欧州全般でバンカーが手配した債券発行が、年初からの累計で史上最速ペースで1兆ユーロ(約163兆円)を突破した。トランプ米政権による大規模な関税発表後、一時的に市場が停止したにもかかわらず、起債活動は活発だ。

  ブルームバーグがまとめたデータによると、ユーロ・ポンド・ドルの公社債を含む欧州の公開シンジケート債市場における起債額は、20日に年初来で1兆ユーロに到達。これまで最速だった昨年より9日早かった。

  今週は、デンマークの製薬大手ノボノルディスクとドイツのシーメンスの取引が市場をけん引している。

  三菱UFJフィナンシャル・グループの欧州・中東・アフリカ(EMEA)資本市場共同責任者ファビアナ・デルカント氏は、トランプ大統領が大規模な関税措置を発表した4月2日以後に「発行が停止したことは、市場のチャンスが短命であることをあらためて示した。今はユーロの資金調達を行う好機だ」と語った。

  それぞれの年の1兆ユーロ達成日は以下の通り。

2025年:5月20日2024年:5月29日2023年:6月26日2022年:9月9日2021年:6月29日2020年:6月9日

  デルカント氏は「市場がどのように取引を吸収しているかや申込倍率の高さ、流通市場でのスプレッド縮小など全てが、マーケットが非常にうまく機能していることを物語っている」とも述べた。

  ブルームバーグが収集・分析したデータによると、今月の投資家需要は債券発行額の3.69倍に達している。ドイツ政府の案件などが特に人気だという。

  20日には少なくとも26の借り手が欧州の公開シンジケート債市場で起債し、その中にはノボノルディスクによる5本立ての案件も含まれていた。取引を知る関係者が匿名を条件に話した。

  世界全体でも今年は債券発行が活発だ。先月の米国による関税発表でグローバル市場が混乱し、一時的に起債が停止した後も、その勢いは止まっていない。

  それ以後、市場は持ち直しているが、米国の一部借り手はムーディーズによる米国の信用格付け引き下げを受け、19日に予定していた取引を見送った。

原題:Bond Sales Run Out of Europe Exceed €1 Trillion in Record Time (抜粋)

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