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(国際ジャーナリスト・木村正人)
3年連続景気後退の恐れ
[ロンドン発]ドイツ政府は4月、今年の実質国内総生産(GDP)成長率見通しを1月時点の0.3%からゼロに下方修正した。輸出頼みのドイツは米中対立とウクライナ戦争による外需低迷、競争力低下に加え、ドナルド・トランプ米大統領の貿易戦争により深刻な打撃を受けている。
ドイツの実質GDP成長率は2023年マイナス0.3%、昨年もマイナス0.2%。1950年以来初の3年連続景気後退に陥る恐れすらある。今年の失業率は昨年の6%から0.3ポイント上昇するものの、インフレ率は2.2%から2.0%に、来年は1.9%に鈍化する見通しだ。
国際通貨基金(IMF)もドイツ経済の成長見通しを従来の0.3%からゼロに下方修正、来年についても1.1%から0.9%に引き下げたばかり。トランプ氏は欧州連合(EU)に対し20%の相互関税を発表したが、90日間の猶予措置として10%の最低基本関税が適用されている。
中道右派キリスト教民主同盟(CDU)党首のフリードリヒ・メルツ氏。5月6日にドイツの新首相に選出された(写真:ロイター/アフロ)
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ドイツの新首相に選出されることを見越し、2月の総選挙で首位となった中道右派のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)のフリードリヒ・メルツCDU党首は経済浮揚策としてインフラ投資のため5000億ユーロの追加借り入れ、理論上無制限の国防予算枠を創設、今後10年で約1兆ユーロの借り入れによる歳出を可能にする憲法改正を行った。しかし競争力を取り戻す構造改革が不可欠だ。
中道左派の社会民主党(SPD)と「大連立」を組むメルツ氏は5月6日、ドイツ連邦議会の2回目の投票で過半数を得て正式に首相に選出された。1回目の投票で過半数を獲得できなかったのは戦後ドイツ史上初めて。再選挙という最悪の事態は回避されたものの、前途多難なスタートとなった。
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