きっかけは、テイラー・スウィフトのファンによる警鐘だった。米大統領選の余波がインターネットを駆け巡った先週、テイラー・スウィフトのファンたちが立ち上がった。彼らは次々とXを離れ、Blueskyへと移行していったのだ。あるスウィフティーが『WIRED』に語ったように、そこでは「イーロン(・マスク)への支援を一切しない」新たなコミュニティを構築できる。こう思ったのはスウィフティーたちだけではなかった。
ドナルド・トランプがカマラ・ハリス副大統領を破って大統領選に勝利して以来、1週間で多くの出来事が起きた。オンラインで多くの時間を過ごす人々にとって、特に注目を集めたのが、Xのオーナーであるイーロン・マスクと次期大統領との関係だ。マスクは自身のプラットフォームを活用してトランプの選挙運動を支援してきた。
Xに不満をもつ人の避難所
12日、トランプは、まだ設立されていない新設の「政府効率化省(DOGE)」のトップのひとりにマスクを指名。同日、Blueskyは1週間で100万人の新規ユーザーを獲得したと発表し、さらに13日には24時間で追加の100万人を獲得したと報告した。
Blueskyに新たに参加した人々は、必ずしもスウィフトのファンだけではないが、インターネット文化の特定の層を代表している。マスクとトランプのつながりや、Xの運営方針に不満を抱き、ついにオンライン上の生活拠点を移すことを決意した人々だ。
2023年のサービス開始以来、Blueskyは「自由でカジュアル」な場として知られてきたが、この2カ月間で様変わりした。『Slate』が指摘したように、ニュースの共有やライブイベントを追うのに適したプラットフォームへと進化し、“左派寄りTwitter難民”の避難所となっている。
ビザが不要な移住
かつての米国人は、支持する候補者が落選した場合「カナダに移住する」と誓っていた(まるでそれが簡単にできるかのように)。しかしいまでは、新しいプラットフォームに活動の場を移すだけで済む。賃貸契約を解約したり家を売却したりする必要はなく、新しいアカウント名とともに「Blueskyでフォローしてね」と投稿するだけでいい。
新しい環境の住人が気に入らなくても心配はいらない。Blueskyには完全なブロック機能があり、ユーザーは望まない相手からのあらゆる接触を確実に遮断できる。 インターネットは基本的にボーダーレスであることを誇りにしてきた。確かにファイアウォールや言語の壁、そのほかの障壁は存在するものの、ウェブはいまでも、実際の移動よりもはるかに早く情報や物語を世界中に届けることができる。ビザも不要だ。
しかし、その誇りは必ずしも言葉通りにならなかった。ゲイトキーパーやトロール、荒らしは常に存在する。マスクはXを公共広場のような場にしたいと考えたが、そこにアクセスするにはインターネットに接続されたデバイスが必要で、さらには侮辱的な言葉を避けながら利用する準備も必要だった。オンライン上でも排他的な主張は後を絶たない。そのプラットフォームで“地元民”を名乗れるかどうかは、往々にしてその場を支配する多数派によって決められる。インターネットのカナダとも言えるBlueskyに移住することはできるが、どんな荷物を持ち込むかには注意が必要なのだ。
トランプの再選によって、インターネット上の境界線が引き直されることになった。新規ユーザーはXに定着するかもしれないが、長年のユーザーは離れる傾向にある。同様に、BookTok(TikTokの読書コミュニティ)の利用者の中には、別の場所で本の話題を共有したり(アマゾン傘下のGoodreadsに代わってStoryGraphが人気を集めていると聞く)、あるいは別のコンテンツを楽しんだりする人々も出てきている。政治的な対立は出会い系アプリにまで影響を及ぼしているという話もある。

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