中国から閉鎖指示 すでにラインは停止中

吉利汽車傘下のロータスは、生産拠点を米国へシフトする方針を固め、英国ヘセル工場での生産終了に備えるよう指示を受けた。情報筋によると、この指示は、中国のロータス経営陣から出されたという。

ロータスはこの件についてコメントを控えたが、主要市場である米国での関税引き上げの影響に対処するため、同工場の主力モデルであるスポーツカー『エミーラ』の生産を5月半ばから一時停止していることを認めた。

英国ヘセル工場におけるエミーラ生産はすでに止まっているという。英国ヘセル工場におけるエミーラ生産はすでに止まっているという。    ロータス

関税障壁を突破し、米国で自動車を生産したい考えだ。ロータスの馮青峰CEOは、6月25日に開催された第1四半期決算発表で、「現地生産は実現可能な計画だと考えています。関税引き上げによる損失を補填するために、米国戦略を活用しようとしています」と述べた。

馮氏は、米国での生産について「戦略的パートナーと綿密な協議を行った」としたが、具体的な社名は明かさなかった。最も可能性が高いのは、エミーラを含む一部の生産を、稼働率が低いサウスカロライナ州のボルボ工場に移すことだ。ボルボも吉利の子会社である。

ロータスは、赤字が続く中でコスト削減に奔走している。同社は4月にヘセルで270人を解雇し、また巨額の費用をかけて数か月前に開設したばかりのクラーケンウェル本社も閉鎖される予定だ。パーク・レーンにある旗艦店は、英ディーラーグループのHRオーウェン社に移管されたが、これもコスト削減策の一環と見られている。

ロータスの販売台数は、今年第1四半期に42%減少し、吉利傘下でSUVの『エレトレ』やセダンの『エメヤ』など、新しいEVシリーズを発売して以来、初めての大幅減となった。

吉利は、マレーシアのDRB-Hicomから2017年にロータスを買収したが、20億ポンド(約4000億円)の投資の回収はまだ見込めない。ロータスは第1四半期に1億8300万ドル(約265億円)の純損失を計上し、負債は33億ドル(約4780億円)に増加した。

EV低迷で打撃 ハイブリッドに軸足

EVの高級車セグメントにおける需要低迷の影響が大きい。「近年、高級車ブランドのBEVの普及率は当社の予想を下回っています」と、馮氏は述べている。

米国は新EVシリーズにとって大きな市場となるはずだったが、中国製EVに100%の関税を課したことで、ロータスは米国でのエレトレの販売を中止せざるを得なくなった。欧州と中国でも需要が落ち込み、エレトレとエメヤの1月から3月までの販売台数は31%減の719台となった。

EV減速を受け、エレトレなどにハイブリッド・パワートレインを搭載する。EV減速を受け、エレトレなどにハイブリッド・パワートレインを搭載する。    AUTOCAR

代わりに、『ハイパーハイブリッド』と呼ばれるPHEVシリーズに軸足を移し、スポーツカーにも電動ドライブトレインを搭載する。まず、エレトレのPHEV版を開発し、来年第1四半期に中国で発売する予定だ。

ヘセル工場は、エミーラの生産終了後に電動スポーツカーの生産を計画していたが、市場の反応が鈍く、この計画は延期された。「市場は電動スポーツカーを受け入れる準備ができているのか? その答えはまだわかりません」と、ロータス欧州部門のCEOであるマット・ウィンドル氏は5月、AUTOCARに語っている。

ヘセル工場は昨年約5000台のエミーラを生産したが、理論上の生産能力は1万台ある。ウィンドル氏は、より多くのモデルを生産するよう吉利に働きかけていた。その候補の1つが、ポールスターの電動ロードスター『6』だった。

「(ポールスター6の)生産は可能だと思います。現時点ではエンジン車だけなので、移行期間は必要ですが、その道を進んでいかなければなりません」とウィンドル氏は述べた。

吉利は、法規制によりエンジン車の生産終了を迫られていること、そして気候変動対策にあまり積極的ではない米国が、地球上で最後の主要なエンジン車市場となることを考慮し、ヘセル工場への投資拡大は価値がないと判断したのかもしれない。

馮氏は以前、エミーラにV8エンジンを搭載する選択肢も検討していると述べていた。

大きすぎた期待 国内産業への影響も懸念

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