米アップルは9日から年次ソフトウエア開発者会議を開き、主要幹部らが技術開発を巡る現状や戦略を説明する予定となっている。写真は2024年6月、年次イベントの世界開発者会議(WWDC)に出席したティム・クック最高経営責任者(CEO)。(2025年 ロイター/Carlos Barria)
[クパチーノ(米カリフォルニア州) 9日 ロイター] – 米アップル(AAPL.O), opens new tabは9日に開催した年次ソフトウエア開発者会議で、同社独自の生成人工知能(AI)システム「アップルインテリジェンス」に使用する基盤技術を開放すると明らかにした。基本ソフト(OS)の大幅な刷新も発表した。
基調講演は、競合他社が掲げるAIの活用を巡る壮大なビジョンとは対照的に、電話での同時通訳機能など、日常生活に有用な機能改善に焦点を当てた内容となった。
インベスティング・ドット・コムのシニアアナリスト、トーマス・モンテイロ氏は「アップルがAI分野で何らかの主導権を握る能力に市場が疑問を呈している今、発表された機能はせいぜい漸進的なものだと感じた」と述べた。
イベント開始前には横ばいだったアップルの株価は1.2%安で引けた。
同社のソフトウエア部門トップ、クレイグ・フェデリギ氏は、自社の一部機能に使用している基礎的AIモデルをサードパーティー(第三者)の開発者に開放すると発表。音声アシスタント「Siri(シリ)」の改良など、一部機能の提供遅延の理由について、「高い品質基準を満たすためにさらに時間が必要だった」と説明した。
フェデリギ氏はまた、全てのOSデザインの全面的な見直しも計画していると説明。新たなデザインでは透過性を持つ「リキッドグラス」と呼ばれるデザインが特徴になるとした。
アップルはAI技術の開発競争での遅れが鮮明になっている。
事業運営に関しても、アップルを取り巻く状況は厳しくなっている。アップルのアプリ市場「アップストア」で課す手数料が正当性を欠いているといった指摘が出ており、米国や欧州連合(EU)の競争当局などがアップルの事業モデルを巡って、相次いで司法判断を仰ぐ状況になっている。
さらにトランプ米政権が米国外でつくられた「iPhone」に25%の関税を課すといった懸念も生じている。
AI機能に関しては、アップルが昨年公表したツールもあるが、対話型人工知能(AI)「チャットGPT」を開発した米オープンAIなどに依存する状況が続いている。
アップルは、画像や音声、言語を同時に処理できる「マルチモーダル」と呼ばれるモデルの開発で出遅れているとされている。マルチモーダルは、アップルのヘッドセット「ビジョンプロ」よりはるかに軽量で安価なスマートグラスに応用できる可能性があるが、今回の開発者会議で発表される可能性は低いとみられている。この分野はメタ・プラットフォームズ(META.O), opens new tabがリードし、グーグル(GOOGL.O), opens new tabが追い上げているとされる。ただ消費者が商品購入の際にどの程度AI機能を重視するかは一概には言えない、との指摘もある。
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