昨年1月、38歳の若さでこの世を去った横山知伸(とものぶ)さん。病を克服しながらJリーグで活躍した不屈の闘志は、いまも色褪せることはない。サッカーに情熱を注いだ故人の想いは、教え子の夢につながっていた【NumberWebノンフィクション全3回の3回目/第1回から読む】

 ユニフォームがはち切れんばかりの胸板は、テクニシャン集団の中では少し異質に見える。

 帝京長岡高校のキャプテン、守備の要として活躍する桑原脩斗(しゅうと)を支えているのは北海道コンサドーレ札幌U-15時代から築き上げてきたフィジカルである。その礎となったのが、昨年1月に38歳の若さでこの世を去った横山知伸さんとのトレーニングだった。

「ヨコさんは優しかったけど、トレーニングに関しては本当に厳しい人でした。僕が途中でちょっとフォームをごまかした時も絶対に見逃さず、『もう一回』と妥協を許さなかった。実際に現役を終えたばかりのヨコさんの身体はそれまで見たことがないほど凄まじく、僕もそうなりたいとヨコさんの姿勢を見習い続けています」

 横山さんは現役引退後の2020年から札幌U-15のフィジカルコーチとして、金の卵たちを指導していた。中学3年間を横山さんの指導を受けてトレーニングに目覚め、将来の目標をトレーナーに定めた桑原は、恩人である横山さんの訃報を受けて気持ちを新たにしたという。

 昨年に読んだ本はぜんぶで9冊。そこには横山さんが手にしていたような分厚い参考書もたくさんある。

「いまは筑波大学の准教授の方の本を読んでひたすら解剖学を勉強しています。どうやったらどの筋肉が動くのか、どの筋肉がどの動作に影響をしているのか。ヨコさんもたくさんの本を読んでいた。僕も、講座とか受ける時間がない分、とにかく多くの本を読んで学んでいます」

Write A Comment