欧州連合(EU)の一部加盟国と自動車メーカー数社はトランプ米政権との通商交渉で、米国投資を拡大する見返りとして関税の軽減を盛り込んだ合意を模索している。
EU加盟国に対しては4日、今週ワシントンで行われた米国側との協議を受けて通商交渉の進捗状況について説明が行われ、実務的な原則合意に近づいているとの報告を受けた。匿名を条件に関係者が明らかにした。
EUは、米上乗せ関税の一時停止措置の期限となる9日を控え、合意を急いでおり、関係者によると、米とEUの交渉担当者は週末も協議を続ける予定だ。欧州委員会の報道官は現時点でコメントの要請に応じていない。
関係者によると、いかなる合意も最終的にはトランプ大統領の判断に委ねられており、来週にかけて複数のシナリオが想定されている。具体的には、新たな関税を導入せず現行の停戦状態を維持する原則合意に達する、合意に至らず交渉は継続し、猶予されていた上乗せ関税が発動される、EU側が条件を満たしていないと米国が判断して一方的に追加関税を発表するといったケースだ。
ドイツのメルツ首相は先月、米国で自動車を生産する欧州メーカーに関税軽減を適用する「相殺ルール」案に支持を示した。
一方、EUの通商政策を担当する欧州委は、こうした自動車向けの相殺措置に支持を表明していないという。関係者によれば、EU当局はこのような措置が導入されれば、生産や投資を域外へ流出させることにつながりかねないと懸念している。
EUは、米国との通商交渉で輸出品の多くに10%の一律関税を課す案を受け入れる用意があるが、医薬品、酒類、半導体、商用航空機といった重要分野では米国に関税引き下げの確約を求めていると、ブルームバーグはこれまでに報じた。
EUはまた、自動車・部品に対する25%の関税、および鉄鋼・アルミニウムに対する50%の関税についても、実質的な関税引き下げとなる割当枠や免除措置を引き続き求めているという。
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ただ、交渉は依然として難航しており、加盟各国の間では許容可能な合意のラインを巡って意見が分かれていると、関係者は話している。
一方、米国はEUが輸出する農産物に対し、17%の関税を課す可能性を示したと、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が報じた。EU当局者は米国との貿易紛争激化を示すものと受け止めているという。
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原題:EU-US Trade Talks Focus on Tariff Offset for Automakers (1)(抜粋)
(最終段落にFT報道内容を追加して更新します)
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