トヨタ自動車の豊田章男会長は豊田自動織機に対する株式公開買い付け(TOB)について、自動車業界が激動期を迎える中で創業家が責任者として先導する狙いがあり、創業家による支配が目的ではないと述べた。
豊田氏は6日に自社メディアに配信された動画で、3日に公表したトヨタやトヨタグループの会社などによるTOB計画について「資本の論理でどうのこうのというわけじゃない」と創業家による支配との見方を否定。電気自動車やソフトウエア化などで自動車業界が大きく変化している中で、創業家の名前を持った人が前面に立って「トヨタらしさ」を取り戻す狙いがあったとした。
買い付け価格が低いとして一部の投資家から不満が出ていることについて問われると、豊田氏は長期保有の株主が「会社を発展させていくパートナーと思っている」と述べ、4月に最初の事前報道が出る前の株価との比較の観点では長期の株主にはプレミアムが付与されているとの考えを示した。
3日に豊田織の買収・非公開化を発表したトヨタなどは1株当たり1万6300円での買い付けを予定している。発表直前の株価を約11%下回る水準で市場からは失望の声が上がり、株価も急落。一方、アクティビスト(物言う株主)として知られる香港のヘッジファンド、オアシス・マネジメントがトヨタと豊田織の株式保有と価格引き上げを求める方針を明らかにしており、トヨタグループ側の対応が注目されていた。
豊田氏は自身を権力者と呼ぶ人がいるとした上で、自分のやることが全部正しいとは思わないが「行動しなければ未来は作っていけない」と主張。何のために権力を使うかも含めて今後ステークホルダーが監視して判断を下すことが重要と話した。トヨタの持ち株会社化の可能性についてはないと思うと述べた。