日本サッカー協会(JFA)は17日、6月末のスペイン遠征と7月のEAFF E-1選手権に臨む日本女子代表(なでしこジャパン)メンバーをそれぞれ発表した。ニルス・ニールセン監督と佐々木則夫女子委員長がオンライン会見に登壇し、質疑に答えた。
【会見前半:6月スペイン遠征】
●佐々木則夫女子委員長
「今回は2つの遠征、大会のメンバー発表ということで、これまであまりないレアケース。スペイン遠征メンバーは18名ということでメンバーを絞っている。理想であれば2試合やりたいところだったが、1ゲームのみということになった。またヨーロッパにおいては女子EURO2025がある。そのタイミングでこういったインターナショナルマッチデーを活用しながら、いい相手との試合を計画したなかで、理想的なスペイン、FIFAランキング2位という強豪チームと1試合を行う。なでしこジャパンの現状を試せる試合に非常にワクワクしている。指揮する監督においても、同じような気持ちでいると思う。また、E-1においては新たなメンバー、ラージグループからの選考という状況。東アジアでどんなパフォーマンス、アピールをするか、非常に興味深いなかでの2つのセッションになっている」
●ニルス・ニールセン監督
「今回のスペイン遠征において、通常であれば選ばれている多くの選手がシーズンオフということで、比較的アメリカのリーグに所属する選手が多く選ばれている。アメリカのリーグに所属している選手をより観てみたいというのもある。今回の選出は、いかにシーズン中であるかどうかを重視して選んでいる。過去2回のキャンプのコロンビア、ブラジル戦で学び、今回もまたスペインという最強と言ってもいい国と対戦することによって、また新たな学びを得たいと思う。2つのキャンプで学んだことを、スペイン戦で生かしたい。こういったところで準備をして、次のW杯に向けてより進んでいきたい」
──先日のブラジル遠征2試合の反省を含め、スペイン戦のテーマは何か。
ニールセン監督「まず今回のスペイン戦とブラジル戦は違いがある。スペインに関しては1試合しかできないということ。ブラジル戦は1試合目がなかなか内容が悪く、2試合目は逆に生かしていい試合ができた。今回1試合しかないので、いかに準備していくことが大事になる。スペインは世界でも一番のパスのチーム。ブラジルはまた違った特長のチームなので比較はできないが、ブラジルで学んだことはW杯で生かしていきたい。メダルが懸かったような重要な試合でも学んだことを生かしていきたい。スペインに関しては、パリ五輪のときに75%のポゼッションをスペインが握っていた。75%も握られてしまうと、なかなか日本も倒すことは難しい。今回のゲームに関しては、自分たちのポゼッションを高めていければ。チャンスを作るときのタイミングを見極めて攻撃したい。時にはボールを奪って、リスクを取ってカウンターアタックということもあるし、リスクを取らずにしっかりボールをキープし、ボールを守るという戦術も必要になってくるときもある。今回のスペイン戦に関しては、いかにボールをうまく大事にするかというところが重要になってくる」
──GKスタンボー華が久々の招集となった。
「選出したということで、お互いにより知れればと思っている。すばらしいGKだし、キャラクターもいいと聞いている。フィールドプレーヤーももちろんだが、GKも3人以外にも選択肢があるほうが、よりワールドチャンピオンに近づくためには必要だと思っている。今回はキャンプで彼女のプレーを見られることが一番いい。平尾(知佳)や大熊(茜)に関しては、E-1で呼んでいるので、2人に関してはE-1でプレーする時間がある。今回トレーニングで見てみて、いかにチームにフィットするか、いまの日本のプレーイングスタイルを彼女には学んでほしい。今回のタイミングで呼べたことは、スタンボー選手にとってもいい機会。将来どうなるかはなんとも言えないが、今回呼べて一緒にトレーニングできることはすばらしいことだと思う」
──欧州サッカーを知るニールセン監督にとって、アウェーの地であるスペインの雰囲気をどう予想するか。
「ブラジルと同じように非常に熱いものがある。女子EURO直前ということで、非常に熱いスペインの後押しがあると思っている。スタジアムも満員になるだろう。熱狂的なファンもいる。今回は90分間で100%やっていかないと、スペインを倒すことは難しい。そういう面でもシーズン中のアメリカリーグに所属する選手にはがんばってほしい。シーズンオフの選手でも、できることをピッチ上で見せてほしいと思っている。結果を得ることが重要だと思っているので、アウェーの地で戦えることをうまく生かしながら戦っていきたい」
──MF長谷川唯がキャプテンになってから初帯同。どういうリーダーシップを見せてほしいか。
「特別なことを求めるというより、ベストを尽くしてもらいたい。ピッチ上ではコミュニケーションを取ってもらいたいし、オフ・ザ・ピッチではキャプテングループに属しているので、グループで分担しながら、オフ・ザ・ピッチでも活動してもらいたい。彼女をキャプテンとして、チームで見ることを楽しみにしている。一人のキャプテンで重荷にならないようにキャプテングループを作った。分担してお互いに助け合えるようにやっていきたい。彼女もすばらしい気持ちで臨んでくれると思うし、チームからもいいサポートを得られると思う。長谷川選手には高い期待してしまうが、シーズンオフということで、彼女ができることをやってくれると思う。それが60分しか出場時間がなかったとしても、60分のなかで100%を出してくれると思う」
──欧州組は前回のブラジル遠征からシーズンオフ。コンディション管理で求めていたことはあるか。
「明確なことは特に伝えていない。なぜかというと、1試合しかやらないということで、選手たちに100%のコンディションで来いとはいえないというのもある。選手たちも自分自身で準備したり、JFAも夢フィールドを自主練をしたい選手に開放している。選手によっては、個人のトレーナーや個人のプログラムをやっているので、そこである程度準備してくれていると思う。今回は主要な大会ではなく1試合しかないので、何か要求は特にしていない。ブラジルの遠征でも選手に伝えたが、今回のスペイン遠征はシーズン中の選手をより多く呼ぶということと、通常呼ばれていたけど呼ばない選手にも伝えた。今回呼ばれた選手はシーズンオフなので、ある程度のコンディションのなかで、最大限出してくれと伝えるし、90分出られなくても、45分から60分で交代する選手もいるかなと思っている。スタートに関しては、アメリカのリーグに所属する選手がよりスタートで出ることが多いと予測しているが、スペインに実際に集まって、選手のコンディションをチェックしないと何も言えないので、トレーニングキャンプで状態を確認したい」
──キャプテングループ(キャプテン長谷川、副キャプテン南萌華、サポート役・熊谷紗希と田中美南)を決めた経緯は。
「これは100%自分が考えたキャプテングループになる。唯一、佐々木女子委員長だけに話していた。日本のチームにとっては新しいアプローチになると思っている。なぜこういったものにするかというと、一人が非常に大きい責任を担うのは大変になる。そういった選手も必ず誰かしらの助けが必要になる。一人だと監督しか助けてあげられない可能性があるので、今回はキャプテングループにした。お互いにキャプテン内で助け合うほうが、日本に合うのではないかと考えて今回はそれにした。お互いに補完しあって、より心理的な安定も得られるかなと思っている。キャプテングループのなかでも高いレベルでプレーしていて、経験のある選手もいるので、一人だけがチームを引っ張るのではなくて、何人かでチームを引っ張るというのもある。このチームのスターは、チーム自体がスターと言っている。2011年になでしこがW杯で優勝したときも感じたが、チーム一体となって戦っていきたいということで、キャプテングループになっている」
【会見後半:7月E-1選手権】
●佐々木則夫女子委員長
「WEリーグ、そして初めて招集された選手もかなり多くいる。これでしっかりと新たな選手を発見できる。もしくはこういった経験を生かしながら、さらに今持っているプレーヤーの質を上げてもらうという意味合いも含めて、私は個人的に楽しみに感じている」
●ニルス・ニールセン監督
「今回、WEリーグの選手を選んでいるが、多くの新しい選手がいる。WEリーグで才能あるプレーをシーズン中に見せていただいたので今回選んだ。まず今回のチームでは、なでしこのプレーイングコンセプトを理解してもらう。WEリーグのチームによっては、ある程度似たようなプレーイングスタイルでやっているチームもあるので、そこに馴染みやすい選手も選んでいるし、半分くらいはすでに日本代表に選ばれてチームコンセプトに馴染みのある選手もいる。新しく入った選手が持ち込んでくれたものに、もともといた選手の経験を合わせて、非常にいいチームができると思っている。今後、主要大会で日本が成功を収めるためにも、ラージリストにいるより多くの選手が必要になる。そういう面でもE-1のチャンピオンシップは楽しみ」
──6月のスペイン遠征と7月のE-1選手権、それぞれの選考基準はあるか。
ニールセン監督「スペイン戦は、シーズン中でより動ける選手を基準に選んでいる。もちろんヨーロッパでプレーしている選手で、常々選ばれている選手に関しては、シーズンオフ中で100%のコンディションではないが、いい仕事をしてくれるだろうということで選んでいる。スペイン戦は勝ちにこだわりたいし、学んだことを生かしていきたい。E-1はWEリーグの選手から選んでいて、いかに今のなでしこのスタイルにフィットするかを基準に選んでいる。シーズン中からE-1に向けて色んな選手を見てリストを作った。今回WEリーグの選手にもいいチャンス。どの選手も個人能力が高くて、チームにフィットすると思っている。いかに勇敢に強みを最高の形で出せるかというところを楽しみにしている」
──中盤で初選出となった。MF菅野奏音、MF北村美羽、MF吉田莉胡の評価はどうか。
「スカウティングチームが情報を集めたなかで、パスの能力がすばらしいということで今回選んだ。それぞれ違いがあって、チームにフィットするのではと選んでいる。どの選手もレベルが高く、パスが上手い印象が強い。パスして動ける。パスがひとつのラインを越えていく、なでしこが目指していることを3人はやっている。クオリティが高いということで今回選んでいる。パスの能力が高いので、パスを供給して、多くのゴールをE-1を取れれば」
──前回のブラジル遠征でDF登録で招集した山本柚月が今回はFW登録となった。
「山本は、ブラジル遠征での姿勢がすばらしかった。最初は緊張しているようだったが、パフォーマンスも徐々によくなって、徐々にリラックスしてチームに馴染んでいた。彼女はパワーもスピードもあって、サイドで違いを生み出せる選手。いろんなポジションができると思っているし、前回のブラジル遠征ではSBのほうが出場時間が長いと思って起用したが、攻撃力もある選手なので、今回は前線で使おうかと思っている。それもトレーニングをしてみないとわからないので、今のところは何とも言えない」
──FW浜田芽来は普段はSBだが、今回はFW登録となった。
「ワイドプレーヤーということで、ウインガーやSB、中盤ということになっていて、なでしこのプレースタイルだとSBは攻撃性が必要になるし、ウインガーもDF力も求められる。SBとウインガーは補完する能力が必要かなと思っているので、SBで選んだりウインガーということで選んだりする。例としてはブラジル遠征で千葉玲海菜をSBとして招集して起用したが、彼女自身はなでしこでSBではなかったが、自分たちはSBとしてもできるんじゃないかなと思って試して、結果としてよかったんじゃないかなと思う。ポジションにこだわるわけではなくて、両方の力を持った選手を使いたいということで選んでいる」
──スペイン遠征からE-1選手権まで約1週間。初戦のスタメンはどのような基準で選ぶか。
「正直まだ決めていない。選手のコンディションを見てから決めたい。WEリーグもシーズンオフで、7月から新しいシーズンの準備段階になる。コンディションの状況を見て決めたい。もちろんある程度アイデアはあるが、ポジションごとに数名の選手がいるし、多くの選手が複数のポジションをできるということで、いろんな使い方ができる。ただひとつ言えることは、今までに私の指揮下になってから選ばれた選手にはチームを引っ張ってもらいたい。よりスタメンで出てもらうことになると思う」
──スペイン遠征とE-1選手権で戦い方はどう変わるか。
「ブラジル遠征では1戦目と2戦目で違いがあった。1戦目は勝つことは難しかったが、2戦目はいいゲームで勝つチャンスもあった。何が違うかというと、相手にいかに対応したかだと思う。スペインとE-1で対戦するチームは違ってくる。スペインはできるだけボールを保持してポゼッション率を高めるという支配的なゲームをしたいチーム。それに対してこちらもボールをキープしていつ攻めるか見極めて戦いたい。E-1の対戦相手はカウンターアタックを重視するチームが多い。チームとしてカウンターアタックに気をつけながら、いつしっかりと前線に飛び込むかを気にしながらやっていきたい。いくつか遠征を過ごしたので、お互い選手もスタッフもわかりあっている。私が下がれと言ったからといって、選手はただ下がることではなくて、下がりながらも機を見てプレッシャーをかけることもわかってくれている。相手を見ながら適応して、戦っていきたい」
──先ほどなでしこと似たチームがWEリーグにあると言った。具体的にどのチームか。
「日テレ・東京ヴェルディベレーザ、三菱重工浦和レッズレディース、ジェフ千葉レディースの3つが似ている。ただ、これが必ずしも選出理由ではなくて、それぞれの個人の能力、試合に対する姿勢、パフォーマンスで選んでいる。ベレーザはポゼッションを高めて動きもあり、いかに前線に絡んでいくかというのもある。浦和も似ている面もある。ジェフもボールをキープしていかにチャンスを作るかに注力している。プレーイングスタイルに当てはめて必ずしも勝てるわけではないので、アプローチを見たりするし、それがE-1の選出理由でもない」
──DF嶋田華の特長をどう捉えていて、どう起用したいか。
「プレーヤーに関しては個人能力も優れているし、複数ポジションができる選手が多い。このチームでどの役割が一番合っているか見極めながらということもあるし、いかにコンディションが整っているかということもある。もしワイドで使うなら走りが求められるのでスピード能力を見るとか、中盤ならほかの要素も求められる。もちろんWEリーグもオフシーズンなので、フィジカルコンディションを見極めて、どういう組み合わせがいいかを考えていきたい」
──初招集の選手が10人。どのようなアピールをしてほしいか。
「まず初選出の選手たちには、勇敢にプレーしてもらいたい。どの選手も個人能力が高くて、チームにフィットするかを見たいので、100%のパフォーマンスを出してもらいたい。今回の初選出というのは光り輝く必要はなく、チームのために何ができるかを示す機会だと思っている、それをしっかりと見せてもらいたい。勇敢にプレーすることでチームに別のものをもたらせるのではないかということをE-1で見せてほしい。しっかりゲーム中に落ち着いて、集中力を持ってプレーしているところも見せたもらいたい。終わった後にしっかりと評価したい」
(取材・文 石川祐介)
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