間16時53分

  今週の中・長期債入札はこの日の30年債が最後。投資家の強い購入意欲が見られた。

  JPモルガン・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、プリヤ・ミスラ氏は「米財政軌道について懸念する声が多いが、10年債と30年債の入札は問題なく通過し、市場では入札前の大幅なコンセッション(事前調整)もなかった」と述べた。

  30年債入札(発行額220億ドル)では、最高落札利回りが4.889%と、応札締め切り前の利回り水準とほぼ変わらず。前日の10年債入札(390億ドル)も良好な結果で、利回りは低下していた。

  ミシュラー・ファイナンシャル・グループのマネジングディレクター、トム・ディガロマ氏は「今週は長期債に関して投資家の前向きな姿勢が見られた」と指摘。「とりわけ30年債利回りが5%に近い時に、長期債の購入に尻込みする投資家はいない」と述べた。

  英国でも歳出の財源確保で政府債の発行が増える可能性が懸念され、国債利回りが上昇していた。日本では今週最初の2日間で国債利回りが20ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇。参院選を控え、積極財政の公約が警戒された。10日の新発20年国債入札は無難な結果となり、一定の不安解消につながった。

   先週の米新規失業保険申請件数は4週連続で減少し、22万7000件。エコノミスト予想の23万5000件をわずかに下回った。米国債相場は統計の発表前と後でほぼ変わらなかった。

  金利スワップ市場では7月の金利据え置きと、年内2度の25bp利下げが引き続き織り込まれている。

外為

  ドル指数は朝方、失業保険申請統計を受けて下げを埋めた。一時0.3%近く上げる場面もあったが、最終的には前日比ほぼ変わらず。

  円は対ドルで小じっかりとなった。主要10通貨ではスイス・フランが軟調だった。

為替直近値前営業日比変化率ブルームバーグ・ドル指数1196.740.110.01%ドル/円¥146.27¥0.010.01%ユーロ/ドル$1.1701$0.00000.00%  米東部時間17時00分

  円は対ドルで一時0.3%下げた。

  スコシアバンクのショーン・オズボーン、エリック・セオレ両氏は「円には貿易摩擦による圧力がかかっている」と指摘。「貿易動向は日銀にとって重要な判断材料だ。不確実性を一因に、日銀は政策引き締めを中断せざるを得ないでいる」とリポートで述べた。

  ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの市場戦略グローバル責任者ウィン・シン氏は「米国の労働市場はなお持ちこたえている」と指摘。「市場は静観しているが、『解放の日』のようなメルトダウン再来に向かって突き進んでいるとの感触を私は得ている」と述べた。

   ゴールドマン・サックス・グループのアナリストは、米ドルがここ数週間、落ち着いた値動きを見せているものの、再び「リスク資産的」な通貨として取引される可能性があると指摘している。

原油

  ニューヨーク原油先物相場は反落。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラスが供給拡大を休止する可能性が報じられたが、需要減退の兆しと解釈され、売りが優勢になった。貿易戦争の悪化も売り材料。

関連記事:OPECプラス、10月の供給拡大停止を協議-9月分は引き上げ検討 (1)

  ブルームバーグはOPECプラスが10月からさらなる供給拡大を休止する方向で協議していると報じた。協議はまだ初期段階だという。トランプ大統領は、米国に石油を輸出しているブラジルに対する50%の関税を含め、新たな関税措置を発表した。

関連記事:ブラジル資産急落、米政権が関税率50%を通知-首脳同士の対立強まる

  サクソバンクの商品戦略責任者、オレ・ハンセン氏はOPECプラスの協議について、「市場がこれ以上、原油の供給増に対応できない」兆候と解釈された可能性が高いと指摘。需要のピーク期が過ぎると「供給過剰になるリスクがある」と語った。

Oil Dips on Prospect of OPEC+ Hike Pause | US crude futures fell by as much as 2.8% on Thursday

ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)

出所:NYMEX

  OPECプラスは8月の供給拡大ペースを一段と加速させる方針を5日に示したものの、原油価格は今週に入って小幅に上昇していた。コンサルティング会社エナジー・アスペクツは、米関税政策の圧力が高まる中で、世界の原油需要が第3四半期と第4四半期に日量100万バレル未満の増加にとどまると予想した。

  同社の市場インテリジェンス部門のディレクター、アムリタ・セン氏は「関税交渉を巡る懸念が再燃しているため、今年第4四半期から2026年にかけての動向を憂慮している」と述べた。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物8月限は、前日比1.81ドル(2.6%)下落し、1バレル=66.57ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント9月限は2.2%安の68.64ドル。

  金相場は続伸。トランプ大統領が前日に発表した新たな関税措置を受け、長期的な影響に関する不透明感の高まりから安全資産としての金需要が高まった。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後3時23分現在、前日比11.63ドル(0.4%)高の1オンス=3325.29ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は4.70ドル(0.1%)高の3325.70ドルで終了した。

原題:S&P 500 Rises to Record as Treasury Sale Goes Well: Markets Wrap(抜粋)

原題:US Treasuries Settle Mixed After Solid Auction of 30-Year Bonds(抜粋)

原題:Dollar Erases Loss After Data; Swiss Franc Lags: Inside G-10(抜粋)

原題:Oil Falls as Possible OPEC+ Hike Pause Signals Waning Demand(抜粋)

原題:Gold Extends Gains as Traders Digest Trump Trade Moves, Fed View(抜粋)

 

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