5月30日、トランプ米政権との関税交渉を巡り、赤沢亮正経済再生相が4度目の閣僚級協議に臨む。写真は日米両国の旗。2024年4月、ワシントンで撮影(2025年 ロイター/Kevin Lamarque)
[東京 30日 ロイター] – トランプ米政権との関税交渉を巡り、赤沢亮正経済再生相が4度目の閣僚級協議に臨む。キーパーソンであるベセント財務長官を交えた協議を通じて一致点を見出したい考えだが、政府内には今回の交渉でトランプ大統領が納得するパッケージにまとめ上げるのは難しいとの見方が多い。様々な交渉カードが浮上する中、米国の貿易赤字縮小をアピールできる防衛装備品の購入などが焦点となる可能性もある。
赤沢氏は先週の3度目の閣僚級協議でラトニック商務長官、グリア米国通商代表部(USTR)代表と個別に意見交換を行ったが、大統領が交渉のカウンターパートに指名しているべセント氏は不在で会談できなかった。政府内には日本側の主張がきちんと理解されていないのでは、との懸念がある。
今回、赤沢氏は「べセント財務長官と必ず会いたい」と強調。米国側の取りまとめ役となるべセント氏が入る協議で日本側の考え方を改めて示した上で米国側の意見を集約し、見極めたい考えだ。
交渉では、引き続き1)両国間の貿易拡大、2)非関税障壁措置の見直し、3)経済安全保障面での協力──の中で材料を準備するが、防衛装備品の購入が一つの焦点となる可能性がある。
赤沢氏は「安全保障と関税・通商政策は理屈や物差しが違う。それを混ぜて交渉することは不適切」とする一方、防衛装備品の購入は米国側の貿易黒字が積み上がるため、「若干視野に入るかと言われれば入り得るもの」と柔軟さもにじませる。
このほか、トウモロコシと大豆の輸入拡大、自動車の認証問題緩和、砕氷船なども含めた造船分野の協力などがカードになるとみられる。レアアースや半導体の供給網強化で協力策を提案する方向との報道も一部に出ている。
<日鉄の買収案件、アピールになる可能性>
関税交渉と並行して注目されているのが、日本製鉄(5401.T), opens new tabによるUSスチール(X.N), opens new tabの買収計画だ。日本側は同案件を「関税とは基本的に切り離している」(政府関係者)としながらも、米国内での雇用創出や投資拡大という点で「政治的にアピール材料になり得る」(経済官庁幹部)との声もある。
首相周辺の一人は「高品質の鉄が米国で作れるようになれば、自動車や船などトランプ氏が重視する産業の底上げにもつながる」との見方を示す。
日米関税交渉は貿易赤字、経済安全保障、産業構造の再編といった複数の要素が複雑に絡み合う。現役閣僚の一人は「普通は何カ月もかけてやる仕事。交渉事なので確定的なことが言えないが、肌感覚では4度目の協議でも大筋合意には至らない」との見方を示す。
別の日本政府関係者も「最終的にはトランプ大統領の判断だが、どこまで行ったら納得するか、米国側の交渉担当者も大統領の心中を推し量れていないようだ」と指摘。前出の閣僚は「べセント氏のレベルで折り合えても大統領がNGという場合もあるかもしれない」と警戒姿勢を崩さない。
29日夜のトランプ大統領との電話首脳会談後、石破茂首相はカナダで6月に開かれるG7サミット前の対面会談の可能性にも触れた。これを受けて赤沢氏は30日朝(日本時間)、米ワシントンで記者団に対し、サミットまであと2週間ちょっとでそれほど余裕があるわけではないと指摘。「今回の協議の進み具合によっては可能性として絶対ないわけではないが、時間的に相当タイトになってきている」と語った。
杉山健太郎 編集:石田仁志
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