トランプ米大統領が6週間後に50%の関税を発動するとしている中、欧州連合(EU)は、米国との貿易交渉の加速を図っている。

  事情に詳しい関係者によると、EUの執行機関、欧州委員会は、関税や非関税障壁だけでなく、鉄鋼や半導体、医薬品など重要分野にも焦点を当てた新たな戦略を打ち出す方針だ。また、規則の簡素化と連動させ、規制による障壁にも対応するという。

  匿名を条件として話した関係者によると、シェフチョビッチ欧州委員(通商担当)が、鉄鋼、自動車、医薬品、半導体、民間航空機などの産業に関する政治的交渉を主導する。交渉は、関税や非関税障壁に関する実務的な協議と並行して行われる。

  関係者らによると、規制や税制に関してEUの自主性を損なうような、米国の一方的な要求は、引き続き譲れない一線となる可能性が高い。

  トランプ氏は先週、EUが交渉を遅らせ、訴訟や規制で米企業を不当に標的としているとして、6月1日からEUに対し50%の関税を課すと発言した。だが、フォンデアライエン欧州委員会委員長が25日の電話会談で、協議の早期化に同意したため、発動期限は7月9日に延長された。

  欧州委員会の報道官はコメントを拒否した。

トランプ米大統領は、フォンデアライエン欧州委員長との電話会談後、EUに対する50%の関税発動期限を7月9日まで延長すると表明した

Source: Bloomberg

  関係者によると、シェフチョビッチ氏は26日、米国のラトニック商務長官、グリア通商代表部(USTR)代表と電話会談し、加盟国に議論の概要を説明した。

  シェフチョビッチ氏が重点的交渉に取り組む産業は、すでに米国の関税の対象となっているか、将来的な課税対象とされる分野だ。ブルームバーグは、EUが先週、こうした分野での米国との協力強化を提案したと報じた。

  EUは先週、米国に対し、多くの産品の関税を相互に引き下げ、世界的な課題や相互投資、戦略的購入についての協力を提案したが、米側に拒否された上、トランプ氏は関税引き上げの意向を示すことになった。

  EUと米国の交渉は難航しており、妥協点を見つける明確な道筋は立っていない。欧州側は、米側が何を望んでいるかや、トランプ氏の代弁者が誰なのか、不明確なことに不満を持っている。

  関係者によると、EUはトランプ政権との協議を続けつつ、交渉が満足のいく結果に至らなかった場合に備え、対抗措置の準備も進める。

トランプ米大統領は各国との通商交渉を続けている

Source: Bloomberg

  一部加盟国は、トランプ氏が半導体や医薬品分野などでさらなる措置を取る可能性に備え、追加の対抗措置を用意するようEUに要請している。

  関係者らによると、多くのEU当局者や加盟国は、トランプ関税の多くが維持され、良好な合意に至る可能性はなお低いと考えている。

原題:EU to Focus on Critical Sectors in Bid to Avoid Trump’s Tariffs(抜粋)

 

(詳細を加え更新します)

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