(イメージ:Tomasz Makowski/Shutterstock.com)

 韓国の古里原発が他国から攻撃を受けた場合、深刻な放射能汚染によって日本国内だけで避難者は1000万人に達するうえ、米国からは自衛隊派遣を求められ、日本は深刻な混乱に陥る――。

 綿密なシミュレーションからそんな答えを導き出したのは、米国のNGO「The Nonproliferation Policy Education Center」(NPEC、核不拡散政策教育センター)だ。シミュレーションに参加したのは日米韓3カ国の原子力の専門家ら約30人。このプロジェクトに日本からただ1人参加した元内閣府原子力委員会委員長代理の鈴木達治郎・長崎大学客員教授(専門は原子力政策、科学技術政策)にインタビューし、今回のシミュレーションから得られた教訓を尋ねた。

(青木 美希:ジャーナリスト)

【韓国原発攻撃シミュレーション】

① 北朝鮮のドローン攻撃で放射能拡散、日本は1000万人避難…米国の介入で戦争に

②  米国は中国・北朝鮮攻撃へ、日本は軍事協力拒否…危ないのは使用済み核燃料

③ 日本の原発施設が攻撃されたら…六ヶ所再処理工場なら最大避難者数は8920万人

「日本の首相」は何を考え、どう動いたか

 今回のシミュレーションにおける鈴木氏の役割は「日本の首相」だった。依頼を受ける際には「実際の首相がいま誰かということは意識しなくていい。自分の考えで動いてくださいと言われた」という。日本チームにいたのは、首相のほかに、防衛大臣、環境大臣、原子力規制委員会委員長、外務大臣、経済産業大臣、法務大臣、知事会代表(福岡・山口の県知事)。日本の役職であっても、首相役以外は米国人が務めた。

 

インタビューに答える鈴木達治郎氏(撮影:青木美希)

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「韓国の古里原発がドローンで攻撃されたとの想定でシミュレーションは始まりますが、まず、『誰が攻撃したか』を考えなければなりません。ミサイルが使用されたのであれば、軍事攻撃であることが明らか。しかし、今回はドローンです。韓国も日本も『北朝鮮がやったかもしれないが、証拠がない』という立場。米国はどうやら諜報活動によって『北朝鮮がやったに違いない』と思っているわけです」

「ここで情報のギャップが生じています。実はこのシナリオの前提は、われわれには知らされていませんでした。それは、こういう内容です。台湾が独立の思考を強め、それに対抗して中国は台湾に軍事侵攻しようと考え始める。そして、中国が北朝鮮に対し『韓国の原発を軍事攻撃するよう』示唆した、と。参加者にはこれが知らされていない。ドローン攻撃の犯人は誰か分からないという状況で物事は動きます」

 古里原発への攻撃によって放射性物質が朝鮮半島東側の大気中に拡散し、日本では1000万人、韓国でも数百万人が避難を強いられる。ところが、米国は中国と北朝鮮への攻撃を決め、日本と韓国に対しても軍事攻撃に参加しろと迫ってくる。

 それに対し、日本チームはどう返答するのか。

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