公開日時 2025年06月27日 13:00更新日時 2025年06月27日 13:00

弾痕、基地フェンス・・・ 沖縄戦で逃げ惑った道の「壁」記録 画家・秋山さん、那覇で個展
不発弾処理の告知看板をモチーフにした作品「未来へ」と作家の秋山颯馬さん=20日、那覇市安里のKiyokawa Gallery

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琉球新報社

 沖縄で活動する画家の秋山颯馬さん(26)の個展「∞零 UNLIMITED ZERO」が21日に、那覇市安里のKiyokawa Galleryで始まった。7月6日まで。

 秋山さんは沖縄戦を主要テーマに、2023年から毎年、慰霊の日を挟む期間に同ギャラリーで個展を開催している。戦後80年の今年は「誕生と喪失」を主題に制作した作品を展示。時間の経過で変化したり失われたりする「壁」を描き、記録することを通して沖縄戦の記憶を未来へ伝えようと試みている。

 秋山さんが描く「壁」は、沖縄中を歩き回って見つけた実在のものだ。沖縄戦を身体的に追体験しようと、証言資料などを基に沖縄戦体験者の逃げ惑った道を約2日間かけて歩き通し、道すがらに見つけた壁を記録していったという。

 沖縄戦の弾痕が残る壁や米軍基地のフェンスなど、日常に溶け込んでいる風景を独自の視点と感性で切り取り、作品として再構築することで、過去の記憶や違和感を呼び起こそうと挑んでいる。

 新作として、平和の礎の光景を描いた「花をそえて―2025」と、壁にまつわるデータを背景に盛り込み、アクリルケースに収めた「データシリーズ」を展示。不発弾処理を告知する看板を約40個に分割して販売し、持ち帰ることができる大型の作品「未来へ」も目を引く。

 秋山さんは「観光地として開発が進む沖縄で、明日失われるかもしれない沖縄の今を切り取り、伝えていきたい。それが内地出身で今沖縄にいる表現者としての責任であり、ここにいる意味だと思っている」と語った。

 入場無料。午前11時から午後7時。会期中無休。問い合わせは電話050(3159)6200。

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