長距離インターネットケーブルが意図的に切断される妨害行為によって、フランス全土でインターネットサービスに障害が発生した。これはパリ五輪の期間中に起きた2度目の妨害事件である。大会開幕の数時間前には、高速鉄道路線が連続放火の標的となっていた。

フランスのデジタル問題担当国務長官のマリナ・フェラーリはXへの投稿で、7月29日(欧州時間)の未明にフランス各地で通信インフラへの「被害」が確認されたと説明している。これによって通信事業者のサービスが影響を受け、光ファイバーやモバイルインターネットの接続に「局地的な影響」が生じたという。複数のインターネット企業も被害の発生を認めている。

フランス内務省は警察機関を統括する立場にあるが、今回の事態についてのコメント要請に即座には応じなかった。これに対してフランスのサイバーセキュリティ機関である国家情報システムセキュリティ庁(ANSSI)は『WIRED』の取材に対し、「今回の障害はサイバー攻撃によるものではない」と明言している。

これらの妨害行為について、現時点で犯行声明は出されていない。当局はケーブル切断の実行犯をまだ特定できていないものの、鉄道の運行妨害については「極左」の思想をもつ集団による犯行の可能性が高いとみている。

通信大手にも大きな打撃

オリンピックに関連した今回の一連の事件は、ロシアを取り巻く複雑な状況のなかで発生した。ロシアはフランスを標的とした偽情報の拡散で非難を受けており、さらに欧州で起きた一連の破壊工作にも関与した疑いがもたれている。

今回の破壊行為では、フランス第2位の通信大手であるSFRが特に大きな打撃を受けたようだ。「昨夜の午前1時から3時にかけて、わたしたちの長距離光ファイバーネットワークが5カ所で意図的に破壊されました」と、SFRの広報担当者は『WIRED』の取材に対して説明している。SFRによると、保守チームが修復作業に当たったことで、顧客への影響は「限定的」だという。

「わたしたちの長距離ネットワークを利用する3社から8社ほどのほかの通信事業者にも影響が及んでいます」とも、SFRの広報担当者は明かしている。

これに対してインターネットプロバイダー(ISP)であるNetalisの親会社である通信会社のNasca Groupの最高経営責任者(CEO)のニコラ・ギヨームは、今回の被害は明らかに「意図的なもの」であると、『WIRED』の取材に対して断言した。個人・法人向けサービスを提供する多くのISPが被害を受けているという。

ギヨームがXで公開した画像では、損傷したケーブルの一部がきれいに切り離されている様子が確認できる。ギヨームによると、犯人らがケーブルを収納するダクトを開け、直接切断した可能性が高いという。また、インターネット企業のFree 1337も被害を受けており、修復作業に取り組んでいることを公表した。

過去にも起きていたケーブル切断

世界中の何十億人もの人々がワイヤレス通信を利用しているが、インターネットの根幹を支えているインフラは国境や海底を横断する物理的なケーブルだ。このインフラは通信障害を最小限に抑える目的で、トラフィックを自動的に迂回させる機能がある。だが、それでも攻撃や妨害に対して脆弱な側面がある。こうした状況を踏まえてEUの政治家たちは、インターネットインフラのセキュリティ強化を訴えている。

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