イタリア発のこどもオペラを日本のこども達と創作し、こども達に学びの機会を

 

 

2025年8月、KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオにて、こどもと大人が一緒に楽しめる新しいオペラ作品を上演します。

 

本公演は、イタリア・ミラノのブレラ美術館が手がけたこども向けオペラをもとに、日本人キャストと神奈川の子どもたちの力によって新たに生まれ変わる、“日伊合作”の特別な舞台です。

 

演出を手がけるのは、ミラノ在住の演出家・井田邦明。物語は、かつてブレラ美術館館長を務めたジェームズ・M. ブラッドバーンが、日本滞在中に出会った「夢を食べるバク」にインスピレーションを受けて書き下ろした『エマと青いバク』。音楽は、ニューヨークのリンカーンセンターでの子ども向けプロジェクトでも活躍する作曲家、ブルース・アドルフが担当します。

 

さらに今回は、イタリアで制作された人形劇オペラ『ペレグリンと大きな魚』の映像上映も同時に行います。この映像作品は、内気で冒険が苦手な少年・ペレグリンが、不思議な島でさまざまな出会いを通して成長していく心あたたまる物語。

 

精神分析の祖・フロイトの姪であり絵本作家でもあるトム・シードマン=フロイトが約100年前に描いた幻想的な挿絵にインスパイアされ、繊細で美しい映像世界が広がります。

 

舞台と映像、2つのオペラ作品を通じて、子どもたちは芸術の楽しさと奥深さにふれることができるでしょう。

 

 

 

プロジェクトの展望・ビジョン

 

 

(エマと青いバクがイタリアで上演された時のこども達の様子)

 

 

 今回のオペラプロジェクトは、子どもたちにとって芸術と深くふれ合う貴重な学びの場となります。舞台芸術には、音楽、美術、身体表現、言葉、そして協働と創造という多様な要素が凝縮されています。

 

このプロジェクトを通じて、子どもたちは“観る”だけではなく、“感じて考え、参加する”アート体験を得ることができます。

そうした体験の積み重ねが、子どもたちの内面にある創造力や自己表現の芽を育て、自分の考えを持ち、他者と関わる力へとつながっていきます。舞台の世界に飛び込み、自らの感性を動かすことは、未来を生きる力を養う第一歩になるのです。

 

音楽は、チェンバロ、マリンバ、ハープ、ビブラホーンといった普段なかなか触れることのない楽器による生演奏。クラシックの伝統と現代的な感性を融合させたユニークな編成で、子どもたちの音楽的好奇心を刺激し、聴く力や感性を育てます。

 

イタリアでは、こうした芸術体験が子どもの成長において重要な役割を果たすと考えられており、質の高い音楽にふれることは、耳を澄ませる力を養い、外の世界への興味や探究心を引き出す大切な入り口とされています。音楽に集中して耳を傾けることは、自分とは異なるものを受け入れる感性の土台となり、子どもたちの可能性をひらく力になるのです。

 

演出は、ミラノを拠点に国際的に活躍する井田邦明。俳優の動きと舞台装置が一体となり、空間そのものが物語を語るような、立体的でダイナミックな演出が特徴です。

 

たとえば、階段や壁などの舞台装置を登ったり隠れたりする動きが、登場人物の感情や関係性を表現する手法で、視覚的にも豊かな物語体験を生み出します。子どもたちは「空間で物語をつくる」という新しい視点にふれ、美術やデザインの面白さを体感できるでしょう。

 

日本ではまだ十分とは言えない芸術教育。だからこそ、このプロジェクトを通じて「本物の芸術」に触れる機会を、地域の子どもたちと分かち合いたいと考えています。アートは、子どもたちの想像力、表現力、自分とは異なる価値観を受け入れる心を育む力があります。この舞台をきっかけに、芸術がもっと身近なものになってくれることを願っています。 

 

 

公演ホームページはこちら

 

 

 

 

 

 

「エマと青いバク——“夢”と“信じる力”の物語」

 

作家 ジェームズ・M. ブラッドバーン

 

 

私が初めて日本を訪れたのは、1984年の春のことでした。成田空港に降り立った瞬間から、日本の空気にはどこか特別なものがあると感じたのを今でも覚えています。京都や奈良を巡る中で、静けさの中に満ちている豊かな時間の流れ、そして過去と未来が自然に寄り添っているような文化のあり方に、私はすっかり魅了されました。

 

日本では、歴史ある神社や茶室が、現代の都市の喧騒のすぐそばに静かに存在していて、古いものと新しいものが無理なく共に生きています。そうした風景や出会いの一つひとつが、私の心に深く残り、やがて一つの物語のかけらとなっていきました。

 

そのかけらが少しずつ形をとり、誕生したのが、こどもオペラ『エマと青いバク』です。夢を失った少女エマと、夢を食べると言われる不思議な動物バクの旅を描いたこの作品は、日本で私が感じた“静かな魔法”を表現したものです。

 

この物語を通して、「夢を見ること」、「信じること」、そして「誰かの声に静かに耳を傾けること」の大切さを、子どもたちに伝えたいと願っています。どれも、これからの世界を生きていく子どもたちにとって、かけがえのない力になると信じています。

 

2025年8月、この作品がいよいよ神奈川のKAATで舞台化されます。音楽はやさしく、けれど豊かな響きを持ち、演出は子どもたちの想像力をぐんぐん引き出してくれることでしょう。オペラや芸術に馴染みのない方でも、親しみをもって楽しんでいただける舞台を目指しています。

 

どうかこの小さなオペラに、あなたも仲間として参加してください。子どもたちの心に長く残る“夢の舞台”を、ぜひ一緒に育てていただけたら嬉しいです。

 

 

 

 

 

『エマと青いバク』イタリアで出版された絵本の表紙

 

 

 

 

 

 

『エマと青いバク』の音楽について

 

作曲家 ブルース・アドルフ(ニューヨークより)

 

 

『エマと青いバク』の音楽を作曲するのは、私にとってとても楽しい仕事でした。私は長年、ニューヨークのリンカーン・センターで6歳から12歳の子どもたちとその家族のためのコンサートを開いてきました。親子三世代が一緒に楽しめる音楽をつくることは、私にとって大きな喜びなのです。

 

このオペラの物語は、日本の神話に登場する“バク”という夢を食べる動物にヒントを得た、ユーモアと冒険に満ちたファンタジーです。夢を失った少女エマと、夢にこだわる“青いバク”の出会いは、笑いあり、ミステリーあり、そしてちょっとした緊張感もある展開になっています。音楽も、物語の豊かさに負けないように工夫しました。

 

登場するのは、ハープ、ヴィブラフォン、マリンバ、チェンバロ、ピアノなど、あまり日常で触れることのない楽器ばかり。少人数の編成ですが、それぞれが独特の音色を持っていて、きらめくような響きやリズムの面白さを味わえるように書きました。音楽の中には算数のようなパターンやリズムもあり、演奏者も頭を使って楽しんでいます。

 

ちなみに私の家には「ポリー・リズム」という名のオウムがいて、オペラを歌うのが得意です。彼女は私が10歳の頃から一緒に暮らしていて、今ではなんと60歳。エマと同じくらい算数が得意なら、私が何歳か計算できるかもしれませんね!

 

この作品は、イタリア・ミラノで井田邦明さんの演出により初演され、今回彼の手で日本に届けられます。私にとっては初めての日本訪問でもあり、皆さんに直接お会いできるのがとても楽しみです。このオペラを通して、音楽と物語の世界を一緒に旅していただけたら嬉しいです。

 

 

 

 

演出家・出演者紹介

 

 

 

井田邦明

演出家・演劇教育者。世界各国の劇場、美術館で演劇、オペラの演出を行う。 1973年 桐朋学園短期大学芸術学部演劇科卒業。「安部公房スタジオ」を経てフランス パリ「ジャック・ルコック演劇学校」卒業後、イタリア ミラノで活動開始。オペラ「蝶々夫人」藤原歌劇団創立60周年記念作品)・ヴェルディ「ファルスタッフ」(二期会創立50周年記念作品)/オペラベリーニ「清教徒」(韓国・国立劇場)・演劇 安部公房「棒になった男」(日伊フェスティバル)/演劇 モリエール「ドン・ジュアン」(リスボン・国立ドナアンナⅡ世劇場)/オペラ・ブレヒト「七つの大罪」 (日生劇場35周年記念作品) 1978年ミラ ノ アルセナーレ劇場設立。1991年 井田邦明国際演劇学校をミラノに開校。

 

 

©NIPPON COLUMBIA

 

小林沙羅

東京藝術大学及び同大学院修了。2010~15年ウィーンとローマにて研鑚を積む。2012年ブルガリア国立歌劇場『ジャンニ・スキッキ』で欧州デビュー。また多くの新作オペラ初演を務める他、2015年及び2020年野田秀樹演出『フィガロの結婚』、2017年藤原歌劇団『カルメン』、2019年全国共同制作オペラ『ドン・ジョバンニ』、同2021年『夕鶴』等話題作に続々出演。2021年12月には姫路市文化コンベンションセンター『千姫』でも主役を務めた。2014年、2016年に続き2019年サードアルバム「日本の詩(うた)」をリリース。最近では自身のYouTubeチャンネルにて配信を行うなど、新しい取り組みも始めている。2017年第27回出光音楽賞、2019年第20回ホテルオークラ賞受賞。日本声楽アカデミー会員。藤原歌劇団団員。大阪芸術大学准教授。

 

 

 

 

大山大輔

東京藝術大学首席卒業。同大学院修士課程オペラ科修了。学部卒業時に松田トシ賞、アカンサス音楽賞、同声会新人賞を受賞。2008年、佐渡裕芸術監督プロデュース兵庫県立芸術文化センター《 メリー・ウィドウ》 のダニロ役で鮮烈なデビューを飾って以降、日生劇場オペラ 《 魔笛》 パパゲーノ、文化庁による“本物の舞台芸術体験事業”にてフォークオペラ 《 うたよみざる》 やまいち役での好演と活躍を続ける。2021年7月、13年ぶりの再演となった佐渡裕芸術監督プロデュース兵庫県立芸術文化センター《 メリー・ウィドウ》 に再びダニロ役で出演し好評を博す。劇団四季ミュージカル《 オペラ座の怪人》 ではタイトルロールとして客演するなど幅広い活躍を見せており、その多彩な経験と独自の表現力から、台本執筆、MC・ナレーション、歌唱・演技指導にも定評がある。2023年初演、日越外交関係樹立 50周年記念 新作オペラ《 アニオー姫》 の演出・戯曲・作詞(日本語)を務めた。洗足学園音楽大学ミュージカル・声楽コース講師、カクシンハン・スタジオ(演劇研修所)講師。日本声楽アカデミー会員。

 

 

 

 

林眞暎

横浜市出身。東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。卒業時にアカンサス音楽賞、同声会賞受賞。同大学大学院音楽研究科独唱専攻修了。サントリーホール オペラ・アカデミー アドバンストコース修了。2016 年 ドイツのバート・ヴィルトバート・ロッシーニ音楽祭において『オリー伯爵』ラゴンド役、『マルシコ伯爵』伯爵夫人役でヨーロッパデビュー以来、ブッセート・ヴェルディ歌劇場『イル・トロヴァトーレ』アズチェーナ役、ピアチェンツァ市立歌劇場 世界初演『オペラ・ミニマ』エラト役、マスカーニフェスティバル(イタリア)『カヴァレリア・ルスティカーナ』ルチア役、サントリーホール N. ルイゾッティ指揮『椿姫』フローラ役、柴田眞郁指揮 岩田達宗演出『フィガロの結婚』マルチェッリーナ役など国内外のオペラに多数出演。近年では井上道義指揮マーラー『第二番復活』(読売交響楽団)『第三番』(新日本フィル交響楽団)のアルトソリスト、カウナスオペラフェスティバル(リトアニア)『蝶々夫人』スズキ役に抜擢され好評を博す。令和元年度文化庁新進芸術家海外研修員。

 

 

 

運営者について

 

 

株式会社Kazan office.は、舞台・バレエ・オペラなどの舞台芸術から、アニメや伝統芸能を取り入れたイベントまで、幅広いジャンルの企画・制作を手がける会社です。

「観たことのない舞台を、もっと身近に」をコンセプトに、子どもから大人まで楽しめる作品づくりを目指しています。

 

本プロジェクトでは、「こどもとおとなのオペラプロジェクト2025実行委員会」の中核メンバーとして企画運営を担当し、クラウドファンディングによる資金の受け取りおよびリターンの発送なども株式会社Kazan office.が責任を持って行います。

 

 

資金の使い道
 

 

目標金額:100万円

皆さまからのご支援は、リハーサルおよび本番における楽器の運搬費、作曲家ブルース・アドルフ氏のニューヨークからの渡航費・宿泊費など、本プロジェクトの実現に不可欠な費用に充てさせていただきます。

 

※本プロジェクトは、支援総額が期日までに目標金額に届かなかった場合でも、自己負担するなどして、必ず予定していた規模の実施内容の通り実行致します。

 

 

 

公演概要

 

8月16日(土) 昼・夜公演 / 17日(日) 昼公演

会場:KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ

 

■出演

エマ:小林 沙羅

バク:大山 大輔

母親:林 眞暎

友人たち:神奈川のこどもたち

指揮:高木 耀子

演奏家編成:ビブラホーン・マリンバ・チェンバロ・ハープ・ピアノ

 

■演目 

 

「ペレグリンと大きな魚」

ミラノ制作版人形劇の映像を上映

 

「エマと青いバク」公演(生演奏)

 

■スタッフ

演出:井田 邦明

作:ジェームズ・M. ブラッドバーン

作曲:ブルース・アドルフ

翻訳:向坂 くじら

舞台美術:佐貫 巧

音響:オフィスマズルカ

制作協力:熊谷 薫・中瀬 洸

スペシャルアドバイザー :土屋 広次郎

HP・SNS:塚田 ひろみ

プロデューサ ー:市川 喜愛瑠

主催:こどもとおとなのオペラプロジェクト2025実行委員会

 

■協力・協賛

MUSIC BIRD / 面木 悠梨子 / NPO法人NAGOMI MIND / KAAT 神奈川芸術劇場 / 横浜市 磯子区民文化センター 杉田劇場 / ジャパ ン・アーツ / KAJIMOTO / merachi / 土屋 友紀 / 一般社団法人 アジアみらい文化交流協会 /アトリエウロン 

 

 

※ブレラ美術館、ジェームズ・M. ブラッドバーン様、ブルース・アドルフ様、小林沙羅様、大山大輔様、林眞暎様から、プロジェクトを行うこと、名称と画像掲載を行うことの許諾を取得しております。

 

※プロジェクト成立後、天災等やむを得ない事情(緊急事態宣言などコロナウイルスによる影響を含む)によりイベントが開催できなかった場合、開催の延期をいたします。いただいた支援金は延期公演の諸経費に使用させていただきます。リターンについては、改めてメールにてご連絡いたします。

WACOCA: People, Life, Style.