MWC25に展示されていた富士通 MONAKAのモックアップ、チップレット構造になっている

 NVIDIAは、COMPUTEX TAIPEI 2025に参加し、最新製品などを顧客などに説明している。開催に先立って、5月19日にはNVIDIA CEO ジェンスン・フアン氏による基調講演が行なわれ、新製品などが紹介された。

 その中で、データセンター向けCPU/GPUのチップ間インターコネクト「NVLink」をNVIDIAのパートナー企業に公開する「NVLink Fusion」を発表したが、そのNVLink Fusionを採用する計画のCPUパートナー企業として、富士通とQualcommを発表した。

富士通のArm CPU MONAKAがNVLink Fusionに対応

 今回のNVIDIAのNVLink Fusionの発表で注目に値するのは、CPUにNVLink Fusionを活用するCPUベンダーに富士通とQualcommが入っていることだ。

 富士通は、2026年にTSMC 2nmで製造されるArmプロセッサとなる「MONAKA」を提供開始することを計画しており、NVLink Fusionのパートナー企業に入っているということは、そのMONAKAにNVLink Fusionのコントローラが入ることを意味する。

 ニュースリリースの中で、富士通 執行役員副社長 兼 CTO ヴィヴェック マハジャン氏は「富士通MONAKAは電力効率に特化した2nmのArmプロセッサで、当社の技術をNVIDIAのアーキテクチャに直接接続することは、世界をリードするコンピュータ技術を通じてAIの進化を推進するという当社のビジョンにおける記念碑的な一歩であり、スケーラブルでソブリン要件を満たし、持続可能な新しいクラスのAIシステムへの道を開くものだ」と述べ、MONAKAでNVLink Fusionの実装を行なうと述べている。

 富士通としては、GPUやTPUのようなAIアクセラレータといった製品を持っていないため、GPU/AIアクセラレータを主力事業とするNVIDIAとは補完関係にあり、今回のような提携に至ったと考えられるだろう。

 なお、2025年前半にウェハのサンプル製造を開始すると明らかにしており、その意味では既にMONAKAにはNVLink Fusionのコントローラが内蔵されている、あるいはチップレットとしてパッケージ上に実装されている、といった形で実現される可能性が高い。

 NVLink Fusion対応により、富士通およびそのOEMメーカーは、CPUはMONAKAを採用し、GPUにはBlackwell(B200など)を搭載したシステムを構築することが可能になる。同様のArm+Blackwell GPUとしては、NVIDIA自身のGB200もあるが、MONAKA+B200などのシステムにより、AIスーパーコンピュータの新しい選択肢が登場する可能性があり、今後の富士通からの発表にも期待したいところだ。

Qualcomm、データセンター向けに再参入Qualcomm CEO クリスチアーノ・アーモン氏(昨年10月のSnapdragon Summitで撮影)

 もう1つの注目はQualcommだ。

 Qualcommは現状、データセンター向けのCPUは製品展開していない。同社2017年に1度データセンター向けのArm CPU「Centriq」を発表して参入を表明したものの、半年後にそれを撤回して撤退しているという前歴もあり、これまでデータセンター向けのCPUにはあまり興味がないと考えられていた。

 しかし、最近同社 CEO クリスチアーノ・アーモン氏が、決算説明会でデータセンター向け事業に参入を匂わすなど、同社がデータセンター向けCPUに参入することはかなり確率が高いと見られてきた。

 NVIDIAのニュースリリースの中で、アーモン氏は「QualcommのカスタムCPUとNVIDIAのAIプラットフォームの組み合わせはデータセンター向けのインフラとして強力で効果的だ。今後ハイパフォーマンスでエネルギー効率の高いデータセンターにビジョンを提供していく」と述べており、Qualcommはもう一度データセンター向けCPU事業に参入する方針であることは明らかだろう。

 なお、Qualcommのアーモン氏は、本日15時(日本時間、台湾時間14時)からCOMPUTEX 2025のQualcomm基調講演に登場する予定で、そこで正式な発表があると思われる。

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