Rivendellは熱心なファンを抱えていて、手に入りにくく、在庫を抱えるのが難しい自転車をつくっている。ところが、例えば24年11月、Blue LugのオンラインショップがもっていたRivendell製自転車の在庫点数はRivendell自身よりも多かったのだ。
「Blue Lugは、うちのナンバーワンディーラーです」とキーティングは語る。「われわれがつくるたびに買ってくれるんです」
自転車好きの心をワシづかみ
キーティングはすぐに、Blue Lugのオンラインプレゼンスの話に突き進んだ。それはまさに、自転車好きの心をワシづかみにする良質なポルノなのだ。
「Blue Lugのサイトはいつまででも眺めていられます」とキーティングは話す。「Blue Lugが組み上げる自転車には、使われているパーツの詳細なリストが付いているし、ブログと動画もすばらしく、自転車関連のあまり知られていない話題が深く掘り下げられています。例えばメッセンジャーバッグの製造方法のようなものまで」
Blue Lug 代々木店
PHOTOGRAPH: MIGS GUITERREZ
Blue LugのウェブサイトやSNSアカウントには日本語版と英語版があり、確かに何時間でも見ていられる。Facebook、Instagram、そしてFlickrへの投稿は極めて活発で、Flickrのアカウントでは13万9,000枚以上の写真を1,391ページ以上にわたって展開している。
またYouTubeには、剝き出しのフレームから完成されたカスタムメイド自転車が組み上がるまでの様子を捉えた動画が、ずらりと上がっている。言葉をともなわない動画が多く、熟練工が作業を一段階ずつ進める光景をうっとりと眺められる。その大多数が20分を越え、Crustの自転車が組み上がっていく様子を収めた44分の動画では、カスタムペイントが施されるところまでが映し出され、そこには夢見心地にさせてくれるサウンドトラックが付いている。
それらの動画は心地よく脳を刺激するASMR的な要素を備え、ただ眺めているだけで多くのことを学べたり、自分の夢の自転車や、自分がいま乗っている自転車について思いを巡らせるためのよすがになったりもする。それほど真剣に見つめていなくても、動画が続く40分あまりの時間は気持ちよく流れ去る。
Blue Lugが生み出しているのは、楽しさ、ファッション、そして実用性が交差する地点にある美しい作品群なのだ。
「Blue Lugは、それまで誰も考えつかなかったようなかたちで自転車を組み立てています。細部を見逃さないんです」。キーティングはそう言ってから、ケーブルハンガーやトップチューブプロテクターのような細かな自転車パーツについて、Blue Lugが生み出したちょっとしたブームについて、しばしひとり語りに入っていった。
都内のあるBlue Lug店舗で陳列されている自転車
PHOTOGRAPH: MIGS GUITERREZ
Blue Lugの自転車で東京を走る
ショップスタッフの協力を得たわたしは、Blue Lugのなかでもいちばん背が高い従業員のひとりに自転車を借りてそれに飛び乗り──ありがとう! カイセイさん──街中を走り回った。その自転車は組まれてから2年が経つAll CityのSpace Horseで、見たことがないほどきれいな青色に塗られ、いい感じのファットタイヤと素早く反応する完璧に調整されたギアチェンジが備わっていた。

WACOCA: People, Life, Style.