EXCLUSIVE-トヨタ、北米向け「GRカローラ」を英で生産へ 納期短縮=関係筋

 5月27日、トヨタ自動車は、スポーツカー「GRカローラ」の北米向け生産を日本から英国へ移す方針を固めた。写真はGRヤリス、世界ラリー選手権のサファリ・ラリー・ケニアで3月撮影(2025年 ロイター/Thomas Mukoya)

[東京 27日 ロイター] – トヨタ自動車(7203.T), opens new tabは、スポーツカー「GRカローラ」の北米向け生産を日本から英国へ移す方針を固めた。世界的に車好きの間で人気が高く、特に北米で納期が長くなっていることから、増産が可能な余力のある英国の工場を活用する。事情に詳しい関係者2人が明らかにした。

英国中部ダービーシャー県のバーナストン工場に約80億円を投じて専用ラインを設置。2026年半ばから年間1万台を生産し、北米へ輸出する。生産技術やノウハウを移すため、日本から生産技術者を一時的に派遣する。

スポーツカーブランド「GRシリーズ」の主力であるGRカローラは元町工場(愛知県豊田市)内にある専用ラインで生産しているが、関係者らによると、国内外の需要に対応するためフル稼働が続いている。米国で現地生産すればトランプ米大統領の関税回避につながるが、同国の拠点もハイブリッド車などの生産で稼働率が高く、GRカローラの生産は難しい状態にある。

一方、英国のバーナストン工場は1992年に稼働し、高い生産技術を蓄積してきたが、同国が欧州連合(EU)を離脱(ブレグジット)した20年前後から生産が低迷。17年に新規投資を発表した際の生産能力は約18万台だったが、昨年の生産実績は10万台を下回った。同工場はGRカローラのベース車「カローラ・ハッチバック(日本名:カローラスポーツ)」を生産していることもあり、「白羽の矢が立った」と関係者の1人は話す。

英国は5月上旬、トランプ政権との間で自動車関税を年間10万台まで27.5%から10%へ引き下げることで合意した。同関税の撤廃を求める日本は、米国との交渉を続けている。

同関係者らによると、GRカローラの北米向け生産を日本から英国へ移すにあたっては、米国関税政策を考慮しなかった。日本から米国への輸出、英国から米国への輸出のどちらの場合も、関税によるコスト上昇分は原価低減などで吸収し、値上げはしないとしている。

トヨタ広報はロイターの取材内容に対し「当社が公表したものではない」とし、「常に最適な生産体制を検討している」と述べた。

GRシリーズは豊田章男会長がドライバー「モリゾウ」として取り組むモータースポーツ活動から生まれたブランドで、レースで培った技術やノウハウを投入した市販車。現在は「GRヤリス」など3車種を手掛ける専用ラインの24年の生産実績は約2万5000台で、このうちGRカローラは約8000台だった。

GRカローラの価格は、標準のカローラの約2倍に当たる600万円程度。電動化や自動運転で自動車の利便性が高まる一方、アクセルを踏んだときのエンジンの反応やハンドルを切ったときの操舵感覚など、運転に楽しさを求める層も存在する。

「こだわるユーザーの多いスポーツカーは付加価値が高く、販売台数がそれほど多くなくても利益貢献がある」と関係者の1人は語る。GRカローラは手作業の工程が多く、標準車より生産に時間と手間がかかるため、関係者の1人によると、北米向けは納車に数カ月かかっている。北米向けを英国に移した後も、元町の専用ラインは日本向けのほか、北米以外の海外向けに生産を続ける。

(白木真紀 編集:久保信博、David Dolan)

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab

Write A Comment