ガンジーはヒンズー教徒とイスラム教徒の融和を目指したが、最終的にはインドとパキスタンとしてそれぞれ独立した。

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 インドとパキスタンが領有権を争うカシミール地方で今年4月下旬、テロ事件が発生し、印パ間関係が急速に悪化した。5月、米国の仲介を受けて両国は停戦に合意したが、根本的な問題は解決されておらず、対立が再燃するリスクは続く。

 印パ対立の出発点は宗教観の違いにある。インド独立の父であるマハトマ・ガンジーは、ヒンズー教徒とイスラム教徒の融和を目指し、英国統治下のインドが一つの国として独立することに奔走した。しかし、宗教間の溝は埋まらず、最終的にヒンズー教徒が多数派を占めるインドと、イスラム教徒が多数派を占めるパキスタンは分離独立することになった。

 その際、住民の多数がイスラム教徒である一方、支配者のマハラジャ(藩王)がヒンズー教徒だったカシミール地方の帰属先を巡る対立が発生した。この領有権を巡り、インドとパキスタンは独立直後から1970年代初頭にかけて3度の戦争を経験した。その後も、両国の核保有宣言(98年)や、パキスタンの軍情報機関(ISI)の関与が疑われるイスラム系過激派組織による越境テロ事件の発生などをきっかけに、印パ関係は一触即発の事態を幾度も繰り返している。

 2014年にヒンズーナショナリズムを掲げるモディ政権が発足して以降も、印パ間は緊張状態が続いている。19年、インドが実行支配するジャム・カシミール州に対して広範な自治権を認める憲法370条を廃止し、同地を連邦直轄領にしたことも、印パ関係が一段と悪化する要因となった。

 新型コロナウイルス禍以降は、2国間関係は緊張状態にありながらも安定に向かい始めていた。21年に停戦協定を厳格に順守する協同声明を出したことを受けて、実効支配線(LOC)近辺の停戦違反件数は減少し始めた。ま…



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週刊エコノミスト

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