大阪・関西万博のシンボル、大屋根リング
©Expo 2025

世界中からたくさんの人やモノが集まり、地球規模の様々な課題に取り組むために、世界各地から英知が集まる場-それが「万博」である。

2025年4月に開幕した大阪・関西万博には、国内外から多くの人が訪れ、会場は連日大きな賑わいを見せている。

本万博の開催のコンセプトや意義、見どころなどについて、2025年日本国際博覧会協会の石毛いしげ 博行ひろゆき事務総長に話を伺った。


石毛いしげ 博行ひろゆきさん
2025年日本国際博覧会協会事務総長
1974年通商産業省(現経済産業省)入省。中小企業庁長官、経済産業審議官など要職を歴任。2019年まで日本貿易振興機構(ジェトロ)理事長を務め、2019年より現職。

大阪・関西万博のコンセプトや、万博を「今」開催することの意義についてお聞かせください。

大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。史上初めて「いのち」をテーマにした万博です。158の国・地域、7つの国際機関が大阪・夢洲に一堂に会し、共に未来社会について考え、交流、対話する貴重な機会となります。

先が見えないこの時代だからこそ、世界が半年間同じ場所に集い、リアルに対話・交流することで、正解のない未来を共に考えることに大きな意味があります。これこそが万博開催の意義であると考えます。

コロナ禍により進んだ世界の分断は今、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエル・ガザ紛争などで、その危機がより一層深まっています。このような中、「いのち」をテーマとし、分断から世界を再びつなげる大阪・関西万博の価値は、かつてない程高まっていると言えます。

このような万博の開催意義を、公式参加者をはじめとした関係者が十分理解し、出展参加に向け尽力して頂いた結果、6月22日時点で来場者数が900万人を達成するなど、連日多くの人々に万博に来場頂き心より感謝しています。


来場者500万人達成記念。石毛事務総長と公式キャラクターミャクミャク。6月22日時点で来場者数は900万人を超えた。
©Expo 2025

万博では、国内外から様々なパビリオンが出展され多くのイベントなども開催されていますが、特に外国人に対して見どころやおすすめの楽しみ方を教えてください。

万博会場には、国内外から集まった多彩なパビリオンをはじめ、数多くの見どころが点在し、ご来場された方々が思い思いに楽しんで頂いていることをとても嬉しく思っています。様々な見どころの中から、主な魅力を五つご紹介します。

一つ目は、万博の目玉でもあり、シンボルでもある、世界最大の木造建築物、「大屋根リング1」です。1889年パリ万博の「エッフェル塔」、1970年大阪万博の「太陽の塔」のように、訪れた人々の心に大きなインパクトを残すのでないかと思います。1周約2kmの巨大リングに昇った瞬間、人々はあまりの迫力に驚き、その絶景に感動することでしょう。来場者アンケートでも、多くの人々がリングの素晴らしさに触れています。リング内には世界中のパビリオンが配置されていて、まるで地球儀を眺めるように、リング上から世界を総覧し、会場のコンセプトである「多様でありながら一つ」を実感できることと思います。

二つ目は、「万博の華」と言われている海外のパビリオンです。今回の大阪・関西万博は、日本の万博史上最多の158か国・地域が参加しています。パスポート無しで世界旅行ができるのは、万博でしか体験できない楽しみです。連日多くの人々が、各国パビリオンの訪問記念にスタンプを押し、スタンプラリーを楽しんでいます。「いのち」というテーマのもとで、日本を含めた世界各国の人々の生き方や幸せ感に触れることができ、旅行体験とはまた違った魅力がそこにはあります。

三つ目は万博のテーマ「いのち」に真正面から取り組むシグネチャーパビリオンです。各界の最前線で活躍する8人のプロデューサーが、それぞれの考える「いのち」を切り口に展開する8つのパビリオンです。これらのパビリオンは来場者に「いのち」を考えるきっかけを提供します。一例をあげれば、石黒 浩プロデューサーのパビリオンでは、約20体のアンドロイドと約30体弱のロボットが登場し、50年後の人とアンドロイドが共存する未来を示すなど、まだ見ぬ「未来」を体験できます。


石黒 浩プロデューサーのシグネチャーパビリオンの一例。人間がアンドロイドと共存する50年後の生活とプロダクトを追体験できる。
©FUTURE OF LIFE / EXPO2025

また、日本館を始めとして、日本の自治体や民間企業・団体などのパビリオンも、「いのち」そして「未来」について考える体験を得られます。日本館のテーマは、「いのちと、いのちの、あいだに」です。最大12mの、国産スギ材のCLTパネル560枚を使用した円形の建物はひと際存在感を放っています。循環の観点から、これらCLTパネルは、会期後に再利用される予定です。大阪府市が出展する、大阪ヘルスケアパビリオンのテーマは「REBORN」です。25年後の「ミライの自分」を、アバターで体験できます。民間企業や団体による13のパビリオンも、「いのち」を様々な切り口から表現しており、一例ですが、パソナ館では、iPS心臓の最新テクノロジーが展示されて、拍動する心臓の動きが注目を集めています。


国産スギ材のCLTパネルを使用した日本館
©Expo 2025

四つ目は、会場内で連日行われるライブイベントの数々です。ほぼ毎日開催される公式参加者によるナショナルデーやスペシャルデーでは、各国の伝統舞踊や一流アーティストによる音楽やパフォーマンスが披露され、連日大きな盛り上がりを見せています。会場内の至る所で見られるこれらイベントの数々は、万博ならではの祝祭感に満ち溢れ、多くの人々を魅了しています。

最後五つ目の魅力は、万博を通じて「日本」を知る楽しみを味わえることです。外国の方々にとって、日本を短期間で総合的に知ることができるのも万博の大きな魅力です。例えば、会期中には日本全国のお祭りが万博に集まるほか、8月には会場内で大相撲万博場所も予定されています。伝統文化だけでなく、アニメと食を融合させたイベントなども予定されており、是非ホームページなどで開催日程をご確認の上、ご参加頂ければと思います。

更に万博会場では、世界のグルメだけでなく日本のグルメを味わうことができます。寿司やラーメン、スイーツまで多種多様な料理に加え、地元関西のグルメをパビリオンやフードコートで堪能できます。パビリオンやイベントのみならず、文化からグルメまで日本を総合的に知りたい外国の方々にとって魅力的な訪問先となるでしょう。


大阪府市が出展する大阪ヘルスケアパビリオン
©Expo 2025

大阪・関西万博は、1970年に開催された大阪万博以来、55年ぶりに大阪で開催され、大阪や関西の自治体も出展しています。今回の万博を大阪・関西地域で開催する意義について教えてください。

大阪・関西地域で開催する意義の一つ目は、大阪・関西ブランドを世界に印象付ける大きなチャンスになることです。「この難しい時代に万博をやり遂げる」ことができれば、世界から高い評価を得られることは間違いないでしょう。万博をやり遂げることこそが、大阪・関西地域にとっての大きなレガシーとなります。

二つ目は、この地域が、世界に向けた日本のゲートウエイになることです。昨年1,464万人と過去最高を記録した大阪へのインバウンド客は、今年さらに増えるのではないでしょうか。また、グローバルビジネスのゲートウエイとしての可能性も期待できます。イタリアや中国、マレーシア、北欧地域など、万博に合わせて多くの国々が訪日ビジネス代表団を派遣しています。巨大な人口・経済圏である大阪・関西地域が、万博を起爆剤として中長期な発展を遂げることは、日本全体の地方創生にも大きな貢献となるでしょう。

大阪・関西万博は、世界中から「いのち輝く未来社会」への取組を持ち寄り、SDGsの達成とその先の未来を描き出す場であるかと思います。具体的な取組などについてご紹介いただけますでしょうか。

万博会場には、世界中からSDGsの知恵が集まっています。例えば、パビリオン建築には、木材や竹、藁などの自然素材が多用されているのも今回の特徴です。閉幕後のリユース、リサイクルを意識した建物も多くあります。また展示内容もSDGsをテーマにしたパビリオンが多いのも特徴です。

ドバイ万博に引き続いて行われている、テーマウィークにも是非注目して頂きたいと思います。週替わりで、「健康とウェルビーイング」や、「食と暮らしの未来」といった人類共通のテーマを話し合うプログラムで、多くの国々からスピーカーが登壇し、ビジネス交流の点でもお勧めです。

万博のコンセプト、「未来社会の実験場」に相応しく、会場内で多くの未来技術に触れられる点にも注目いただければと思います。例えば、会場内にはカーボンリサイクルファクトリーが設置され、回収したCO2からeメタンを作り、会場内の調理や給湯に使用するなど、間近でカーボンリサイクルの現状を見ることができます。万博会場自体が、来場者にとって未来社会の実験場を体感できる場であることを目指しています。

石毛事務総長は最後に、未来を担う世代にとっての万博の意義をこう結んだ。

今回の万博の意義についてもう一つ加えると、大阪・関西万博が人々の記憶に残ることです。特にこれからの未来を担う子供や若者たちにとって、万博で海外に触れた経験が世界に目を向けると共に、視野を広げ、自らの可能性について考える機会になることは何物にも代え難いものがあります。半世紀を経た今でも、かつての1970年大阪万博での良き思い出を語る方が多いように、大阪・関西万博も、多くの人々にとって良き記憶として残ることを願っています。

戦後80年間でいわゆる大規模な万博は世界で10回しか開催されていません。その中でも大阪は、世界で初めて55年ぶりに2回目の万博を開催した都市です。それほど貴重な機会ですので、海外からも含めて是非多くの方々に、万博に足を運んでいただきたいと思います。


トルクメニスタンのナショナルデーのイベントの様子。
©Expo 2025


大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」(参照:大阪・関西万博を盛り上げる公式キャラクターたち)
©Expo 2025

By TANAKA Nozomi
Photo: ©Expo 2025; ©FUTURE OF LIFE / EXPO2025

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