3日投開票の韓国大統領選では、各候補が暗号資産(仮想通貨)に前向きな政策を掲げており、選挙後は誰が大統領になろうとも暗号資産の業界は恩恵を受ける見通しとなっている。
韓国では約1800万人が暗号資産に手を出しているとされ、世界で最も活発かつ熱狂的な市場の一つとなっている。暗号資産の取引高が韓国総合株価指数(KOSPI)とKOSDAQ指数を上回ることもあり、存在感が日増しに高まっている。
最大野党「共に民主党」の候補で世論調査でリードしている李在明氏と、保守系与党「国民の力」の金文洙候補は、いずれも暗号資産に前向きで規制緩和と暗号資産へのアクセス拡大を公約として掲げている。
李在明氏(左)と金文洙氏
Photographer: SeongJoon Cho/Bloomberg
韓国では昨年、暗号資産業界の規制が強化されたが、それでも韓国銀行のデータによると、2024年末時点で韓国国内に保有されている暗号資産の総額は、約104兆ウォン(約11兆円)にのぼる。
ソウルに拠点を置くベンチャーキャピタル「ハッシュド・ベンチャーズ」のサイモン・ソジュン・キム最高経営責任者(CEO)は「主要な候補者すべてが暗号資産に前向きな政策を支持しているため、選挙の結果にかかわらず投資家は恩恵を受ける」と話す。22年の大統領選でも2大政党が暗号資産の発展を支持していた。
22年の選挙で僅差で敗北した李氏は、暗号資産の現物型上場投資信託(ETF)の合法化や、8840億ドル(約127兆円)規模の年金基金による暗号資産への投資解禁などを提案している。選挙戦の保守派ライバルも同じく暗号資産のETFを支持しており、珍しく与野党の足並みがそろっている状況だ。
しかし、一部の政策には国内で反発が出ている。李氏は、金融システムの近代化と資本流出の抑制を目的として、韓国ウォンに連動するステーブルコインの発行拡大を打ち出している。ステーブルコインは、米ドルなどの資産に連動する暗号資産で、米国議会では関連の法案が提出されている。
韓国銀行(中央銀行)の李昌鏞総裁は5月29日の記者会見で、非銀行機関が発行するステーブルコインは金融政策の有効性を著しく損なうとして、ウォン建てステーブルコインの発行は中央銀行が担うべきだと述べた。
韓国の暗号資産交換業者から25年第1四半期に計56兆8100億ウォンが流出しており、その約半分がテザー(USDT)やサークルのUSDCなど米ドル連動型ステーブルコインに関連していたと、ある国会議員が規制当局のデータを引用して今月明らかにした。
韓国の仮想通貨業界は、ステーブルコイン関連で過去に大きな失敗を経験している。22年には、韓国人のクォン・ドヒョン被告が主導したステーブルコイン「テラUSD(UST)」が崩壊し、わずか数日で400億ドルもの資産が消失した。詐欺罪で起訴されたクォン被告は来年、米国で法廷に立つ予定だ。
テラUSDの事態を受け、韓国では「暗号資産利用者保護法」が可決され、24年7月から施行された。暗号資産交換業者には、顧客資産の分別管理などが義務付けられ、犯罪行為には最高で終身刑が科される可能性がある。
原題:South Korea Crypto Industry to Gain No Matter Who Wins Election(抜粋)