日本サッカー協会(JFA)は20日、今月末からブラジル・サンパウロで行われる国際親善試合・ブラジル女子代表戦に臨む日本女子代表(なでしこジャパン)メンバーを発表した。ニルス・ニールセン監督と佐々木則夫女子委員長がオンライン会見に登壇し、質疑に答えた。

●佐々木則夫女子委員長

「いよいよブラジルとの2試合。非常に遠いところではあるが、ブラジルも成績を上げており、われわれとブラジルは行ったり来たりの世界順位になっている。この2試合において、なでしこジャパンの力を皆さんに示していきたい」

●ニルス・ニールセン監督

「今度はブラジルということで、対戦相手として非常に手強く、すばらしい相手だと思う。多くの選手が参加できるので楽しみにしていただければ。今回はブラジルのホーム、次回のW杯開催地ということで非常に手強い相手になる。また現時点で、なでしこジャパンが世界的に見てどのあたりにいるか、というのを試す非常にすばらしい機会になる」

──4月のコロンビア戦を踏まえ、今回の活動でこだわっていきたい部分はどこか。

「前回のコロンビア戦に関しては、選手がちょっと躊躇しているかなという面が見られた。そこを改善していきたいというのもある。今回ブラジルのホームでやるということで、アウェーの雰囲気のなか、ブラジルのファンの方も敵対心を持ってやってくると思うので新しい経験になる。アメリカでのシービリーブスカップではアウェーというよりは、ファンも日本のプレーを楽しんでくれたかなという印象もあった。そういった面で、厳しい環境のなかでいかにベストを尽くすかということに集中して取り組んでいきたい」

──山本柚月が初選出となった。ニールセン監督の評価や期待しているところは何か。

「非常にすばらしいシーズンを過ごしていた。個人的にもMVPを受賞し、チームに貢献できる選手。初選出なのでチームをリードするというよりかは、学ぶ機会になるかなと思っている。彼女の強みを見せてもらえれば。強みはスピード、フィジカルが強いというところがあるので、そういうところを表してもらいたい」

──今回の選考は過去招集してきた選手がほとんど。夏のE-1選手権で新戦力を試す意向か。

「今回ブラジルと戦うということで、非常に手強い相手であり、準備ができている選手を中心にということで選んでいる。次回のW杯開催地を経験できるということで、現時点でよりW杯に出場するかもしれない選手、(現時点で)最強の選手を選んでいる」

──山本のメンバー表記がDF登録だった。FWまでできるが、どのような起用を考えているか。

「トレーニングでテストしてそれから決めたいが、日本人の選手で足りないポジションはSB。最初はSBでの起用を考えているが、攻撃の好きな選手であり、そこに強みのある選手なので、色々試したい。ただSBが一番プレーイングタイムを得やすいのかなと考えている」

──海外で活躍しながら未招集の選手もいる。選考基準はどういう点にあるのか。

「常に新しい選手は探している。ただ、ときどき早く呼びすぎてしまう可能性もある。もちろん現時点でいる選手との競争もあるので、今回選んでいない選手もいる。ヨーロッパでもアメリカでも、WEリーグでも、非常に才能にあふれた選手は多く、選ぶほうとしては非常にたくさんの選択肢がある。今回、山本柚月選手を選んだが、シーズン通して安定したすばらしいパフォーマンスをしていたので選んでいる。一番重要なことは所属クラブで安定したプレーを続けていることで、それによって今後代表選出という可能性が出てくるので、それは選手に対しても言いたい」

──FW千葉玲海菜もDF登録だった。山本選手と同じ理由なのか。

「基本的には山本柚月選手と同じ理由になるが、千葉選手はシービリーブスカップでも活躍して、信頼できる選手ということで選んだ。ただ可能性として、ウインガーが本職だが、今回ちょっとした新しいチャレンジとしてSBでも考えている。ただこれも可能性があるということで、トレーニングをしてみてSBでと考えているが、攻撃的なポジションも考えられるので、現時点ではDF登録している。SBとウインガーの共通点ということで両方とも攻撃的に行く。特になでしこに関してはSBも攻撃を求められる。ウインガーがSBをやることは共通点もあって馴染みやすいのかなと。清家貴子選手も可能性としてSBはある。どうしてもリストを出すうえでポジションを決めないといけないということでDF登録になっているが、もしかしたらMF登録という可能性もある」

──浜野まいか、山下杏也加は負傷の心配もされていたが、コンディションはどうなのか。

「浜野まいか選手に関しては、問題なくプレーできると思っている。チェルシーというクラブは競争力のあるワールドクラスの選手が多く、シーズン終盤はプレー時間を持てなかった。ただ自分の考えでは今後チェルシーを背負っていく選手の一人だと思っている。そこについては心配していないし、チェルシーも今シーズン多くのタイトルを取っているので、そういう意味でも難しかったのかなと思う。浜野まいか選手に関しては、なでしこジャパンで非常に重要な選手、違いを作れる選手だと思っている。チェルシーと立ち位置的には違う。山下選手に関しては出場時間も少なかったが、どうしてもプレーイングタイムを得ることは難しい。浜野選手も山下選手も、日本にとって重要な選手なので今回はもちろん選んでいる」

──藤野あおばが代表活動直前に行われるワールドセブンズフットボールのメンバーに選出されている。

佐々木女子委員長「いま調整しているところです」

──植木理子もMF登録。フォーメーションを変える可能性もあるのか。

ニールセン監督「フォーメーションにかかわらず、どうプレーするかは今までと同じ。どんな対戦相手にもかかわらず自分たちのサッカー哲学を持って、より支配できるようなプレーを心がけていきたい。ディフェンスのときは4-4-2、攻撃のときは4-3-3。ただ日本人の選手は賢くて色んなポジションができる。フォーメーションはフレキシブルにやっていきたい。もしかしたら4-4-2だとしてもフォーメーションが違って見えることもある。なので、フォーメーションを変えるかという質問には変えないという答えになる。ただ見方によっては違うように見えるかもしれない。なでしこの目指すスタイルがより攻撃的にということもあり、フォーメーションやポジション登録に関して問題はない。ウインガーがSBをやることも、基本的にはなでしこのプレースタイルであれば適用しやすいと思っている。ポジションに関しては心配していない」

──W杯開催地で調整したいことや選手に求めたいことは何か。

「今回ブラジルに関していうと、特徴的なところとしてはディフェンスで1対1に強く当たってくるところがある。攻撃面では縦に速く、ダイレクトな攻撃がある。そこにどう対応するかに焦点を絞っていきたい。次回ブラジルでW杯があるなかでそれを事前に経験できることが非常に今後役に立つ。ホームチームでサンバだったりダンスしたり、にぎやかなスタジアムで手強いファンがいるところで戦う。そのなかでいかに集中していくか。ブラジルW杯を前に経験できることは今後にとって非常にためになる。前回のコロンビアよりも強い相手だと思っているし、大阪ではうまくいかなかった点をよりブラジル相手にいかに改善して、メンタル的にも戦っていくかというところ。外側からプレッシャーがあるなかで、いかに自分たちのプレーに集中して戦えるか」

──ブラジル女子代表ではレジェンドのマルタ選手が復帰した。

「マルタ以外にもいい選手がいるが、過去10年間マルタのプレーを楽しんで観てきた。またピッチで会えることを楽しみにしている。彼女はチームメイトを鼓舞することができるし、パフォーマンスもすばらしい。年齢は高くなっているが、ただの数字だと思っている。彼女のパフォーマンスはエネルギーにあふれている。ブラジルでやるということでファンも応援する。個人的には何度も対戦しているので、また彼女の素晴らしいプレーを観られるので楽しみ。彼女はチームをリードする存在であり、賢い選手。またピッチ上で会えることはすばらしい機会」

──先ほどコロンビア戦で躊躇した場面があると言っていた。これまで自信を与えてきたニールセン監督は今回どう選手にアプローチするか。

「新しいところに注目して準備していきたい。新しい面とは、ブラジルは非常にパワフルでリスクを取って攻めてきて、1対1に強いというところもある。そういったところにどう対応していくか注目してやっていきたい。アメリカの大会でもそうだったが、すべてを出すということで間違いはない。すべてをやることによって全力を尽くすことによって、何かしら対応しなければいけない課題も見つかると思う。対戦相手にかかわらず、自分たちのやりたいように勇敢に戦うことが重要になってくる。それができればW杯のファイナルに行ったときでも自分たちらしいプレーができる。ブラジルのようにリスクを取って攻めることも日本代表としてもやっていきたい。ブラジルと日本という非常に面白いサッカーをする2チームが対戦するので、非常に面白い試合になる」

(取材・文 石川祐介)

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