米ゴールドマン・サックス・グループのロイド・ブランクファイン前最高経営責任者(CEO)は母校のハーバード大学について、「米国の大学であるがゆえに外国人学生を引きつけている機関だ」と語る。

  ハーバード大学長にも同様のメッセージを昨年伝えたブランクファイン氏は、同大が公共の利益のために働く米国の象徴的存在であることを明確に打ち出さなければ、批判的な勢力がそれとは正反対の主張を展開するとして、攻撃に備えるよう呼びかけていた。

  それからほぼ1年後、ホワイトハウスはまさにその方向に動いている。

  トランプ政権は、アイビーリーグの名門大学を保守的価値観に対して偏見を持ち、反ユダヤ主義に寛容で、米国の利益を損ねてまで世界のエリートが好む思想を推進するイデオロギー的に偏った存在として描いている。

  トランプ大統領は、有名大学の財務を標的とした一連の措置を通じて、自らの保護主義的な「米国第一主義」路線をこうした教育機関にも適用しようとしている。

  政権は最近、ハーバード大の外国人留学生受け入れ資格を取り消す動きに出たほか、全世界の米大使館に対し、留学希望者のビザ(査証)面接の新規受け付けを停止するよう指示した。さらに、ルビオ米国務長官は28日、中国共産党とつながりがあったり、重要分野で研究を行ったりしている中国人留学生のビザを取り消す方針を明らかにした。

  授業料を全額負担するケースが多い外国人留学生が減れば、アイビーリーグや規模の大きい州立大学、小規模のリベラルアーツ大学を含む高等教育全般に打撃を与えるが、特に私立の名門大学ほど影響が大きい。

  米下院共和党は今月、大学の寄付基金に対する課税の大幅引き上げを盛り込んだ法案を可決した。課税方法の変更により、外国人留学生が多い裕福な大学が不利になる内容となっている。

  2022-23年度の連邦政府データをブルームバーグが分析したところ、最も豊富な寄付基金を持つ150大学の外国人留学生比率は15%と全米の大学全体に比べて高かった。コロンビア大は学部・大学院の約40%、ハーバード大やコーネル大、デューク大、スタンフォード大は25%前後を占めた。

Day Three Of The World Economic Forum (WEF) 2018

ロイド・ブランクファイン氏

Photographer: Simon Dawson/Bloomberg

  ブランクファイン氏は、ハーバード大での外国人留学生の受け入れを禁じようとする動きについて、同氏の母校の財務への圧力を狙うトランプ氏の広範なイデオロギーキャンペーンの一環だと見なしている。

  「これはハーバード大を屈服させるための新たな手段に過ぎない。政権がハーバード大の電気や水を止められるなら、恐らくそうするだろう」と同氏は語った。

  政権は、大学攻撃の主たる標的としてハーバードに狙いを定めている。ホワイトハウスは同大学への連邦研究資金26億ドル(約3800億円)超を凍結し、今後の助成金も停止している。

  トランプ氏はこれまでにもハーバード大の非課税資格を剝奪すべきだと繰り返し主張しており、政権は27日に、残っていた全ての連邦契約の打ち切りに動いた。

  米国の大学は財政的圧力に対応し、支出を抑制したり一部の研究プロジェクトを縮小したりする措置を講じている。しかし、外国人留学生の受け入れが封じられれば、予算への打撃だけでなく、学生構成そのものが変化しかねず、米国の高等教育の本質を根本から揺るがす恐れがある。

  法律事務所フラゴメンのパートナーで移民法を専門とするダニエル・ピアース氏は「多くの機関は、国際的な視野をキャンパスにもたらすことに加え、財政的な安定の面でも外国人留学生に依存している」と話す。「こうした大学は今、政府からの重大な要求に迅速に応じるか、それとも法廷闘争に備えるかという困難な選択を迫られている」という。

  影響は学術の領域にとどまらない。外国人留学生の大多数は理系を専攻し、卒業後にウォール街やシリコンバレーなどでの就業許可取得を目指す。

  インド準備銀行(中央銀行)の総裁を務め現在はシカゴ大学経営大学院教授のラグラム・ラジャン氏は、外国人留学生の存在は米国にイノベーションと経済的リーダーシップをもたらす上で寄与してきたが、トランプ政権の政策によってその強みが失われる恐れがあると語った。

原題:Harvard’s Identity Is Under Threat as Trump Curbs Student Visas (1)(抜粋)

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