根室の花咲港でウニを水揚げするロシア人船員(写真:共同通信社)

(安木 新一郎:函館大学教授)

ロシア極東を狙う日本?

 2022年2月からロシアはウクライナに全面攻勢をかけたが、目標だったキエフ占領に失敗し、3年以上も消耗戦を続けている。ロシアにとって、ウクライナ戦争は領土奪還のための「特別軍事作戦」だ。

 ロシア極東に目を向けてもそうだ。ロシアからすれば、日本と中国は領土を虎視眈々と狙っている存在だ。日本に住む人間からすれば、日本の領土的野心というのは冗談のように思えるが、日本政府は北方領土の返還を求め、また南樺太および千島列島のロシア領有をいまだ認めていない。ロシアにとって日本は明らかに敵国である。

 1991年にソ連が消滅すると、生活に困窮したロシア極東の人々は、日本にカニをはじめとする水産物や木材などを売り、中古車を買った。また、多くの女性が日本へ働きに来た。ロシア極東の人々にとって、日本は身近な存在になっていった。

 ところが、2000年に成立したプーチン政権はカニの密輸を取り締まり、日本製中古車の輸入を規制するなど、日本とロシア極東との関係を断ち切ろうとしてきた。

 そしてついに、2022年から事実上の日本向け水産物の漁獲禁止令を出したのである。

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