イランの核施設空爆に使われたB-2爆撃機(2022年7月25日撮影、米空軍のサイトより)

 6月13日未明、イスラエル空軍の戦闘機が大規模な空爆を実施し、イランの核施設、防空システム、弾道ミサイル地下基地などを攻撃した。

 イスラエル軍は単独でこれら先制攻撃を実施しただけでなく、イラン軍や革命防衛隊の複数の将軍クラスの高官や核科学者などを爆撃で暗殺したとされている。

 同軍事活動は「ライジング・ライオン作戦」と呼ばれている。

「ライジング・ライオン作戦」の目的は、イランの核兵器保有を阻止すること、すなわちイランの核濃縮能力の破壊であったことは間違いない。

 イスラエル軍はイラン上空の制空権を確保したが、米国が攻撃に参加しない限り、地中深くに建設された核施設に致命的な打撃を与えるのは困難だと見られていた。

 そうした中、6月21日夜、米国のドナルド・トランプ大統領は、米空軍の7機の「B-2」ステルス戦略爆撃機がイラン国内の3か所の核施設を空爆したと発表した。

 同軍事活動は「ミッドナイト・ハンマー」作戦と呼ばれている。

「米国第一主義」を掲げ、昨年の大統領選で米軍を国外の戦争に関与させないと支持者らに約束していたトランプ大統領だったが、その方針を翻した格好だ。

 米国はなぜ、そこまでイスラエルを支援するのか。

 ところで、米国とイスラエルはしばしば「特別な関係(Special Relationship)」にあるといわれる。

 米国とイスラエルの間には同盟条約は締結されていないが、両国がその「特別な関係」により実質的な同盟関係にあることを疑う人はいない。

 実際、1948年にイスラエルが建国されて以来、米国は外交面でも経済面でも一貫してイスラエルを力強く支持してきた。

 イスラエルは第2次世界大戦後、米国の対外援助を最も多く受けた国であり、2024年までにおよそ3100億ドルの経済的・軍事的援助を受けている。

 2016年に署名された覚書に基づき、米国は2019会計年度から2028会計年度まで毎年38億ドルの軍事援助をイスラエルに提供することを約束している。

 さらに、2023年10月7日のパレスチナのイスラム組織ハマスによる大規模攻撃を受け、米国はイスラエルに対して少なくとも125億ドルの追加軍事援助を提供している。

(出典:財団法人中東調査会2023年度外交・安全保障事業 溝渕正季明治学院大学准教授著『なぜ米国のイスラエル支持はかくも盤石なのか?』)

 また、外交的にも、米国は国際的な場で一貫してイスラエルを擁護してきた。

 特に国連においては、イスラエルを非難する決議には拒否権を行使することで、その成立を阻止している。

 こうした米国の揺るぎない外交的支援により、イスラエルは占領地政策や入植地拡大などに関して国際的な非難を免れ、制裁から保護されている。

 2023年10月以降も、イスラエルがガザにおいて非人道的行為や国際法違反を繰り返してきたにもかかわらず、米国は一貫してイスラエルを擁護し続けており、人道的停戦を求める国連安全保障理事会の決議に対して拒否権を発動している。

 このように、米国のイスラエル支援は、国際的に厳しい批判を浴びてもなお一貫して強固であり続けている。その背景にはどのような理由があるのか。

 本稿では、それらの理由について筆者の個人的意見を述べてみたい。

 以下、初めに世界および米国のユダヤ人について述べ、次にイスラエルの歴史について述べ、最後に米国がイスラエルを支持する理由について述べる。

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