マツダの国内第2の製造拠点となる防府工場

 マツダは、多様な商品・電動化技術をタイムリーに開発・生産し、市場導入するにあたり既存資産の活用度を高めることで、スモールプレイヤーとしての企業価値を向上させる「ライトアセット戦略」を3月に発表したが、中でも「進化するマツダのものづくり革新」への理解をより深めるべく、メディア向け工場見学会が実施された。

 見学会は、広島の本社併設工場ではなく、山口県防府(ほうふ)市にあるマツダ防府工場にある自動車組立工場(西浦地区)で実施。ちなみに防府工場には、別途トランスミッション工場(中関地区)もあり、マツダの日本国内第2の製造拠点となっている。

マツダ防府工場の正面口

 西浦地区にある自動車組立工場には「H1」と「H2」の2つの工場があり、ボディを形成する鉄板のプレス工程と溶接などボディの組み立てを行なう車体加工区は共用で、H1工場では「MAZDA2」「MAZDA3」「CX-30」といったスモール商品群の塗装と組み立て、H2工場では国内・欧州向けの「CX-60」「CX-80」および、北米向けの「CX-70」「CX-90」といったラージ商品群の塗装と組み立てが行なわれている。

防府工場はH1とH2の2つの工場があるH1工場ではスモール商品群、H2工場ではラージ商品群が生産される

 松田防府工場長によると、最初のプレス加工区では、コイル状に巻かれて搬入された鉄板から、専用機械で板状にして取り出し、特定の形状に打ち抜くブランキング工程を経て、2400tの圧力を発生し、1分間に13枚を抜ける大型プレス機を使いボディの形に成形。続いて車体加工区では、約300台のロボットアームが、3700打点ほどの鉄板溶接を実行。またマツダは、高い精度を持つロボットを有していることから、ボンネットとトランクの自動取り付けを実現しているという。

 その後ボディは車種によってH1工場とH2工場に分かれ、丸ごと電着塗料の入ったプールに浸され、防錆処理が施される。続いて防水処理となるシーラー塗布が行なわれる。静粛性を高めるアンダーコートや制振材の塗布もロボットが行ない、最後に職人の手塗りに匹敵する質感の量産化に成功した「匠塗(TAKUMINURI)」を含めて、上塗り塗装が行なわれ、塗装の仕上がり検査を受けてから、組み立て工程へと進んでいく。

今回見学できないプレス加工や車体加工、塗装について説明を行なったマツダ株式会社 防府工場長 松田義博氏

 車両組み立てラインでは2800点以上の部品を取り扱っていて、締結やはめ込み、貼り付けなど、さまざまな組み付け方法が混在し、作業内容は多岐にわたる。生産ボリュームの大きいメーカーなら、単一車種専用ラインを設けて生産効率を上げるが、マツダはものづくり革新1.0で独自に混流生産を構築し、同等の生産効率を実現しているという。

 また、グローバルに展開するラージ商品群の安定した生産体制を構築するため、「車両の変化に柔軟に対応できる根の生えない設備」「作業者の能力を最大限発揮できる高効率混流生産ライン」「働きやすさを追求した作業者に優しいライン」の3つの基本コンセプトを掲げ、2021年にH2工場のリニューアルを敢行。電動化時代へ向けたマルチソリューション戦略の商品群と、既存の車種も含めて効率的に混流生産できる工場へと一新させた。

 今回見学はできなかったが、中関地区にあるトランスミッション工場では、スモール商品群用の自動変速機(AT)「SKYACTIV-DRIVE」や、スモール商品群(FF)用およびロードスター用の手動変速機(MT)が製造されている。

中関地区にはトランスミッション工場と車両の出荷を待つヤードが設けられている中関地区の工場で生産されている変速機は全5タイプ混流生産は2027年導入予定の自社開発バッテリEVにも対応

 リニューアルで重可搬AGVを導入したことにより、生産台数を増やしたい場合はAGVを追加するだけで済むほか、工程レイアウトはソフトで簡単に変更でき、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ハイブリッドシステム、モーター、バッテリなど、パワートレーンや駆動方式など、作業工程数の異なる多様なパワートレーンを1つのラインで効率的に、需要にフレキシブルに対応でき、結果ラインの稼働率を向上させることにも寄与している。

ボディを乗せた台車が左右2本のラインを流れる。右側は手前に流れ、「トラバーサー」と呼ばる部分で横移動し、今度は左側のラインで奥へと流れていく。レールや台車の数変更とトラバーサーを移設することで、短期間でラインの延長と短縮が可能となる右側は手前に流れ、左側は奥へと流れている。スタッフは中央をベースに作業を行なう

 今後の電動化マルチソリューションを支える生産戦略については、「バッテリEVを生産するなら、(エンジン車よりも)工程数が少ないので専用工場を作る方が効率的ではないですかとよく聞かれるのですが、マツダはすでに独自の取り組みでエンジン車とバッテリEVの混流生産が可能な体制が整っている」と弘中氏。

 この次期バッテリEVに搭載するリチウムイオン電池は、パナソニック エナジーから調達する計画で、山口県岩国市に新たに建設する車載用円筒形リチウムイオン電池のモジュール・パック工場にてモジュール化とパック化を行なう予定で、ここにも開発と生産が一体となった一括企画設計や共通化といったものづくり革新を取り入れるとしている。

2027年導入予定のバッテリEVはここ防府工場で生産される予定であるとが明かされた岩国に新たに建設する工場でリチウムイオン電池のモジュール化とパック化を行なう

 既存の混流生産ラインは、すでにバッテリEVの生産も見据えてリニューアルを行なっていて、もっとも必要となるのが“重量増への対応”とのこと。とはいっても、ボディを運ぶ黄色いハンガーは、すでに重量増を見越した設計になっているので、追加で必要となるのはより重量のあるEVユニットを運搬して、リフトアップできるAGVの追加がメインになると想定されている。

マツダは、バッテリEV用に新工場を建設するよりも、既存の混流生産ラインを活用できることで、初期設備投資を85%低減、量産準備期間を80%低減できると試算している

【マツダ】ラージ商品群「CX-80」生産ライン(組み立て)ダイジェスト(3分11秒)

 なお、防府工場は2025年4月1日より工場見学を再開。事前の電話予約が必要だが、次々とクルマが誕生していく様子を間近で見られる。見学日は月曜日~金曜日(GW・お盆・年末年始・休業日を除く)で、時間は午前なら9時30分~11時30分、午後なら13時30分~15時30分。約120分で概要説明と工場見学のコースとなる。見学希望日の6か月前の月初~2週間前まで受付していて、受付は先着順。防府工場総務部 見学担当TEL0835-29-1178(工場稼働日の9時~12時、13時~17時)。

防府工場では見学コースも用意している

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