5月23日、米国の牛肉価格が高騰している。牛の飼育頭数はトルーマン政権時代以来最小規模にまで縮小し、夏のバーベキューシーズンを前に価格が上昇している。テキサス州ストウェルで2018年6月撮影(2025年 ロイター/Jonathan Bachman)
[ニューヨーク 23日 ロイター BREAKINGVIEWS] – 米国の牛肉価格が高騰している。牛の飼育頭数はトルーマン政権時代以来最小規模にまで縮小し、夏のバーベキューシーズンを前に価格が上昇している。ハンバーガーやステーキのレストランが苦戦する中、鶏肉がタンパク質市場でシェアを奪いつつある。
これは異例の事態だ。米農務省のデータによると、生牛価格は先週1ポンドあたり2.26ドル(約323円)に達した。価格は今年に入って20%上昇しており、2024年のほとんどの生産物の上昇率を上回っている。牛ひき肉の平均価格も3月に1ポンドあたり5.69ドルと過去最高を記録した。節約志向の強い消費者は、価格上昇を受け入れるか、より安価な代替品を探すかの選択を迫られている。鶏肉は豚肉、大豆、その他のニッチな選択肢に対して圧倒的に優位に立っている。
牛肉の供給量は確かに大きく減っている。長年にわたる厳しい干ばつにより、米国の放牧地は壊滅的な打撃を受け、牧場経営者は牛の減頭を余儀なくされている。農務省によると、1月に確認された牛の頭数は8700万頭で、1951年以来の最低記録となった。輸入頭数は2013年以降倍増しているが、トランプ大統領によるブラジルなどへの関税措置により、輸入量は減少する可能性がある。きょう生まれる牛が食卓に並ぶのは28年以降となるため、厳しい状況が待ち受けている。
食肉加工大手タイソン・フーズは苦境に立たされている。ドニー・キング最高経営責任者(CEO)は、同社の90年の歴史の中で最も厳しい牛肉市場だと述べ、第2・四半期の牛肉部門の損失が2億6000万ドルに達したとした。一方、鶏肉の売上増加により、200億ドル規模の同社の最終利益はウォール街の予想を上回った。
ステーキハウスも肉の価格高騰に直面している。130億ドル規模のステーキハウスのチェーン店、テキサス・ロードハウスは、牛肉価格の高騰が足かせになり始めていると指摘した。店舗レベルの利益率は今年最初の3カ月で1ポイント近く低下し、16.6%となった。同社は今年のコストインフレ率の予想を2─3%から4%に引き上げた。
今後は鶏肉が市場を席巻するだろう。公式データによると、米国の消費者は2023年に一人当たり平均約45キロの食肉用鶏肉を消費した。これは牛肉と豚肉を合わせた量にほぼ匹敵する。鶏肉は生産サイクルが約10週間と短いため、生産者は供給量の調整をより容易に行うことができ、需要が急増しても価格を安定させやすい。
投資家がこの恩恵を享受できるかどうかはまた別の問題だ。マクドナルドのようなファストフード店はメニューを刷新できるかもしれない。多くの食肉加工業者も事業を多角化している。テキサス・ロードハウスのバリュエーションは低下しているものの、株価は過去1年間で依然として14%上昇しており、ベンチマークとなるS&P500を上回っている。ビジブル・アルファのデータによると、チキンウィングチェーンのウィングストップは既に2026年の予想利益の75倍で取引されているが、成長が期待できるビジネスだ。
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筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。