アジア安保会議、トランプ米政権の不確実性やウクライナ戦闘を議論へ

 シンガポールで31日に始まるアジア安全保障会議(シャングリラ会合)では、トランプ米政権の安全保障政策を巡る不確実性のアジアと欧州への影響、ウクライナで長引く戦闘、そしてインドとパキスタンの緊張再燃などが議論されることになりそうだ。写真は、下院共和党委員会の会議の日に取材を受けるトランプ大統領。5月20日、ワシントンで撮影(2025年 ロイター/Ken Cedeno)

[シンガポール 26日 ロイター] – シンガポールで31日に始まるアジア安全保障会議(シャングリラ会合)では、トランプ米政権の安全保障政策を巡る不確実性のアジアと欧州への影響、ウクライナで長引く戦闘、そしてインドとパキスタンの緊張再燃などが議論されることになりそうだ。期間は6月1日までの2日間。

世界各国の国防相、軍事・安全保障担当の高官、外交官、アナリスト、兵器メーカー関係者らが参加する。開幕前日の今月30日の夜にフランスのマクロン大統領が基調講演し、31日にヘグセス米国防長官がトランプ政権のインド太平洋地域の防衛政策のビジョンを発表する。

ヘグセス氏の発言は、アジアの同盟国から注視されそうだ。それはヘグセス氏のアジア諸国に対するアプローチだけでなく、トランプ政権が中国の軍事増強の脅威や、東アジアの係争海域で緊張が続いていることをどのように捉え、表現するかも注目されるからだ。

アナリストらは米中間の競争、南シナ海のような海洋紛争、防衛協力を巡る発言も鍵を握ると予想している。

シンガポールのシンクタンク、ISEAS―ユソフ・イシャク研究所の地域安全保障エキスパート、イアン・ストーリー氏は「各国代表者は、ヘグセス氏が地域の安全保障に対する米国のコミットメントを改めて表明するのを聞きたいだろう」とし、「欧州とは異なり、米国がインド太平洋地域での戦力を縮小するという不吉な予感はない」と語った。

今回はマレーシアのアンワル首相が登壇する特別セッションも設けられた。

<非公式会合>

アナリストや外交官らによると、会合では他ではめったに見られないような議論が交わされる場合が多く、より慎重な二国間・多国間協議の機会が設けられることもある。

しかし、非公式の協議のためロシアによるウクライナ侵攻に終止符を打ったり、インドとパキスタンの間の紛争解決に向けて突破口が開かれたりする可能性は低い。

外交官らによると、出席するインドとパキスタンの代表は政府の閣僚ではなく、軍高官になる可能性が高く、事態打開は期待できない見通しだ。

シンガポールのS・ラジャラトナム国際問題研究大学院の安全保障が専門の研究者コリン・コー氏は、南シナ海のような複数の東南アジア諸国と中国が関与する難しい問題では、各国がそれぞれの国益を優先するため合意することが難しくなる可能性があると指摘。トランプ米政権による輸入関税の引き上げが、これらの国々を多国間交渉よりも二国間交渉に向かわせ、結果としてより不統一のアプローチとなり、中国の術中にはまることになるとの見方を示した。

また、米国は過去10年間にインド太平洋で実施してきた軍事演習をトランプ政権下でも続けるとの見方を表明した。

これに対し、シンガポール国立大の政治学者ジャ・イアン・チョン氏は、ここ数カ月間で「限界を超えた」ようにみえる中国の海洋行動に対して米国がどのように対応するかが重要だと話す。中国は、朝鮮半島の間にある黄海(韓国は西海と呼称)で建造物を設けたり、2月にオーストラリアとニュージーランドの間のタスマン海で実弾演習を急きょ実施したりした。

チャン氏は「もしも(米国が)過度に強い反応を示せば、エスカレートする可能性がある」とし、現在のトランプ米政権は予測不可能なため、いかなる発言も実行に移すかどうかを見極めるのは難しいと言及した。

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